※高城未来研究所【Future Report】Vol.294(2017年2月3日発行)より
今週は、モルディブにいます。
1190もの島があるこの国の名前は、サンスクリット語で「島々の花輪」という意味を持ち、美しい海に囲まれている島国として旅行者を魅了しています。
この二十年のモルディブの観光地としての躍進は素晴らしく、特に21世紀に入ってから国家が観光立国に舵を大きく切ったこともありまして、100を超える島々に世界でも有数な高級リゾートが立ち並ぶことになりました。
すでに、観光GDPは25%を超え、大成功を収めています。
一方、自然破壊も看過できないようになってきました。
最近では首都マーレ近郊の観光島開発が難しくなってきたため、島として隆起する前のサンゴ礁の浅瀬を埋立て「島を作る」ようなリゾートも見受けられます。
かつての中心的産業だったマグロやカツオ漁業はすっかり衰退し、また、気候変動のため、リゾートのメンテナンス費用も年々増加する一方です。
結果、それらは宿泊コストに上乗せされることになりますので、高級リゾートの宿泊費は、いまや一泊10万円を超えるのは当たり前。
僕も一度だけ仕事で訪れたことがありますが、一島まるまる貸し出しで一泊200万円を超えるリゾートもあります。
もはや観光開発の勢いは、止められそうにありません。
さて、今回の渡航は、そんな高級リゾートはさておき、地元の人たちが遊びに行く、いや、地元の人たちでも知らないようなローカル・アイランドを日々ホッピングしています。
近年の高級リゾート指向に嫌気が指したトラベラーに人気があるマーフーシ島やUNESCO保護海域ハニファル湾から近いハニマドゥ島、そして交通網がない離島をチャーター船でまわっていまして、ここまで来るとかつての素朴だったモルディブの面影がまだ残っていますが、いまや開発されてしまうのも時間の問題なのかもしれません。
しかし、このようは過度な開発はモルディブに限ったことではなく、産業を持たない世界中の南の島々すべてが直面する問題で、また、LCCやインターネットなど、時代の変化が大きく後押ししているのも確かです。
すでに航空宇宙産業を抜いて世界一の巨大産業となった観光業が、本格的に爆発するのは実はこれからで、その中心地はアジアなのです。
中間層の増大に伴い、旅行需要が急増し、近隣諸国の観光からはじまり、その円は年々大きく広がっています。
今週、大型連休である春節の中国から、多くの観光客が押し寄せているモルディブの現状だけを見ても、10年前とは別世界です。
そう考えると、南の島々をのんびり楽しめる時間は、あまり残されていません。
10年もすれば「無人島」は、おとぎ話にしか出てこなくなるでしょう。
ここ数年、仕事の合間を縫って世界中の南の島々を回って書いてきた「人生を変える南の島々」シリーズも、残すはあと数地域。
まだまだ知られていない、この星にある素晴らしい場所を、今日も探して旅しています。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.294 2017年2月3日発行発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
詳細・ご購読はこちらから
http://yakan-hiko.com/takashiro.html


その他の記事
![]() |
2021年のベストガジェットから考える新たなステージ(高城剛) |
![]() |
「いままでにない気候」で訪れる「いままでにない社会」の可能性(高城剛) |
![]() |
テレビのCASがまたおかしな事に。これで消費者の理解は得られるか?(小寺信良) |
![]() |
石破茂さん自由民主党の新総裁に選任、からのあれこれ(やまもといちろう) |
![]() |
ZOZOSUITのビジネススーツ仕上がりが予想以上に残念だった理由を考える(本田雅一) |
![]() |
面接やプレゼンにも効果的! 「他人を味方に変える」ための3つのアプローチ(名越康文) |
![]() |
ポスト・パンデミックの未来を示すように思えるバルセロナ(高城剛) |
![]() |
「岸田文雄ショック」に見る日本株の黄昏(やまもといちろう) |
![]() |
未来系南の島・香港から日本の将来を占う(高城剛) |
![]() |
“今、見えているもの”が信じられなくなる話(本田雅一) |
![]() |
俺たちのSBIグループと再生エネルギーを巡る華麗なる一族小泉家を繋ぐ点と線(やまもといちろう) |
![]() |
「大阪でも維新支持急落」で第三極の未来に何を見るか(やまもといちろう) |
![]() |
横断幕事件の告発者が語る「本当に訴えたかったこと」(宇都宮徹壱) |
![]() |
コロナ渦で大きく変わってしまったシアトルの街(高城剛) |
![]() |
東京新聞がナビタスクリニックの調査を一面で報じたフェイクニュース気味の事態の是非(やまもといちろう) |