高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

オーバーツーリズムに疲弊する観光都市の行方

高城未来研究所【Future Report】Vol.627(6月23日)より

今週は、バルセロナにいます。

いまから5年ほど前、まだ新型コロナウィルス感染拡大する以前のバルセロナでは、サンセバスチャン同様、オーバーツーリズムが大きな問題になっていました。
その後、新型コロナウィルス感染拡大によって、観光都市バルセロナは大打撃を受けましたが、この春の観光客数はコロナの反動もあって以前に増した人々が押し寄せるようになりました。

あわせて、形を潜めていた外国人観光客を標的にした排斥運動が広がっています。
なにしろ今年の予測値だと、人口160万人に対して1800万人の観光客が訪れると予測されているからです。

この背景には、航空運賃や宿泊施設のデフレ化があります。
LCCと呼ばれるローコストキャリア航空会社は、バルセロナ空港が欧州最多発着便数を誇り、コロナ以前の1年間で空港に降り立ったLCC乗客数は、首都マドリードの約2倍となる1100万人を超えるまでに膨れ上がりました。

また、総ホテル客室数が不足していたところにエアーB&Bが跋扈し、不動産会社は空き部屋をお金の無いバルセロナ市民に貸し出すよりも、お金を持つ外国人観光客に短期レンタルするほうが利益につながると判断。
エアーB&Bおよび外国人向け短期サブレントが急増し、市内全体の家賃が高騰します。
近年は、なんと年平均4000人が立ち退きを迫られる事態に発展しています。
こうして、外国人観光客を標的にした排斥運動が再び燃え上がるようになりました。

スペインのセビリア大学の経済学調査チームは、こうした格安ビジネスが「ロークオリティーカスタマー」(LCC)を招いたと示唆。
ではいったい、どのようにして「ロークオリティーカスタマー」を減らせばいいのでしょうか?

そこで市政府が導入したのが、観光税です。
いまから十年ほど前に導入したバルセロナの観光税ですが、本年後半から大幅に値上げが予定されています。
実は、バルセロナ以外にもアムステルダムをはじめ、オーバーツーリズムに苦心している欧州主要都市が多いことから、今年の11月からEU全体で観光税を本格的に導入します。
その他、バルセロナやヴェネツィアなどの各都市ごとにも観光税を導入。
こうして1日ごとの滞在に、大幅に滞在費=税金がかかることになる予定です。

また、バルセロナ中心部での新規のホテルの出店禁止と厳しい民泊の取り締まりも強化しています。
このような動きは、移民排斥と似ており、バルセロナのオーバーツーリズムの行方は、そのまま欧州が抱える移民問題の未来に思えてなりません。

フラりと通い慣れたボケリア市場に出向けば、観光客ばかりか、観光客用の値段に設定され、正直、年々安価だから楽しいバルセロナらしさが失われているように実感します。

グローバル時代ならではのビジネスと言われた観光業。
世界の先頭を走る成功例として知られたバルセロナは、欧州全体の右傾化同様、選民的になってきたと感じる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.627 6月23日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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