高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

DJ用コントローラを作りながら電気自動車を自作する未来を夢見る

高城未来研究所【Future Report】Vol.309(2017年5月19日発行)より


今週は、東京にいます。

気候の良い時期に東京にいると、いつも以上に活動的になってあちこち動き回るものですが、その動きはけもの道同様、新宿と秋葉原を往復するばかりの日々を送っています。

いまや、世界最大のエレクトロニクス・シティの冠は深センの華強北に奪われてしまいましたが、まだまだ秋葉原にはお宝が眠っていまして、なかでもビンテージと呼ばれるオーディオやパーツは世界一の宝庫で、マニアには垂涎なショップが多くあります。

ですが、このビンテージパーツ・ショップに訪れる日本人は、かなり高齢の方しかいない様子で、少しばかり失礼かと思いますが、リタイアメントした皆さんが盆栽を愛でるように、真空管オーディオを愛でているようにお見受けします。

一方、秋葉原のビンテージパーツ・ショップで見かける外国人は、米国や欧州の20代と30代です。
これは、世界中の先進国のトレンドが、レコードと真空管アンプですので、日本観光の一環として秋葉原のお宝ショップを訪れる人が年々増えているのにたいし、日本だけハイレゾと呼ばれるデジタル高音質が大プッシュされているのが要因です。

音楽シーンを見れば、その国の社会の行く末がわかると何度もお話しして参りましたように、世界中の先進国では、行きすぎたグローバリゼーションやデジタル化が社会問題視化されており、先端のレストランやカフェでは、決まってレコードや真空管アンプが置いてあります。
また、街角を見渡せば、レコードショップが急増し、なにより、世界の音楽業界でレコードの売り上げが驚くほどに伸びているのです(そしてカセットテープも!)。

しかし、日本ではグローバリゼーションやデジタル化が問題視されることなく、音楽を取り巻く環境も、高サンプリング化を謳ったハイレゾリューション(通称:ハイレゾ)が売り場を占めています。
それゆえ、秋葉原のビンテージパーツショップには、グローバリゼーションやデジタル化に取り残された日本人高齢者と米国や欧州の若者だけが集まる変わった現象が起きています。

これこそ、世界の「あたらしい二極化」の最たるものだと感じますが、ストリートから次の社会を読み解くのは別の機会にするとして、個人的な今週の秋葉原通いは、DJ用のコントローラを作ることが目的です。

その昔、DJが操るものといえば、ターンテーブルやCDJ、それにDJミキサーでしたが、時代は移り変わり最新トラックがファイル化され、「Traktor」のような高機能DJアプリケーションが登場すると、同時に4曲以上ミックスすることが一般化し、DJプレイは「選曲」から「ライブ」へと昇華しました。
それにあわせるように、CDJやDJミキサーは過去のものとなって、いまはアプリケーションをコントロールする物理コントローラが、DJの「ライブ」プレイの中心的存在となったのです。

しかし、物理コントローラはハードなわけですから、ソフトウエアと違って、個別にカスタマイズすることができません。
販売するメーカーも、多くの人の希望に沿うように設計された商品を出荷しますので、どれも「帯に短し、襷に長し」と、とても僕には満足いく逸品とはならないのです。

そこで、自作です。
DJ用の物理コントローラを製作するのに向いている街は、世界広しと言えども深センと秋葉原ぐらいで、しかも、ビンテージパーツを取り入れようと思ったら、秋葉原しかありません。
それゆえ、いつか東京に長めに滞在し、時間がある時に作ろうと考えていたコントローラ製作に今週はいよいよ取り組んだわけですが、なかなか思うように進みません。

いくつかのパーツを買って、ホテルに戻って組み立てるとうまくいかず、再び秋葉原に戻ってパーツを買い直して組み立てると、今度は別の問題が発生します。

夏までには、どうにかコントローラを作り上げたいと考えておりますが、きっと、そのうち電気自動車も自分で組み立てる日がやってくるように思います。
公道を走るなら、車検やナンバーも必要でしょうが、ドローン同様に「規制外」の場所で乗るのであれば、そこまで難しくないように思うのです。

電気自動車を自作する日。
そんな未来は、楽しい大人の夏休みになりそうです。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.309 2017年5月19日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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