小川和久の「セキュリティ研究所」第2回講義録

トランプは「塀の内側」に落ちるのかーー相当深刻な事態・ロシアンゲート疑惑

小川和久のセキュリティ研究所第2回講義録<アメリカ・トランプ政権の動揺とさらに不安定化する世界>より、一部をお届けします。

トランプは「塀の内側」に落ちるのか
ーー相当深刻な事態・ロシアンゲート疑惑

今、日本の政権の方が気になるというのが、私の正直な感想だ。

しかし、アメリカのトランプ大統領が、塀の内側に落ちるかどうかという、際どいところを歩いているのは間違いない。

もちろん、そう簡単には落ちないだろう。

しかし、落ちないためには、国内外で、あれやこれややるであろう。それが日本にとってもいろいろな影響を及ぼしかねない。そのため、今進んでいる、トランプ弾劾の動きについて、まず、おさらいをしておこう。

週内(6月16、17日)にも、アメリカのマラー特別検察官は情報機関幹部からの聞き取りを始めると報道されている。

それらの報道によると、「ロシア疑惑」「ロシアンゲート」の問題を中心に、調査は行われていくであろうということだ。もちろん焦点は、大統領選挙を巡るトランプ大統領の側近達とロシアの関係だが、聞き取りは、大統領就任以降のトランプ氏の言動に絞り込んで行われるということだ。

司法当局としては、トランプ大統領の司法妨害に注目している。司法妨害ということが立証されると、捜査対象として大変厳しいチェックにさらされることになる。

5月9日に、FBIのコミー長官をトランプ大統領が解任した。これをもって、いよいよ大統領の関与疑惑が深まった。

このコミー長官解任に当たっては、側近のフリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するように求めた、という情報が、メディアに出た。この問題にきちんと白黒つけるのには、特別検察官(政府外から選任される検察官)が必要と判断され、マラー氏が任命された。

今回、特別検察官による聞き取りの対象は3人。

コーツ国家情報長官、ロジャース国家安全保障局(NSC)長官、レジェント前NSC副局長。

また特別検察官は、NSCに対しホワイトハウスとのやりとりに関する、すべての資料の提出を求めた。また、ウォーターゲート事件、エンロン事件などの捜査に関わった経験者を司法省の内外から集めて、「強力」と言われるチームを結成したと見られている。

疑惑は4点あると言われる。

1番目は、コミー前FBI長官にフリン前補佐官への捜査打ち切りを要求したか否か、

2番目が、コミー前長官にトランプ氏自身への忠誠を誓うように要求したか否か、

3番目が、コーツ国家情報長官にFBIの捜査に介入できないか打診したか否か、

4番目が、コーツ国家情報長官とロジャースNSC長官にロシアとの結託の証拠はないと証言するよう要求したか否か、

である。

この中で、元陸軍中将のフリン前大統領補佐官の疑惑が避けがたいものとして出てくる。

彼の場合はともかく大統領補佐官に就任する前に動きをした。それが法律に触れるという疑いだが、連邦法に照らし、立証のハードルは高いと見られている。

この人の疑惑、補佐官に就任する前に、キスニャック駐米ロシア大使と接触があったが、そのときの話の中身というのは、対ロシア制裁の緩和であったといわれている。そのとき許可を得ていない民間人という立場だった。許可を得ないものが外交交渉に関与することを禁ずる、ローガン法に抵触することになる。

ロシア政府との間で、制裁解除に関する密約を行ったとする報道を、トランプ陣営が再三にわたって否定してきたことは、トランプ陣営とロシア政府の接触を逆に裏付ける結果になっている。

不可解とされているのは、フリン元補佐官が、独自の判断でロシアへの制裁解除を勝手に約束していたのか。あるいは命令を受け、つまりトランプ氏の命令を受けて交渉を進めていたかの点である。

この辺について、特別検察官がどこまで切り込めるかにあるといっていい。

ロシアのアメリカにおける情報機関の責任者は、大使につくことはなく、もっと身分の低い職員として大使館にいるものである。

キスニャック氏の場合は、情報機関のトップの立場で、フリン氏とさまざまな密約を交わしたであろうということで、ロシア側もあわてて彼を帰国させる措置をとっている。

 

選挙干渉依頼なら反逆罪

ロシアとの関係、ロシア政府によるアメリカ民主党のシステムへのハッキングというもの、これがトランプ氏と共謀したような関係だったのか。

ハッキングで不法に得られた情報の内容についてどういう中身だったのか。

(続く)

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小川和久(おがわ・かずひさ)

1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣では野中官房長官とドクター・ヘリを実現させた。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。

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