やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

どうも自民党は総体として統一教会と手を切らなさそうである


 安倍晋三さんの暗殺と、その殺害容疑者にまつわる特定の宗教団体とされた統一教会の話で、私は割と早々に「統一教会とは手を切れ」と主張したこともあり、ご一緒している議員さんや秘書さんなどからは「思い切りましたね」とのお言葉を戴く機会が多くありました。

 というのも、自民党に限らず宗教団体からの支援を受けて活動をしている議員さん自身はまったく信者でもないにもかかわらず、単に票になり、支援してくれるからという理由で事務所に引き入れるケースはままあります。また、身の回りで多かったのは、支援の内容すらあまり議員さんがよく承知せず、事務所の中にその宗教団体対応をするパートタイムの専属秘書がいる、みたいな状況になっていたりしますので、これはもう言わずもがなの関係性となっているとも言えます。

 しかも、今回は東京都都連の元会長であり、また、文部科学大臣や自民党政調会長を歴任された下村博文さんが、統一教会の改称問題で大臣として異例の「報告を受けた」話まで報道で出てきております。よりによって、当初の文化庁宗務課長があの前川喜平さんだったという面白さなんですが、その後、文化庁も管轄に入っている文部科学審議官でしたから、お前が決済者やがなというオチまでついておりました。アホらし。

宗教と政治のもちつもたれつ

安倍晋三さんの国葬と戦後政治史における統一教会から考えたい「動乱期の生き方」

 で、今回の経緯については日本会議にまつわる事案で、とりわけ生長の家や新生仏教教団などの各種新興宗教が自民党有力者に食い込み続けてきた問題については、多くの識者がついでに指摘しています。ただ、憲法20条における政教分離の原則とは、これも何度も書いていることではありますが政府が特定の宗教団体に対して支援したり迫害したりすることを禁じるものであって、宗教団体が政治活動を行ったり、どこかの信者が政治家になろうとしたり、秘書などを勤めたりすることそのものを禁じるものではありません。公明党の支持母体が創価学会であり、公明党の議員に創価学会員が多いことそのものはなんら違憲ではなく不適切な関係とは言えません。

 他方で、今回問題になっている統一教会の問題というのは、自民党の保守傍流である清和会との癒着の問題というよりは、むしろ霊感商法のような悪質な商行為であったりとか、洗脳を行って家庭や人生を壊しかねない過剰な献金・寄付を繰り返し行わせるカルト行為にあるのであって、これらを社会的に適切に問題視して、法の華三法行のように宗教団体としての解散命令を出せるようにまずはしましょう、というのが解決の道筋の一つとなります。

 加えて、これはまさにいま検討していることですが、宗教法人行政の改革の一環として、私はやはり宗教行為にまつわる出納については、一般の事業法人などと同じく第三者のチェックとしてきちんとした監査を行い、その中で、明らかに一般常識を超えた収入や支出があった場合には事業収益に当たるとして非課税にしないということも求められていくべきだろうと思います。踏み込んで言うならば、宗教そのものや宗教にまつわる行為が問題となるのではなく、宗教が宗教「団体」を作ったときに、必ず組織は自走しようとするので、信者の財産を痛めつけてでも宗教「団体」がカネを巻き上げようとする構造はおそらくカソリックだろうが新興宗教だろうがあんまり変わりはない宗教「団体」であるがゆえの所作であろうと断じざるを得ません。

 自民党だけでなく、野党においても統一教会と関わり合いがあった議員さんについては、それこそ事件以降20名以上の方とお話をする機会がありましたが、この政治と宗教のもちつもたれつ的な癒着の関係を清算するよりは、宗教からの支援そのものは適法だとしたうえで、統一教会のカルト的な集金をやめさせればことが足りる、と考えている人が多かったようにも思います。そこまでして統一教会とつるんでどうするの、と私などは思うわけですが、ある議員さんが言っていたのは「親父の代からの付き合いのある宗教団体なのだから、確かに社会的に問題だと言われたとしてもいきなりは切れない」とまで仰るんですよね。や、どんだけ食い込まれておるの?

 確かに、宗教団体が票を取りまとめてくれたり、政治活動を具体的に支援してくれることもあって、別段それは違法ではないのだと開き直られたら「まあ、そのとおりですね」とはなります。ただし、これらの政治家が応援のコメントを寄せたり、関係が深いということが対外的に明らかになれば、被害弁護団の言う通りこんな政治家も我が宗教の味方になってくれていますという箔付けで使われたうえで、霊感商法やら過剰な献金・寄付の強要やらが横行してしまうのもまた事実です。

 つまりは、カルト宗教としての統一教会との関係を残しておくことは、そのカルトを利用して政治を行っているのだと批判されても仕方がないことですし、それらの政治家にとって都合の良い支援とは、壊れた家庭や苦労している信者や家族の犠牲の上に成り立っていることは良く知っておくべきだと私は思います。そんな社会活動を行っていることが正義なのかは、ちょっと考えればわかることですし、これを機に、宗教と政治の良い関係について再考する潮ではなかったかと思わずにはいられないのですが。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.377 自民党と統一教会の関係にそこはかとない諦観を覚えながら、太陽光パネル廃棄問題やNFTビジネスの可能性などについてあれこれ語る回
2022年7月31日発行号 目次
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【0. 序文】どうも自民党は総体として統一教会と手を切らなさそうである
【1. インシデント1】「太陽光パネル」のバブルとリサイクルの現場で思うこと
【2. インシデント2】国内NFT市場が成功する可能性の要因を適当に考えてみる
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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