やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

【号外】「漫画村」ブロッキング問題、どこからも被害届が出ておらず捜査着手されていなかった可能性



 現在、「漫画村」など関連サイトについては当メルマガでも重ねて取り上げておりますが、捜査当局や漫画村関係者などへの取材をしてみると、いまなお、当局の誰からも事情を聴かれていない模様です。

 どうも、本件「漫画村」問題では、知財本部によるブロッキング問題に関する議論だけが先行して話題になっているものの、事件としては警視庁・警察庁は認知しておらず、所轄警察署などへの権利者からの被害届が出ていない可能性が高くなってきました。

 ところが、知的財産に詳しく、政府の知的財産戦略本部の検証評価企画委員会にて「知財計画2018」で委員をされている弁護士の福井健策さんは、自身のTwitterでもこのように述べています。

 福井さんのいう「現場対策がほぼ手詰まり」としておきながら、権利者として所轄警察署に被害届を提出していない状況であるがゆえに、警視庁・警察庁が具体的な経済犯罪として捜査に着手していないのだとすると、そもそもこのブロッキング議論の前にやるべきことがされておらず、放置された状態のままであったことが晒されてしまいます。

 また、海賊版サイトへの対策という点では、漫画などの電子配信を手掛ける業者が、自主的努力として「漫画村」など違法サイトやリーチサイトの広告主に直接広告の掲載を控えるよう申し入れをしているという状態です。私の取材に対して電子配信の事業者が要請を行った事実を認め、実際に広告を配信停止させています。

 通常は、これらの民間による海賊版ビジネスを支える収入に打撃を加えるプロセスと併せ、海賊版サイトに対する警察当局の捜査を行わせるのがあるべき対策だったわけですが、肝心の被害状況を知らせる被害届の提出が行われていなかったとなると、「被害届も出さずになぜブロッキングの議論だけ政府が先行させて無理筋のブロッキング依頼をISPに対して出させる検討をしたのか」という批判になるでしょう。

 なんというか、やるだけやって駄目なので緊急対応するという話が、警察に相談もしていなかったというオチになると、ブロッキングを推進するといった当事者たちは大変恥ずかしいことになるのではないかと思うのですが。

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

週刊金融日記 第294号【怪物ビットコイン ~ハードフォークという富の複製、ビットコイン・ダイヤモンド誕生!時価総額1兆7000億円他】(藤沢数希)
「自分で本を選べない人」が増えている? 書店を楽しみとスリルの現場にするために必要なこと(鏡リュウジ)
コデラ的恋愛論(小寺信良)
アップルの“あえて言葉にはしていない”仕掛け(本田雅一)
50歳食いしん坊大酒飲みでも成功できるダイエット —— “筋肉を増やすトレーニング”と“身体を引き締めるトレーニング”の違い(本田雅一)
「中華大乱」これは歴史的な事項になるのか(やまもといちろう)
『寄生獣・完結編』の思わぬ副産物/『幕が上がる』は和製インターステラーだ!ほか(切通理作)
Nintendo Switchの「USB PD」をチェックする(西田宗千佳)
明日にかける橋 1989年の想い出(切通理作)
アマチュア宇宙ロケット開発レポート in コペンハーゲン<前編>(川端裕人)
夏至にまつわる話(高城剛)
除湿、食事、温灸……梅雨時のカラダ管理、してますか?(若林理砂)
偉い人「7月末までに3,600万人高齢者全員に2回接種」厳命という悩み(やまもといちろう)
英国のシリコンバレー、エジンバラでスコットランド独立の可能性を考える(高城剛)
「デトックス元年」第二ステージに突入です!(高城剛)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ