本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

過去最高益を更新したトヨタ自動車の今後に思うこと

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.020(2018年5月11日)からの抜粋です。




今週、トヨタ自動車の過去最高益というニュースが話題となった。今年3月期(2018年度前期)の連結最終利益が、およそ2兆5000億円になると発表された。豊田章男社長は「トヨタ生産方式」で培ったノウハウをサービス関連事業でも生かす考えを示した。極めて順調に思えるが、個人的には先行きの不透明さを感じる記者会見だったように感じた。

今回の好業績は、足元の販売競争をうまく戦い抜いたからに他ならない。しかし、自動車業界におけるトヨタはグローバルでナンバーワンを争う立場であり、今後、さらに大きく成長する余地があるかとは言えばその先は見えづらい。その上、化石燃料からハイブリッド、さらに電気自動車へと向かう中で、トヨタの競争力がどこにあるか? に関しても議論があるところだろう。

だからこその新分野の開拓なのだろうが、車以外の投資分野が屋台骨になるとは考えにくい。一方、自動車技術を元にした新規事業……例えば自動運転技術を応用した流通プラットフォーム「e-Palette」などは社会全体を変える取り組みであり、投資負担は大きい。来年度に投じる研究開発費は1兆800億円に達するという。

こうした巨額投資は、自動車メーカーとしてのトヨタの基盤をより一層強固なものにするだろう。しかし、5Gネットワークの時代、自動運転の時代には、Googleをはじめ米IT企業が深く関与してくる。そうしたライバルと戦うために十分かと言えば、まだ先は見えにくい。だからこその大きな研究開発投資とも言えるだろう。

足元の業績が良いことは素直に評価できる部分だが、中長期的な戦略となるとタフな戦いが待っているだろう。しかし、そのことを一番意識しているのはトヨタ自身ではないか。これから2020年、あるいは2025年にかけて、トヨタが自動車メーカーからサービス事業者へとどう変わっていけるのか。勝負の時が迫っているように感じた。

 

本田雅一メールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」

37

2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

ご購読はこちら

本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

その他の記事

「人を2種類に分けるとすれば?」という質問に対する高城剛の答え(高城剛)
ビッグな『トランプ関税』時代の到来でシートベルト着用サインが点灯(やまもといちろう)
これからのクリエーターに必要なのは異なる二つの世界を行き来すること(岩崎夏海)
無意識の中にある「他者への期待」–その功罪(名越康文)
先人の知恵と努力の結晶(高城剛)
ネットによる社会の分断は、社会の知恵である「いい塩梅」「いい湯加減」を駄目にする(やまもといちろう)
連合前会長神津里季生さんとの対談を終え参院選を目前に控えて(やまもといちろう)
仮想通貨(暗号資産)相場は何度でもバブり、何度でも弾ける(やまもといちろう)
自分の身は自分で守るしかない世界へ(高城剛)
うまくやろうと思わないほうがうまくいく(家入一真)
自然なき現代生活とアーユルヴェーダ(高城剛)
「愛する人にだけは見せたくない」顔を表現するということ(切通理作)
石破茂さん自由民主党の新総裁に選任、からのあれこれ(やまもといちろう)
夏至にまつわる話(高城剛)
影響力が増すデジタルノマド経済圏(高城剛)
本田雅一のメールマガジン
「本田雅一の IT・ネット直球リポート」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 毎月2回(第2、4木曜日予定)

ページのトップへ