現実をきちんと「見る」ことが難しい今こそお薦めしたい本

『ご依頼の件』星新一著

読書の原点

子供の頃に星新一のショートショートにお世話になったという人は、ずいぶん多いのではないかと思います。典型的なじっとしていられない子供だった自分にとっても、星新一ははじめて本というものに没頭させてくれた読書の原点でした。

彼の読者だった者なら誰しも、記憶に焼き付いて離れない“特別なお話”というのが一つはあると思いますが、自分の場合、特に本書に収録されている『夜の会話』がそれでした。内容は、一見するとある平凡な男のUFOそして宇宙人との遭遇を描いた軽いSFものという風なのですが、その実「現実はどうやって作る(作られる)のか?」「そもそも人がなにかを見るということとはどういうことなのか?」といった、唯識論的なテーマを扱ったお話になっているんです。

ここのところ、ますます時勢の変化が激しくなり、「現実」をきちんと「見る」ということが難しくなってきたという気がしています。そうした状況のなか、改めて“見通し”というもののありようを問う意味でも、この場をかり先のお話を紹介したいと思います。

1 2 3 4

その他の記事

今の京都のリアルから近い将来起きるであろう観光パニックについて考える(高城剛)
「不思議の国」キューバの新型コロナワクチン事情(高城剛)
「一人でできないこと」を補う仕組み–コワーキングスペースが持つ可能性(家入一真)
チェルノブイリからフクシマへ――東浩紀が語る「福島第一原発観光地化計画」の意義(津田大介)
本気のアマチュアカメラマンが選ぶ一眼レフの不思議(高城剛)
バーゲンプライスが正価に戻りその真価が問われる沖縄(高城剛)
「ワクチン接種」後のコロナウイルスとの戦いは「若者にも出る後遺症」(やまもといちろう)
在韓米軍撤退の見込みで揺れまくる東アジア安全保障と米韓同盟の漂流(やまもといちろう)
「歳を取ると政治家が馬鹿に見える」はおそらく事実(やまもといちろう)
いつもは持たない望遠レンズで臨む世界遺産パンタナル大湿原(高城剛)
「GOEMON」クランクインに至るまでの話(紀里谷和明)
目下好調の世界経済にバブル崩壊のシナリオと対処法はあるのか(やまもといちろう)
誰がiPodを殺したのか(西田宗千佳)
なぜ若者に奴隷根性が植えつけられたか?(前編)(岩崎夏海)
冬のビル籠りで脳と食事の関係を考える(高城剛)

ページのトップへ