就職活動の面接や、会議でのプレゼンなど、初対面や大勢の相手の前で話をするのは緊張するものです。精神科医の名越康文先生は、こうした緊張の奥には、無意識のうちに作られた「他人=敵」という認識があると言います。
最新刊『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』より、他人を味方に変える3つのアプローチをお届けします。
私たちは無意識のうちに、他人=敵だと感じていることがある(イラスト:伊藤美樹)
緊張をほぐしたければまず、「他人=敵」という認識を変える
自分を否定されたらどうしよう、無視されたらどうしよう、仲良くなれなかったら嫌だな……。私たちは初対面の相手や、少し苦手意識のある人に会うとき、無意識のうちに不安を覚えています。
それは言わば、他人が「敵」として感じられている状態と言えるでしょう。
大学受験、就職活動、仕事でのプレゼンや商談……。どんな場面でも、接する相手のことが「敵」だと感じられているうちは、無意識のうちに身体と心は緊張し、パフォーマンスも落ちてしまいます。
この緊張をほぐすには、「周囲の人やモノを、味方に変えていく」のが近道です。
もちろん、初対面でも、相手がにこやかに、フレンドリーに接してくれれば、こちらの緊張は自然とほぐれてくるでしょう。しかし、そんな恵まれた出会いを、最初から期待するべきではありません。
可能な範囲で、自分のほうから緊張をほぐし、相手を「味方」に変えていく方法を、自分なりに作っておくことが必要です。
その1 挨拶
他人を味方に変えるというと、大げさなようですが、日常のちょっとした行動から変えていくことが可能です。
たとえば「明るく挨拶をする」ということを、いつもよりも気をつけてみる。
「え? それだけ?」と言ってしまいそうになるぐらい単純ですが、これをやっている人とやっていない人では、他者に対する無意識レベルの緊張度が、ずいぶん違ってくる。そういう意味では、相手を自分の味方に変えていく、なかなか有効な方法なのです。
朝、同僚や友人に「おはよう!」と明るく挨拶をすることだけを心がける。それを一か月も続けていれば、だんだんと周囲の人とのコミュニケーションが、スムーズになっていくことを実感できるでしょう。
その2 分かち合う
ある程度、周囲の人が自分の味方に変わってきたと感じられたら、次は「分かち合う」ということにチャレンジしてみてください。分かち合うと言っても、大げさなことをする必要はありません。たとえば頂き物のお菓子があったら、その場にいる人で分け合うようにする。
「良かったら一緒に食べない?」と気楽に口にできるようになると、対人関係のストレスが大きく軽減されるでしょう。
分かち合うというのは、もちろん「物」に限りません。コンビニのレジに、ほとんど同じタイミングで並んでしまったときに「どうぞ」と譲ることも、「分かち合う」ということです。
あるいは、混んだバスに乗っていて、目の前の席が空いたとき、何も考えずに「お、空いた。ラッキー!」と座らず、「座りたそうな人や、辛そうな人はいないかな」と周囲をうかがってみる。これも、「分かち合う」ということの一つです。
これは、簡単に言えば「少し背伸びして、周囲に貢献する」ということですね。この「少し背伸びする」というのって、生きていくうえで大事なことなんです。めちゃくちゃにがんばりすぎると、すぐに燃え尽きてしまいますから、ほんの少しだけ、がんばるのがいいんです。
朝、会社に行ったら同僚がどんよりとした顔をしていたとします。そういうときに、自分のコーヒーを淹れるとき、あえて二杯淹れる。しかも「淹れてやったぞ」というのではなく、「ついでに淹れたんだけど、良かったらどうぞ」とさりげなく差し出す。
あるいは、挨拶するときの声のトーンを少しだけ明るく、さわやかにする、というのも、ちょっとした背伸びと言えるでしょう。
その3 他人に貢献し、そのことをすぐに忘れる
こうした「他人に馴染む」努力をするときの注意点は、「この人にこれをしてあげた」と恩着せがましい気持ちにならないよう、何かをやったら、すぐに忘れる、ということです。
「やってあげた」と執着していると、人はどうしても相手からの返礼を求めてしまいます。でも、そのことに執着しているうちには、相手と「仲間」になることができないんです。
他人と何かを分かち合い、次の瞬間にはそのこと自体を忘れる。これができるようになってくると、対人関係にそれほどエネルギーを割かなくても、群れの中で生きていくことが、ずいぶん楽しく、過ごしやすくなってくるはずです。
続きは本書で!
話題沸騰! 各所で絶賛!!
『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』
著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊
電子版(kindle、epub)→https://yakan-hiko.com/dc.php?no=12
honto→https://honto.jp/netstore/pd-book_28512870.html
■内容
他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!
5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!
「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」
「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)
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