高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

秋葉原のPCパーツショップで実感するインフレの波

高城未来研究所【Future Report】Vol.523(2021年6月25日発行)より

今週は、東京にいます。

久しぶりに秋葉原へと出向きましたが、自作PCパーツ価格を見てチョット驚きました。
わずか1年で、買おうか考えていた高速SSDやGPUが、軒並み倍近い価格になっています!

まさか自作PCブームが来たとは思えず、各ショップスタッフに話しを聞いて廻ると、インフレと日本が他国に買い負けしている実態が浮かび上がりました。

まず、新型コロナ感染拡大の影響から、工場がストップ。テレワークの需要でコンピュータパーツの取り合いが、昨年から世界中で起きていました。
半年ほど前に訪れた際には、ショーケースに高速なビデオカードの在庫がまったく無い燦々たる状況でしたが、その後、入手が困難だった高速ビデオカードが、少しづつですが店頭に並ぶようになりました。

いまも商品の入荷状況は相変わらず不安定で、「次回入荷は未定」と大きく書かれたボードが、どの店でも目立ちます。
ショップでお話しを詳しくお聞きすると、日本で購入して他国に売る転売目的な人たちも相当数いると思われます。

この背景には、仮想通貨のマイニング向けに自作パーツ需要が世界的に高まっており、その他、ゲーム系YouTuberや動画編集事業が好景気なこともあって、価格が日に日に高騰。
ワクチン同様、他国に対して日本が買い負けている現状と、価格が世界的に釣り上がっている、つまり、インフレを感じずにはいられません。

一方、日本の実質賃金は減少。
1997年の日本の実質賃金を100とすると、20年秋時点で日本は90.3まで減少しているのに対し、米国は122.2、英国は129.7、韓国は157.9となり、日本では世界的なインフレと反対に実質賃金が落ちていることから、今後、グローバル商品には手が出しづらくなっていくことが予測されます。

今後も実質賃金が減少し、さらなる円安が続けば、PCパーツどころかiPhoneすら買うのが困難になるかもしれません。
ちなみに、iPhone 12 Pro Max(512GB)のブラジル価格は、税制や通貨安もあって、米ドル換算すると1台30万円近くになっています。

少し気になってドルのリバースレポを見れば、残高は史上最高額を更新中!(https://bit.ly/3wR3v04)。
世界は、お金がダブついているどころの状況じゃなく、スタグフレーションに差し掛かっているのが、よくわかります。
こうしてお金の価値が下がって逃げ出し、結果、仮想通貨のマイニングを即し、高速SSDやビデオカードが品薄になって価格高騰。
なかなか見えづらい、二重三重の原因=コロナによる生活変化、金融緩和によるインフレ懸念、通貨逃避としてのマイニングがあるいうことが、秋葉原のPCパーツショップをまわってわかりました。
ちなみに前回、レポ金利が急騰したのは2008年リーマンショック時でした。

毎年、RAIDドライブやSSD、高速メモリーカードなどの記憶媒体に100万円以上注ぎ込みますので、値動きには敏感にならざるを得ませんが、ワクチン接種後も感染者が増える現状や、FRBのテーパリングを先延ばししつづける様相を見ると、当面、PCパーツは高値のままだと思われます。

次は、食物をはじめとする生活必需品に影響を与えるんだろうな、と、秋葉原をブラブラまわりながら思う今週です。
ちなみに、ジャンクショップは、新店も増えて活況でした。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.523 2021年6月25日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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