※高城未来研究所【Future Report】Vol.343(2018年1月12日発行)より
今週は、京都にいます。
毎年この時期は、ラスベガスで行われる世界最大のエレクトロニクスショーCESに参加していましたが、今年は開催時期が例年よりも遅いため、他の仕事と日程が重なってしまったこともあって、出向けませんでした。
その数日間(正月休みと次の仕事)の合間を縫って、今週は京都にやってきました。
現在、京都の本を執筆中のため、四季折々の京都に訪れていますが、京都には数多くの神社仏閣があっても、地元の人たちは初詣に行きません。
確かに正月早々、有名な神社で見かけるのは他府県ナンバーの車と観光客ばかりで、地元の友人に尋ねると「なんで行くの?」と、不思議がって聞き返される始末。
そんな京都人でも、正月にお参りに出向く先があります。
それが、「十日えびす」です。
関東ではあまり知られていない「十日えびす」は、商売繁盛、開運招福、殖産、除災を祈願する祭礼で、関西(特に京阪神)ではお正月以上の盛り上がりを見せる一大イベントです。
「戎(恵比寿)」様は、「七福神」の中の一人で、釣り竿と鯛を両手に持ってほほえんでいる神様で、遠くの海からやってきて人々をしあわせにする神様だといわれ、漁業の神、商売繁盛の神、福の神として知られています。
全国に三千社あるえびす神を祭る神社がありますが、「日本三大えびす神社」は、「西宮神社」(兵庫県西宮市)、「今宮戎神社」(大阪市)、「京都ゑびす神社」(京都市)と、すべて関西にあります。
なかでも、「西宮神社」の「十日えびす」は、毎年百万人を超える参拝客が福を求めて訪れる巨大な祭事です。
京都では、毎年1月8日から12日、祇園の南、大和大路通にある「京都ゑびす神社」で「十日ゑびす大祭」が開催され、舞妓さんによる福笹、福もちの授与や、東映太秦から時代劇女優が参列する「宝恵かご社参」と、京都らしいのが特徴です。
一方、東京では商売繁盛を願うお祭りとして、「酉の市」があります。
関西のえびす様が「えべっさん」と呼ばれるように、関東では「お酉さま」と愛着を持って呼ばれる「酉の市」は、11月の酉の日に行われる祭で、同じく商売繁盛を願います。
参拝者が「十日えびす」では笹を求めるように、「酉の市」では、良い商売が「掴める」ように熊手を買い求めています。
さて、この戎とも蛭子とも書く恵比寿様は、七福神のひとりとしても有名ですが、この七福神の神々で、唯一日本の神様が、この恵比寿様です。
大黒天、毘沙門天、福禄寿、寿老人、布袋、弁財天、そして恵比寿の7神をもって七福神と呼びますが、大黒天はインドの「マハーカーラ」と日本の大国主命が習合した神様であるように、恵比寿神を除く6神は、外来の神様および習合神なのです。
そう考えると、宝船に乗った七福神は、国際連合軍とも言えるでしょうし、現代的に言えば、サッカーの多国籍ドリームチームのような存在にも思えます。
今週、中国や欧州からの観光客が「京都ゑびす神社」に参拝に訪れ、福笹を手に入れる光景をみると、いわゆる宗教を超えた文化のグローバリゼーションが急速に起きているのを京都で実感します。
そろそろ、日本人も決して学校では習う事がない他国の宗教を、本気で理解する時かも知れませんね、平和のためにも。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.343 2018年1月12日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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