※高城未来研究所【Future Report】Vol.667(3月29日)より
今週は、群馬県館林にいます。
東京と二度ほど気温が違う館林は、乾いた風が吹くと体感で五度ほど低く感じます。
群馬の冬といえば「からっ風」が有名で、これは気流が山を越える時に温度と気圧が下がることで、空気中の水分が雪や雨となって降り、そのため山を越えた風は乾燥して強く吹きます。
群馬のからっ風は別名「赤城おろし」と呼ばれ、これが実に寒いというか痛い!
この冷たい風の中、館林を闊歩して執筆するのは、それこそ身が引き締まる想いです。
普段だったら3冊も同時に執筆するなら、どこかの街に出向き、いわゆる「カンヅメ」になって一歩も出ずホテルでずっと執筆しなければなりませんが、先日お伝えしたように執筆スタイルが歩きながら書くスタイルに変わったことによって、今ではすっかり「カンヅメ」のまったく逆。
つまり、部屋にこもらず、どの街にいてもどんな天候でも、ひたすら歩きながら書くようになりました。
ここ数年、東京は丸の内や銀座界隈を根城にしておりまして、晴れてる日には人形町あたりまで歩き、雨の日でも地下道を通り歌舞伎座あたりから日比谷を回って、丸の内を抜けて東京駅まで行く数キロ程度の地下道は全天候仕様で快適ですが、館林はそうもいきません。
執筆もいよいよロケの時代になったように感じるほどで、撮影同様、執筆のためのアウトドアウェアを事前準備する必要がありあす。
また、毎年冬はトレーニングも行っていまして、今年は単に歩くだけでなく、ウェイトの代わりに両手に水を持って歩くようになり、これを「縄文式トレーニング」と名付けました。
今から約8000年前、家を持たなかった縄文人は地面に浅い穴を掘り、柱を立ててススキやカヤで屋根を葺いた竪穴住居で暮らしはじめました。
土器を作り、それで炊事をするようになったため、日々の生活には良い水が必要不可欠でした。
そこで清流の近くに住居を作り、水汲みには竹、アシ、フジ、アケビなどの植物のつるで編んだかごの上からウルシを塗り固めた容器を使用します。
こうして、川から水を運ぶことが縄文人の日課となり、最大の労働だったのです。
確かに、木の実を拾ったり猪を捕まえたりもしましたが、それは日課ではありません。
人間にとって、空気の次に大切な水の確保こそが彼ら最重要事項であり、毎日、川から集落まで水を汲み上げて運んでいたため、館林を流れる鶴生田川周辺に縄文集落が点在しました。
また、日々の水汲み重労働が彼らの僧帽筋を極端に発達させていたことも近年の科学的分析から明らかになっています。
この縄文人の日課から着想を得て「縄文式トレーニング」と名付け、日々コンビニで水を買って早歩きするようにしていますが、それなりに重いとプラスティックバッグが手に食い込むため、ちょっとしたカバーも持ち歩くようになりました。
おそらく運動不足と言われる現代人でも、縄文人同様、水を持って早歩きする程度で健康維持は十分だと実感してしており、それより大股で深く歩き、ハムストリングスや梨状筋に効かせるフォームが重要です。
そこでコアに筋力を取り戻したら、縄文時代から江戸時代まで引き継がれていた、疲れず、背中や肩が固まらない「飛脚走り」を場面で取り入れます。
江戸日本橋から京都まで三日間で走り切った飛脚は、ケトン体質だったことと「靴」が日本に入る前の歩き方や走り方だったフォームに秘密がありました。
近年、「ナンバ走り」などとも呼ばれていますが、「気」をまわしながら走る特有のフォーム(と考え方)で、確かに疲れません。
フォームを整えた「執筆ウォーキング」と「縄文式トレーニング」。
この組み合わせを用いれば、作家特有、いや現代人特有の肩こりや腱鞘炎に悩まされなくなってきて、スタンドデスク以上の効果を実感しています。
冬から春に移り変わるいま、最新のテクノロジーと太古に戻ったような身体性の融合は一種の「MR」(Mixed Reality)なのではないか、都会と山間部の間にある街で考える今週です。
しかし「赤城おろし」は、寒いですね・・・.
高城未来研究所「Future Report」
Vol.667 3月29日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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