やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

結局「仮想通貨取引も金商法と同じ規制で」というごく普通の議論に戻るまでの一部始終



 すでに報道されましたが、金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」も大枠がだいたい見えるようになってきて、仮想通貨を実現している技術的な側面や、フィンテック的な金融関連技術の側面はおおよそのコンセンサスが定まりました。残される海外の利用事例や規制実態との整合性についてと、既存法令下であるべき仮想通貨取引の実態調査あたりが残って、お題目はともかくいま起きている問題についてさっさと取り締まりを進めましょうということで駒が進んだというのは大いに結構なことだと思います。

 ヒヤリングがあるというのでフラワーロック状態の置物になっていたわけですが、調査実態といっても実のところ某所から5月以降各事業者に対し順次質問状が送りつけられ、回答ができなかったところや、不十分なところから調査という名の臨店に近い査問が行われるに至り、海外に逃げた事業者あり、ひっそりと畳む事業者あり、身売り交渉に乗り出し二束三文で宿主を探す事業者ありということで、おおむね順調に話が進んでおります。

仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめ(PDF書類)

仮想通貨交換業者等に関する3省庁(警察庁・金融庁・消費者庁)局長級連絡会議の開催

 一方で、ホルダーの所有シェアの4割が反社会的勢力とされる上場企業系仮想通貨や、先日野田聖子総務大臣の関連が取り沙汰された仮想通貨に関しては、すでに金融庁と並行して警視庁マターとして話が動き始め、完全な経済事件扱いになりそうだということで警戒感が広がっているというのが実態であります。個人的には「問題がありそうなら早めに営業停止処分するなどして状況をきちんと把握できるよう進めてしまえばいいのに」と思うわけですが、当局関係者をして「得体のしれないパワーが蠢いているので、きちんと慎重にやる予定だ」という環境にあるようです。きちんと慎重にやる対象には、大手仮想通貨交換業者も含まれており、どうも会社ごとの身売りだけでなく、CEO、CFO(どちらも業界の中で微妙な評判の御仁たちだとされている)両方の更迭も取り沙汰されるほどきな臭い動きになっているのが気になります。

 問題とされるのは仮想通貨を利用したFX(証拠金取引)で、普通に仮想通貨の相場を利用した丁半博打にすぎないため、なし崩しにこれがサービス化できてしまった件については別の意味で問題になりつつあります。今後進められる仮想通貨の「定義」で取り扱い暗号資産が1号仮想通貨・2号仮想通貨を問わず何らか確定すれば、おのずから適法性が問われましょう。いままではグレーゾーンでした、あくまで現物取引の補助ですから必要があれば(クッソ割高な手数料を払って)仮想通貨に交換できます、という逃げ道も塞がれることになるわけです。

 結局のところ、連絡会議でも調査会合でも「実際に起きている不法行為について」の情報交換が進んで、要するに詐欺ではないものを守るためにガードを下げても詐欺が横行したらこれを止めることはできないという意味で、中国のP2P金融の問題と同じようなことを起こす可能性があると警戒感が高まっている、と言えます。

 やはり「適法にやってね」と言おうにも、一度盛り上がってしまったこの界隈でいまから「やっぱ普通に規制するわ。やったらアカン事業はクローズせえや」というのもなかなかむつかしいのかもしれませんが、10月ぐらいから事件化する事業者も出てくるようなので、状況を見ながら具体名も含めて記事にしていきたいと思います。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.234 仮想通貨界隈の現状をまとめつつ、ゾゾタウンとユニクロの確執報道について思うことや安全保障に影響を及ぼすIT問題などを語る回
2018年8月22日発行号 目次
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【0. 序文】結局「仮想通貨取引も金商法と同じ規制で」というごく普通の議論に戻るまでの一部始終
【1. インシデント1】ZOZOTOWN(スタートトゥデイ社)とユニクロ(ファーストリテイリング社)の前哨戦
【2. インシデント2】ITの進化と安全保障の今後
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. 納涼】ボツ原稿スペシャル

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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