川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」より

ぼくがキガシラペンギンに出会った場所

川端裕人メールマガジン『秘密基地からハッシン!』vol.007より
 
創刊号から1枚ずつペンギンの写真を「ほっこり」写真として連載してきたメールマガジン『秘密基地からハッシン!』。2016年元旦号は、新春ペンギン祭り! を配信しました。筆者がキガシラペンギンに出会ったときの記事の一部をお届けします。
 
 
今回の主役はこの子。

1_new

ニュージーランドの固有種キガシラペンギンです。

頭に金色(黄色)の帯があって、目はクリーム色。クチバシの赤も含めて、独特の色使いが魅力のペンギンです。

南島第二の都市ダニーデンからツアーがでるオタゴ半島で見るのがこれまで一般的でしたが、最近は保護の機運も高まって、「行くところに行けば見られる」状態になっています。時期と場所を選べば、「なんでこんなにキガシラペンギン?」みたいな状況の場所も出てきていると。絶滅危惧は変わらないし、すごくマダラな状況で悩ましいんですけどね。

以下は、ぼくが偶然、ペンギンパラダイスな場所を見つけたときの記録です。
(編注:詳しい場所については『秘密基地からハッシン!』Vol.007で紹介しています)




 
 

それは本当に偶然の出会いだった

 
釣りに行った帰り道に、キガシラペンギンに出会ってしまった。

駐車場まであと百メートル。

牧草地で、舗装されているわけではないけれど、一応、人が通るための道がある。そこをテケテケテケと、キガシラペンギンが横切るのである。

いやあ、びっくりした。

こんな近距離で、キガシラペンギンに会えるなんて、想像した事もなかった。

もうびっくりしてしまって、うろたえてます! ってかんじの動揺したフレーミングでシャッターを押している。
 
 
2_new
〈釣りの帰り道、キガシラペンギンと出会う〉
 
 
いきなりお見せしたので、理解してもらえない恐れがある。

これがどれほど信じられないことなのか。

例えば、日本のペンギンファンがニュージーランドにしかいないこの種をみたくて、はるばるやってきたとする。

キガシラペンギンの営巣地は、オタゴ半島が有名で、たいていはそこを目指すだろう。

たしかに、遠巻きにだが、確実に見ることができるビーチがある。また、もっと簡単に、人工的にしつらえた巣を「隠れ家」(ハイド)から見られるようにした場所もある。ツアーに参加すれば、波打ち際を歩いている時に上陸風景に遭遇できるかもしれないが、大抵は遠く離れたところから観察することになる。それは、そういうものなわけだし、別に不満でもなんでもない。むしろ、ちゃんと保護されていて素晴らしい! キガシラペンギンはとてもシャイなので、近くでは見られませんというのが常識なのだ。

しかし、ここでは、常識破りなことが起きた。

いきなり、キガシラペンギンの方から現れたのだから。

それも、数メートルの至近距離。

シャイだって? 今、目の前にいるんですけど、これはなに?

4_new
 
 

絶滅危惧種であるはずのペンギンが、
わらわらと上陸してきた

 
一応、確認しておくと、キガシラペンギンは、ニュージーランドにしかいない固有種で、世界中のペンギンの中でも、もっとも危機に晒されている部類だ。IUCNのレッドデータでも、堂々のEN(エンデンジャード=絶滅危惧)。成鳥の個体数は、せいぜい3000〜4000羽くらいと言われている。

世界一のペンギン飼育大国である日本の動物園水族館でも飼育されたことがないし、たぶん、よその国にもいない。ニュージーランドでも本当に数が少なくなっている。実は、ニュージーランドの5ドル紙幣に描かれているのだが、実物を見た人は少ない。

そんなキガシラペンギンが、いきなり自分から、目の前に現れたのである。

よくよく見れば、一帯は狭い湾で、それがまるまるフェンスで仕切られている。そこよりも海側が保護区になっているらしい。ただし、内側だけでは営巣地が足りず、フェンスの外にはみ出していると見た。

座って見ていると、海からどんどん上がってくる。

かなり急な斜面を登って、ヒナのいるところまで、行きつ戻りつしつつ、なんとか上がっていく。

以下、しばらく写真で構成する。

5_new
〈まず、ロケーション的にはこんなかんじ。フェンスの向こうにビーチが見える〉
 
 
6_new
〈至近距離……なんで??って頭の中が真っ白になるほどの出来事なのである〉
 
 
7_new
〈わらわらとどんどん上がってくる〉
 
 
8_new
〈岩場からの上陸も。足がデカイ〉
 
 
9_new
〈ジャンプ!〉
 
 

親鳥を待つ、かわいいヒナも発見!

14_new
〈ひたすら待ってます。フェンス越し、ヒトをまったく恐れず〉

15_new
〈キガシラペンギンのヒナはペンギン界でも屈指のかわいらしさだと思う。みよ、このブルーのようなイエローのような複雑な虹彩〉
 
 
(続きは川端裕人メールマガジン『秘密基地からハッシン!』vol.007にてお読みください)

 

川端裕人メールマガジン『秘密基地からハッシン!

2016年1月1日発行vol.007
<お正月特集 ペンギン祭り!/ぼくがキガシラペンギンに出会った場所/新コーナー・どうすいはく:2500万年前の地層から発見された「ペンギンモドキ」とは?/インターステラテクノロジズの拠点、北海道大樹町にて/ドードー連載>ほかより

41

※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。

※kindle、epub版同時配信対応!

Vol.007(2016年1月1日発行)

目次

01:お正月特集 新春・ペンギン祭り!ぼくがキガシラペンギンに出会った場所
02:どうすいはく:足寄動物化石博物館編・2500万年前の地層から発見された「ペンギンモドキ」とは?
03:keep me posted~ニュースの時間/次の取材はこれだ!(未定)
04:宇宙通信:インターステラテクノロジズの拠点、北海道大樹町にて
05:連載・ドードーをめぐる堂々めぐり(7)出島のドードーはその後どこに行った? 愛媛県松山市編
06:せかいに広がれ~記憶の中の1枚:トンレサップ湖に浮かぶ小学校 その2
07:カワバタヒロトの何でも質問箱
08:イベントのお知らせ
09:著書のご案内・予定など

川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」のご購読はこちらから

川端裕人
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。普段は小説書き。生き物好きで、宇宙好きで、サイエンス好き。東京大学・教養学科卒業後、日本テレビに勤務して8年で退社。コロンビア大学ジャーナリズムスクールに籍を置いたりしつつ、文筆活動を本格化する。デビュー小説『夏のロケット』(文春文庫)は元祖民間ロケット開発物語として、ノンフィクション『動物園にできること』(文春文庫)は動物園入門書として、今も読まれている。目下、1年の3分の1は、旅の空。主な作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、アニメ化された『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)、動物小説集『星と半月の海』(講談社)など。最新刊は、天気を先行きを見る"空の一族"を描いた伝奇的科学ファンタジー『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』(集英社)のシリーズ。

その他の記事

AlphaGoから考える「人とAIの関係」(西田宗千佳)
「心の速度を落とす」ということ(平尾剛)
“リア充”に気後れを感じたら(名越康文)
日本のペンギン史を変える「発見」!?(川端裕人)
『ぼくらの仮説が世界をつくる』書評ーかつて本には「飢え」を感じるような魅力があった(岩崎夏海)
中国発・ソーシャルゲーム業界の崩壊と灼熱(やまもといちろう)
コーヒー立国エチオピアで知るコーヒーの事実(高城剛)
医師専任キャリアコンサルタントが語る「なぜ悩めるドクターが増えているのか?」(津田大介)
米朝交渉を控えた不思議な空白地帯と、米中対立が東アジアの安全保障に与え得る影響(やまもといちろう)
効果がどこまであるのか疑問に感じるコロナ対策のその中身(高城剛)
古舘伊知郎降板『報道ステーション』の意味(やまもといちろう)
【第6話】闘志なき者は去れ(城繁幸)
ファッション誌のネットを使った政党広告炎上は本当に“炎上”だったのか(本田雅一)
老舗江戸前寿司店の流儀(高城剛)
冬の京都で酵素浴によるデトックスに励む(高城剛)
川端裕人のメールマガジン
「秘密基地からハッシン!」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回以上

ページのトップへ