切通理作
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切通理作メールマガジン「映画の友よ」連載寄稿・眼福女子の俳優論

第88回・米アカデミー賞受賞のゆくえは?

切通理作メールマガジン『映画の友よ』Vol.48 より「連載寄稿・眼福女子の俳優論」(小佳透子)を抜粋してお届けします。

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第88回・米アカデミー賞を予想する!

2月29日(月)(現地時間2月28日)の第88回米アカデミー賞授賞式を控えて、今回の連載では毎年恒例のアカデミー賞眼福予想をしていく。

例年通りノミネート作品の多くが日本未公開なので当然私もほぼ未鑑賞の状態だが、これまでに発表された映画賞レースの結果を元に独断と偏見で考えていくのが「眼福予想」である。

アカデミー賞全部門の中から役者に焦点を絞って、主演男優、主演女優、助演男優、助演女優の4部門を予想していく。

各部門の候補者の中から「この人が獲るであろう」という☆受賞予想と、個人的な思い入れによる「この人に獲ってほしい」という★受賞希望を、基本的に1名ずつ選出していく。

 

仕事上の妻or女の子らしい笑顔

まずは助演女優賞、ノミネーションはコチラ↓

・アリシア・ヴィカンダー『リリーのすべて』(3月18日公開)
・ケイト・ウィンスレット『スティーブ・ジョブズ』(現在公開中)
・ジェニファー・ジェイソン・リー『ヘイトフル・エイト』(2月27日公開)
・ルーニー・マーラ『キャロル』(現在公開中)
・レイチェル・マクアダムス『スポットライト 世紀のスクープ』(4月15日公開)

☆受賞予想→ケイト・ウィンスレット『スティーブ・ジョブズ』

予告編↓
https://youtu.be/ZjgUOSED_cM

公式サイト↓
http://stevejobsmovie.jp/

ケイト・ウィンスレット(以下ケイト)は1975年生まれ、イギリス出身。19歳で映画デビュー後、世界的大ヒット作『タイタニック』(1997)のヒロイン、ローズ役で第70回アカデミー賞主演女優賞にノミネートを果たし、計6度目のノミネート作『愛を読むひと』(2008)で初受賞。その他出演作は『エターナル・サンシャイン』(2004)、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)、『ダイバージェント』シリーズ(2008~)など。

本作、私は鑑賞済み。

2011年に他界した世界的大企業アップル創設者スティーブ・ジョブズの人物像を怒涛の会話劇から紐解く構成となっている。

1981年、1988年、1998年の3つの時代における彼が生み出した製品発表の場という限定された舞台での展開ながら、その空間に広がる熱量が凄まじかった。

まるでその時その場に居合わせたか、彼らが実在の人物というより脚本家アーロン・ソーキンが生み出した架空の人物かと思えるほど、ジョブズ始め各人物像をじわじわと生々しく浮き彫りにしていく台詞の応酬であり、ただ時間軸をなぞるだけではないリアリズムに徹底的に物語性を落とし込んだ脚本に舌を巻いた。

早いのに乱れることなく穏やかな川の流れに乗って、どんぶらこ~どんぶらこ~と揺られているようなリズムのある、攻めた作りの作品だった。

ケイトはジョブズの仕事の相棒であるジョアンナ・ホフマン役を演じている。一歩引いて、ジョブズの背中をぐいぐい押していくタフで人情味ある気質が作品の安定感となっており、映画の終盤に名前が登場する、ある製品が彼女の内助の功なしでは誕生しなかった可能性も考えられるほど、仕事上の妻である立場を貫く姿勢が気持ちよかった。

今年度の映画賞レースは各部門受賞者がバラけており、シーズンを通じた1人勝ち状態の役者が見当たらないほどだ。

その中でもこの助演女優賞部門が特に結果が割れていて正直予想がかなり難しいのだけど、これまでの結果ともう勘と、あと後ほど書く理由から本命候補はケイトを推す。

前述した『愛を読むひと』で第81回アカデミー賞主演女優賞を受賞しているので、もし今回受賞すれば主演と助演の両部門を制覇することとなる。
 
 
★受賞希望→レイチェル・マクアダムス『スポットライト 世紀のスクープ』

予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=h8TwCzA59Lg&feature=player_detailpage

公式サイト↓
http://spotlight-scoop.com/

レイチェル・マクアダムス(以下レイチェル)は、1978年生まれ、カナダ出身。ヒロインを演じた恋愛ドラマ『きみに読む物語』(2004)のヒットで知名度を広め、その後多くの映画作品に出演。その他出演作に『シャーロック・ホームズ』(2009)、『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)、『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013)など。

『スポットライト 世紀のスクープ』は2002年1月、アメリカのボストン・グローブ紙が報じたカトリック教会の神父による児童性的虐待の記事を報じるに至る過程に迫った実話の映画化。レイチェルは調査報道チーム、スポットライトの一員サシャを演じている。

今年度の賞レースで役者個人による受賞は少ないものの、軒並み作品賞を総なめにしており、アカデミー賞でも作品賞受賞の有力候補に挙げられている。

以前にもご紹介したが、レイチェルの魅力は、笑うとえくぼとしわが口元に現れる、自然体で年齢を超越した「女の子らしい笑顔」である。

例えば『君への誓い』(2012)では、サーモンピンクのような色合いにひざ上丈の、着こなせる人を選ぶ非常にラブリーなデザインのウェディングドレスをすんなりと着こなしている。

外見レベルがそれなりに高い人でないと似合わない、いわば女の子らしさの狭き門をすり抜けて「女の子らしい笑顔」を浮かべた結婚式の場面はロマンティック恋愛映画を代表する見せ場となっている。

これまでは比較的ラブストーリーを中心に据えた出演作が多かったが、昨年はクライムドラマTVドラマシリーズ『TRUE DETECTIVE シーズン2』(2015)に刑事役で出演しており、今年全米公開予定の作品だとアメコミ映画の最大手マーベルが手がける一連の映画シリーズの一作に連なる『Dr.ストレンジ』(2017年公開)に出演するなど、より活躍の幅を広げている。

そんな中で出演した本作でのアカデミー賞初ノミネートは、個人的にレイチェルの大大大ファンとしては大変喜ばしい。

しかし今年の賞レースに個人として軒並みノミネートしているワケではなく、またノミネートしても個人での受賞には至っていない(しかし本作のキャスト一同でアンサンブル演技賞受賞は果たしている)ので、受賞の可能性は残念ながら低いだろう。

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切通理作
1964年東京都生まれ。文化批評。編集者を経て1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。批評集として『お前がセカイを殺したいなら』『ある朝、セカイは死んでいた』『情緒論~セカイをそのまま見るということ』で映画、コミック、音楽、文学、社会問題とジャンルをクロスオーバーした<セカイ>三部作を成す。『宮崎駿の<世界>』でサントリー学芸賞受賞。続いて『山田洋次の〈世界〉 幻風景を追って』を刊行。「キネマ旬報」「映画秘宝」「映画芸術」等に映画・テレビドラマ評や映画人への取材記事、「文学界」「群像」等に文芸批評を執筆。「朝日新聞」「毎日新聞」「日本経済新聞」「産経新聞」「週刊朝日」「週刊文春」「中央公論」などで時評・書評・コラムを執筆。特撮・アニメについての執筆も多く「東映ヒーローMAX」「ハイパーホビー」「特撮ニュータイプ」等で執筆。『地球はウルトラマンの星』『特撮黙示録』『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』等の著書・編著もある。

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