高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

日印デジタル・パートナーシップの裏にある各国の思惑を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.386(2018年11月9日発行)より

今週は、インドのハイデラバードにいます。

インド中南部のテランガーナ州の州都であり、アーンドラ・プラデーシュ州の州都も兼ねるハイデラバードは、急激な人口増が問題となるインドを代表するIT都市、バンガロールにキャッチアップする街として、注目を集めています。

インドは、この十年で大きく変わりました。
先週もお伝えしたバンガロールを代表する企業インフォシスの2000年当時の従業員数は5000人でしたが、いまは20万人規模まで急速に膨らんだように、産業集積都市に人口が密集するため、交通渋滞がひどく、インフラが追いついていません。
そこで、国家のグランドビジョンとして、バンガロールの「次のIT都市」を作ることを考えました。
それが、ハイデラバードです。

ハイデラバードは、歴史があるインドのなかでは極めてあたらしい街で、作られてから、500年も経ちません。
それでも、都市人口は800万人と、東京に匹敵するほど大きく、特徴は、イスラム人口が50%を占め(特に都市南部)、公用語は、ヒンディーではなく、テルグ語となります。

それゆえ、北部のニューデリーやムンバイとは違う、実質的に別の国だとみるべきで、事実、インド北部から来た人たちは、ハイデラバードのテルグ語テレビ放送を見ても、まったく理解できないのです。

また、この10月29日に、急速に近づく日本とインドの両政府間による「日印デジタル・パートナーシップ」が合意した、と発表されました。
これは、ハードとソフトの融合が鍵となるIoT時代において、デジタル分野における日本とインドの強みは相互補完的であり、新たな連携を組むことができる関係にある、と日本政府からアナウンスされています。
締結は、本年5月の「日印スタートアップ・イニシアチブ」をより深めたもので、あわせてインド工科大学ハイデラバード校がAI技術の研究協力に係る覚書を締結し、今後、日本はインドをデジタル分野における「戦略的なパートナー」との視点から新たな連携を深めることを目的としています。

本当にそれだけでしょうか?

そこで早速、南アジアを代表するエリート校であるインド工科大(IIT)のハイデラバード校に伺ってお話をお聞きして、腑に落ちました。

この大学は、事実上日本の資金で建てられた学校です。
現在、巨大な第二キャンパスが建造中で、その資金は、基本的に全額日本政府から捻出されています。

現地でお話を伺う限り、「日印デジタル・パートナーシップ」と言われていますが、その実態は、「ハイデラバードに日本から巨額の投資を行うことが目的」だと思われます。

その理由は、中国にあります。

世界地図でハイデラバードの地政学的位置を見るとよくわかりますが、インド南東部は、中国の21世紀のシルクロードと呼ばれる「一路一体」プロジェクトの要石的要所であり、それを塞ぐことが、本当の目的だと思われます。

つまり、ハイデラバードに、日本から巨額の投資を行う理由は、他ならぬ中国包囲網の一環で、これには米国の意向があるものと僕は考えます。
近年、トランプ政権が日本政府に対し、「自ら率先して中国包囲網を強化するように」と圧力をかけ、その展開先のひとつが、ハイデラバードなのです。
実際、インド工科大学ハイデラバード校の主要教授たちにお目にかかってお話を伺うと、まるで、米国人と話しているようで、米国の意向を感じ得ずにはいられません。

今週、インド暦の第七番目の月の初めの日、新月の日に「ディワリ」と呼ばれる巨大なお祭りが開催されます。
もともとは冬が来る前に収穫をお祝いするお祭りで、国家公認の祝日ではないものの、いわゆる インドの新年を祝う「お正月」として、インドでは重要な祝日とされており、街では、飾り付けが目立ちます。

しかし、インド工科大学ハイデラバード校では、まだ残るハロウィンの飾りつけばかりを目にします。

米国の意向により、中国包囲網のため日本の資金で作られた「IT都市の頭脳」インド工科大学ハイデラバード校。

昨年から米国の意向により、「アジア太平洋地域」は「インド太平洋地域」と呼びかえられるようになりましたが、この名称は「中国包囲網」の別名にすぎません。
ですが、中国の一帯一路計画は、70カ国に対し、合計1.3兆ドルを投資する構想に対し、米国および日本が出す金額は、その千分の一程度しかないのが、現実です。
これでは、包囲網の意味が、ほとんどありません。

この十年でインドが変わったように、世界も大きく激変していて、ハロウィンが終わったように、インドでは米国の力や存在が、すでに過去のものになりつつあるように感じる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.386 2018年11月9日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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