小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

どうなる? 小中学校へのスマホ持ち込み

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2018年11月9日 Vol.196 <「革新とはなにか」号>より

10月13日に毎日新聞が報じたところによると、大阪府教育委員会が、現在原則禁止となっている携帯電話やスマートフォンの持ち込みを、見直す方針を固めたという。

・小中校持ち込み禁止を大阪府教委が見直しへ

記事中にもあるが、小中学校への携帯電話持ち込み禁止は、2008年に当時の橋下徹知事が決めたもので、それをきっかけにこの動きは全国に拡がった。

当時は安全のために子供に持たせたいという保護者と、学校に勉強以外の物を持ち込ませたくない学校側とが対立し、学校が文科省にお墨付きが欲しいとして、2009年に通知を出させたという経緯がある。

・学校における携帯電話の取扱い等について(通知)

この通知は今も生きていて、全国の公立小中学校が原則携帯電話やスマートフォンの持ち込みが禁止されているのは、これを根拠としている。

スマホ禁止の先頭を走ってきた大阪府が方針を転換することで、各都道府県もまたこれに続くのではないかとも言われている。その一方で、学校側にそんな準備ができているのか、不安視する教育関係者もいる。
 

時代は変わる

筆者が所属するインターネットユーザー協会では、全国の学校に出前授業という形でネットリテラシー講演を行っているのはご存じの方も多いだろう。先日も三重の小学校に講演にいったばかりだが、そのとき教頭先生から、スマホの持ち込みを検討していると聞いた。

実は小学校が持ち込み許可を検討しているという話を聞いたのはそれが初めてで、珍しいなと思った次第である。事情を聞いてみると、昔の街道沿いにあるその小学校は、道は狭いがそこそこ交通量がある街道を通って子供が通学してくるので、保護者としては何かあったときのために持たせたいという希望が多いのだという。

一方静岡のある小学校で聞いた話では、校区の学校が荒れているという理由でわざわざ遠くの小学校に通わせるケースがあり、遠方の子供は保護者が車で送り迎えをするにあたり、待ち合わせ時間の連絡等にスマホを持たせたいというニーズもあるという。

今小学生の保護者は、若い人で35歳前後だろう。携帯電話の世帯普及率が7割を超えたのは2000年の事で、今35歳のママが17歳の時である。当然高校生からケータイを使ってモバイルで連絡を取り合うのが当たり前で育ったわけで、子供を迎えに行くのに電話で連絡できないなら、どうやって待ち合わせしたらいいかわからないという発想になっても、全然おかしくない。

ただ、そういうリアルタイムで連絡が取りたいというニーズであれば、小学生のうちはキッズケータイやキッズスマホで十分であり、そちらをお勧めしたいところである。
 

私立のノウハウ

筆者の長女は、今から13年前に都内の中高一貫の私立校に行ったが、その学校は当時から携帯電話の持ち込みを許可していた。私立校の場合、電車やバスを乗り継いで遠くから通学してくる子も少なくないため、途中の交通機関の遅延連絡等も含めて、連絡のために携帯電話を持たせるメリットがある。

加えて中学受験して入学してくる子達は、小学生の頃から電車に乗っての塾通いや、模擬試験等を受験するなどの理由から、すでに携帯電話の所持率が高かった。筆者らが学校と協力して所持率を調査したところ、中学入学段階で男子80%、女子97%が所持しているという結果が出たぐらいだ。

その学校では、生徒達は朝のホームルームの時間に、携帯電話を提出し、担任がが職員室の金庫の中に保管する。授業中や昼休みにはもちろん使えない。帰りはまたホームルームの時間に携帯電話を返却し、子供たちはそれを持って帰路につく、というスタイルだ。

今も同じ運用をしているのか、もう卒業して何年も経つのでわからないが、おそらく公立の小中学校でスマホ持ち込みということになれば、このような運用になるだろう。

ところがこうした運用をした場合、学校サイドの有識者から懸念の声が上がった。「学校で預かっているときに故障や破損などしたら、誰の責任になるのか」という。金庫に入れているだけでは破損しないだろうが、運搬時に落とすといった事故はあり得る。

ただ実際に持ち込みが許可されている学校に子供を6年間通わせた親の立場からすると、学校で預かっている間にケータイが壊れたとかいう話は聞いたことがない。学校保管用に、それぞれの家庭ではケータイを保護するためのポーチを用意して子供に持たせているので、ケータイ同士がぶつかって傷が付いたという話もない。


当時の保管状態の写真。各自が持参したポーチに入れる
 
仮に壊れるようなことがあっても、それは持ち込ませる保護者のリスクですよと一筆貰っておけば済む話である。さらにはキャリアやメーカーの修理保証も手厚い。学校でも保険をかける等の対策もとれる。すでに持ち込みを許可している学校には、それなりのノウハウが溜まっているはずだ。

そうした私学のノウハウを聞きに行くという発想もなく、困った困った大変だ大変だとオロオロするのでは、知恵がなさ過ぎであろう。

スマートフォンの学校持ち込みが解禁された場合、トラブルはゼロではないだろう。しかしそれが時代の要請であれば、「今を生きる子どもを育てる」のが学校の役割である限り、受け入れるしかなかろう。またまた文科省に泣きついて、新たな「通知」が出るようなバカバカしい事態は避けたいものである。

そのためには、我々も知恵を貸すことは惜しまないつもりだ。
 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2018年11月9日 Vol.196 <「革新とはなにか」号> 目次

01 論壇【西田】
 アップル新製品からみる「イノベーション」の今
02 余談【小寺】
 どうなる? 小中学校へのスマホ持ち込み
03 対談【西田】
 境治さんに聞く「バズで売れるってどういうことなのか」(2)
04 過去記事【西田】
 そろそろスティーブに「さよなら」を言おう
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。   ご購読・詳細はこちらから!

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