※高城未来研究所【Future Report】Vol.512(2021年4月9日発行)より
今週は、箱根にいます。
古くから東海道最大の難所として言われる箱根は、江戸時代に徳川家康が東西を結ぶ街道整備に着手する際、何度も山越えの道を断念するなど、険しい山々ならではの逸話が多数残されている場所です。
江戸から京に向かう場合、湯本の三枚橋で早川を渡って須雲川沿いを登り、畑宿を経て芦ノ湖畔に出る道は、旧東海道の小田原宿から箱根宿までの四里と箱根宿から三島宿までの四里をあわせ「箱根八里」と呼ばれ、休憩所だった茶屋だけでも十箇所以上ある難所中の難所として知られていました。
この険しい山を攻略するために作られた芦ノ湖湖畔にある宿場町箱根は、東海道五十三次の10番目の宿場ですが、実は、小田原、三島の両宿から各50軒を移住させて作られた新しい人工の町でした。
宿場の規模はそれほど大きくはなかったものの、本陣は六軒を数え、東海道中でも最多を誇った要所でもありました。
また、厳しい関所があったこともでも知られています。
この関所の目的は、諸大名の謀反を防ぐためで、開門は明け六つ(午前6時)から暮れ六つ(午後6時)までとされ、それ以外は公用を除いてどんな火急の場合でも通ることはできない難攻不落の自然要塞でした。
当時、「入り鉄砲に出女」と言われ、江戸に入って来る武器と、江戸から出ていく女性(人質としての姫)に特に注意が払われ、この厳しい箱根の関所があることで江戸幕府は安眠でき、結果、長期政権を続けることができたと語る歴史家もいます。
現在の箱根と言えば、正月の風物詩となった「箱根駅伝」の舞台としてご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、「箱根駅伝」が「アメリカ大陸横断駅伝」のトレーニングからはじまったことは、あまり知られていません。
マラソン選手として3度の世界記録を樹立して、近年、NHKドラマにもなった「マラソンの父」金栗四三は、桁外れのスケールで長距離ランナーを育てるため、「アメリカ大陸横断駅伝」を発案。
サンフランシスコを出発し、アリゾナの砂漠とロッキー山脈を越えて、アメリカ中部農村地帯を抜け、ニューヨークへゴールするという壮大な計画の準備のため、主要大学から選抜された選手が、東海道を通って「天下の嶮」箱根の山を攻略するトレーニングを開始します。
これが、今日の箱根駅伝の原型になるのですが、肝心の「アメリカ大陸横断駅伝」は、戦時バブル崩壊によって起きた昭和恐慌や、これが発端となった太平洋戦争突入のため、実現することはありませんでした。
かつて、パスポート同然だった通行手形のない「関所やぶり」は、誰だろうが磔になったほど、江戸とその他を二分した境界にある険しい箱根の関。
もし、コロナ禍で都会から離れる決意を持つならば、天下の険を越えなくては「世界を変えたこと」にならないのかもしれません。
今週、箱根の桜はピークを超えました。
陽だまりのなかを歩くと、季節は夏に向けて少しづつ変わりゆくのを感じます。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.512 2021年4月9日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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