嵐のようなアメリカ・トランプ大統領の東アジア歴訪が心配されたほどの混乱もなく終え、要するにいまのアメリカ大統領のほうが北朝鮮の若き独裁者よりも取れるオプションが多く変人であるがゆえにリスクが高いよね、という共通認識ができた感じでしょうか。
韓国では米韓首脳会談のドタバタをよそに在韓米国人の国外退去に関するガイドラインが改めて出され、アメリカ政府要人や企業幹部クラスの韓国街への退避が増えているように見えますが、昨今の報道でも出ているとおり「差し迫った対北朝鮮有事」への対応はもっぱら北朝鮮の暴発というよりもトランプさんの北朝鮮単独攻撃決断のほうが大変じゃないかという流れになっています。
実際、トランプさんが北朝鮮攻撃を決断したとしても、地上兵力の投入がない限り、真の意味での北朝鮮の非核化は困難を極めます。どこに隠しているか必ずしもすべては分からないし、意外なところに国際的な協力者が潜んでいる可能性はあるからです。また、トランプさんの攻撃決断はすなわち38度線の近くにあるソウルは北朝鮮からの報復攻撃によって火の海になる可能性は極めて高くなり、これはトランプさんの決断はひとえに韓国人、ソウル市民の生命と財産を投げ打つ決定に近いということはよく知っておく必要があります。
一方で、国際金融では中東でのサウジアラビア王家の元皇太子でもある富豪の逮捕、資産凍結を機とする経済混乱が心配され、また、中国も先日の共産党大会以降の経済の足取りが不安視される向きが強くなってきました。もちろん、地合いが悪いからすぐに相場が調整に転じるというものでもないのですが、大統領にトランプさんが就任して以来一貫して上昇を続けてきたアメリカや日本の株高も、同じようなシナリオで踏み上がっていくのかどうか心配な機運が出てきているのも事実です。
2015年の人民元に対する不安感や上海市場の海外投資家取引停止の頃と比べて、各国当局の取れる金融政策の幅が狭くなってきているのは事実です。アベノミクスが成功したかどうかは円安株高の利益を享受できる人とそうでない人の間で見解が別れるのと同様、これ以上の世界経済の成長ドライバーが見当たらなくなってきているいま、むしろ世界経済は出口戦略不在の中で資産だけが値上がりしてバブル状態になっているのではないか、と見る識者が増えるのも当然です。割高すぎるハイテク株、一般民が住むには高額すぎる都市部の不動産賃貸価格、行き先がいまひとつはっきりしない緩和された流動性などなど、症状を示すネタはたくさんあります。
そして、万一バブルでした、崩壊しました、という話がある程度の真実なのだとしても、これは地震予知と同じように「それがいつ起きるのかは分からない」ものです。いずれ日本を襲う大地震とそれに伴う大津波が来るのだとしても、それに備えることのむつかしさはあります。どういうコストをかければ良いのか、自身や家族、社員の生命の安全は最優先としても、保有する現金や不動産、証券などをどう持っておけばセーフティなのかも含めて、どうしようもない事態は起こり得ます。
シートベルトを締めておくのは必要なことなのですが、財産面では「そもそも安全な財産とは何か」という非常に哲学的な考察を求められる局面があります。例えば、インフレに備えて海外割合の高い企業の株式投資をという鉄則はあったとして、世界経済が減退したらただでさえ割高な国際優良銘柄は株価が奈落の底へ落ちていきます。でも、国内でしか通用しないような企業は上場を維持できず株券が紙切れになってしまうかもしれない。
世界的に安全なポートフォリオを、と欧州やオーストラリアに資産を逃避しても、中国で経済危機が起きれば中国経済に依存度の高いドイツを中心に好循環が逆噴射し、ユーロ全体にすぐに影響が及んで金融商品の価格が崩壊するどころか売買停止に追い込まれる商品が続出するかもしれない。
いろんなリスクはつきもので、考えれば考えるほど「もう田舎に引っ込んで農業でもやろう」となるかもしれませんが、これはこれで農作物と相場の関係からして逃げた結果がもっと貧しくなることを覚悟しなければなりません。バブルが怖い、でも世界経済の成長は享受したいと考える投資家は、相反するリスクの中でどこかにポジションを取る必要があるのですが、正解はない以上、己の相場観を信じ、どのような結果であっても心穏やかに受け入れられるような平常心を培うことが先決、なのかもしれません。
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Vol.207 バブル崩壊のシナリオと対処法をぼんやり考えつつ、このところの選挙予測のむつかしさや人工知能の弱点を見つめてみる回
2017年11月10日発行号 目次
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【1. インシデント1】ネットパネル調査といわゆる「情報参謀」的なアプローチについて
【2. インシデント2】今はまだ疑うことを知らない人工知能の弱点
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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