やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「日本の労働生産性がG7中で最下位」から日本の労働行政で起きる不思議なこと


 あほらしい話なのですが、先日G7で日本の労働生産性が最下位であるということで、日本企業の労働環境がいかにクソであるかという披露話がTwitterでトレンド入りするほど大きな話題になりました。

 しかしながら、この国際比較で行われる労働生産性は、あくまでその国の国民総生産を労働者数・労働時間(または購買力平価PPP)で割っただけのものなので、実際のところ国民の労働市場に女性が投入されたり、定年退職した高齢者が嘱託再雇用されると労働生産性は下がってしまいます。

労働生産性の国際比較
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/

 なにより、国民総生産を購買力平価で割るだけですから、輸出産業のために円安誘導すると、そのまま労働生産性は下がったことになってしまいます。ドルベースで物が買えなくなったから労働生産性が低いのだ、という話になるわけですが、ドル決済が基本のガソリンを飲んで暮らしている人はおりませんので、日本円で給料もらってるけどドル決済圏で暮らしているよという日本人でもない限り生産性は下がったとは言えないわけです。

ルクセンブルク - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AF

 その労働生産性で言うならば、ルクセンブルクが上位に来るわけなのですが、60万人のルクセンブルクはEU圏内ですので通貨安誘導からの雇用改善は無縁です。したがって、国民として登録されていない出稼ぎ労働者を除けば金融などソフトウェア分野での貿易収支で国が成り立っているところほど見た目の労働生産性は上がりますが、じゃあルクセンブルクは日本人の数倍働けるほどの有能な人たちばかりなのかと言われると、行ってみれば分かりますがたいした都市でもないのです。

 結論から言えば、円高にしちゃえば見た目の労働生産性は回復しますし、旧民主党時代は労働生産性が高かったというのはドルベースで見た所得が大きかったからだ、とも言えます。そして、一人当たりGDPが大きいから偉いというのは、GDPの産業別で見れば飲食が大きいですけど付加価値で言えば不動産のほうが就業人数に比べて圧倒的に生産性が高くなります。黒光りツーブロックゴリラの不動産営業のほうがワタミで働く人よりも生産性が高く見えるのは、そういうカラクリであることはきちんと知っておいてほしいと思うわけです。

日本のGDPの推移(主要国の名目GDP、国別シェア)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo8-2-2.pdf

 単純に生産性を上げたいということであれば、失業が増えるのには目をつむって女性や高齢者の利活用をやめたり、円高にしてしまえばあっさりと日本経済復活だとか言いながら上位に来るでしょう。それって意味がある指標なの、そのランキングが低位だからといってそんなに慌てることなのってのは、もう昔からある議論ですので、いちいちビビらないようにしながら株価下落を半笑いで眺められる立派な日本人でありたいと思います。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.247 「労働生産性」という数字はなんぞやという話をしつつ、中国マネーやコネクテッドカーの来し方行く末を考える回
2018年12月26日発行号 目次
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【0. 序文】「日本の労働生産性がG7中で最下位」から日本の労働行政で起きる不思議なこと
【1. インシデント1】「帰っていく中国マネー」が引くしょっぱいトリガー問題
【2. インシデント2】自動車もネットにつながっているのが当たり前の時代を控えて思うこと
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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