ロバート・ハリス
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ロバート・ハリス メルマガ『運命のダイスを転がせ!』

アカデミー賞騒ぎを振り返って〜往年の名優を巻き込んだ「手違い」

ロバート・ハリスメールマガジン『運命のダイスを転がせ!』Vol.024より

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オスカー作品賞発表で、まさかのハプニングが起こった

 
先日開催された第89回アカデミー賞の授賞式で作品賞を間違えて発表するという前代未聞の放送事故があったことはみなさんももうご存知ですよね。ぼくはWOWOWで生中継を観ていて、このハプニングをリアルタイムで目撃しました。

作品賞のプレゼンターは往年のプレイボーイ俳優のウォーレン・ベイティ(79歳)と絶世の美女として謳われたフェイ・ダナウェイ(76歳)。

なぜ彼らがプレゼンターに選ばれたかというと、二人が主演した名作『俺たちに明日はない』が今年で50周年記念を迎えたからです。勝者の名前が入った封筒を開けたのはウォーレン・ベイティ。でも、彼は中のカードを見て顔を顰め、読み上げるのを躊躇します。そして気まずそうな顔でカードをフェイ・ダナウェイに手渡し、彼女が「オスカーは『ラ・ラ・ランド』が受賞!」と発表。

同作品の関係者がステージに上がり、喜びに抱き合い、プロデューサーたちが次々と受賞スピーチをしていきます。

今年のアカデミー賞はまさに『ラ・ラ・ランド』イヤー。1997年の『タイタニック』と並ぶ、史上最多の14ノミネートを獲得し、監督賞を含む6の賞を既に受賞していました。でも、2人目のプロデューサーのスピーチの途中辺りから、彼の後ろのステージがざわつき始め、ヘッドセットをしたスタッフが忙しそうに動き回るのが見えました。

 
 

「ノー!ノー!手違いがありました」

 
そしてついに真相を知った『ラ・ラ・ランド』のチーフ・プロデューサーのジョーダン・ホロウィッツが

「ノー!ノー!手違いがありました。『ムーンライト』. . . あなたたちが作品賞を受賞しました。これは冗談ではありません。作品賞は『ムーンライト』です!」

と言うと、ウォーレン・ベイティの手から「作品賞『ムーンライト』」と書かれたカードを取り、カメラの前に掲げます。

これで会場はパニックに包まれるわけですが、ベイティがマイクの前に立ち、

「何が起こったか、説明します。ぼくが封を開けると、カードには「エマ・ストーン 『ラ・ラ・ランド』」と書かれていました。だから躊躇したのです。笑わせようとした訳ではありません!」と説明。

どうやら既に発表された主演女優賞のカードが間違って彼らに渡されてしまったようです。

だから日本のテレビ局が言うように、プレゼンターが間違って勝者を読み上げてしまったのではなく、プレゼンターが間違ったカードを渡されて、それを読んでしまったのがいけなかったのですね。

ベイティがもう少し若くて間違いを瞬時に把握して関係者に訴えていれば、事故は起こらなかったかもしれない、ということも言えますけど、それを言ってしまうとベイティが可哀想ですよね。あの状況で間違いに気付いて対処するにはよほどの注意力と決断力が必要だし、何年も一線から退いている79歳のベイティにそれを期待するのは酷な事だと思います。

でも、あとでエマ・ストーンの記者会見があり、「主演女優のカードは私が貰ってずっと持っていたから、あれは一体何だったのかしら。変ね」と言っていましたから、謎は深まるばかりです。

因みにカードを保管してプレゼンターへ渡す役を担っているのはイギリスのプライス・ウォーターハウス・クーパーズという監査役の会社。アカデミーとは83年もの長い間契約を結んできて、今度のようなミスをするのは初めて、ということです。
 
 

もうひとつの手痛いミスとは

 
でも、今回のアカデミー賞ではもうひとつ、大きなミスがあったのですが、こっちの方はあまり知られていません。

過去1年間に亡くなった映画関係者を追悼するIN MEMORIAMというコーナーで去年の11月に亡くなったジャネット・パターソンという衣装アーティストの名前の上に載った写真は実は彼女のではなく、彼女の友人で、まだ健在で現役のオーストラリアのプロデューサーのジャン・チャップマンのものだったのです。

アカデミーはあとで失敗を認める発表をして謝罪したそうですが、こっちの方は笑えない失態ですね。チャップマンさんは怒るというよりは、これでは亡くなった友人のジャネットが可哀想だと嘆いていました。

この第89回アカデミー賞は2人の映画人にとって、復活と贖罪のアカデミーでもありました。

妻に対するDVと暴言、脅しの数々、そして友人に対する反ユダヤ発言や反ホモセクシャル発言で長い間、ハリウッド一の憎まれ男だった俳優/監督のメル・ギブソンが今回、太平洋戦争を題材にした監督作品『ハクソー・リッジ』(原題)で監督賞、主演男優賞を含む6つのオスカーにノミネートされ、見事編集賞と音楽編集賞を受賞しました。彼は新しいガールフレンド(?)と来ていましたが、周りに満面の笑顔を振りまいていました。

 
 

ほかにも悲喜こもごもなエピソードが

 
もう一人の復活劇は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。

彼は以前、義兄のホアキン・フェニックスが俳優を辞めラッパーになるという嘘のドキュメンタリー映画を監督していたのですが、この作品の女性プロデューサーと女性撮影監督の2人にセクシャル・ハラスメントで訴訟を起こされていました。2人が訴えたセクシャル・ハラスメントの内容はハリウッド中の噂になり、彼もメル同様、みんなからつまはじきにされていました。

でも、訴訟はなんとか示談で終わり、アフレックはこの映画で見事オスカーを手に入れ、会場の祝福を受けていました。お兄さんのベン・アフレックは泣いていましたけど、兄としてもいろいろと大変だったのでしょう。ぼくはむしろ彼の方にエンパシーを感じました。

最後に、この前のミス・ユニバース大会で優勝者を準ミスと間違って紹介してしまった司会者でコメディアンのスティーブ・ハーヴェイからウォーレン・ベイティにツィートがあったそうです:

「大丈夫だよ、ウォーレン。ぼくなら君を癒してあげられるよ。電話をちょうだい」

というメッセージだったそうです。
 
 

ロバート・ハリスメールマガジン『運命のダイスを転がせ!』

2017年3月1日Vol.024<花粉症デビューに娘のこと、そして村上春樹:アカデミー賞騒ぎ:『セクシャル・アウトロー』:第22章野生の夜>

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既存のルールに縛られず、職業や社会的地位にとらわれることなく、自由に考え、発想し、行動する人間として生き続けてきたロバート・ハリス。多くのデュアルライフ実践家やノマドワーカーから絶大なる支持を集めています。「人生、楽しんだ者勝ち」を信条にして生きる彼が、愛について、友情について、家族について、旅や映画や本や音楽やスポーツやギャンブルやセックスや食事やファッションやサブカルチャー、運命や宿命や信仰や哲学や生きる上でのスタンスなどについて綴ります。1964年の横浜を舞台にした描きおろし小説も連載スタート!

vol.024 目次

01 近況:花粉症デビューに娘のこと、そして村上春樹
02 カフェ・エグザイルス:アカデミー賞騒ぎ
03 物語のある景色:今号はお休みです。
04 連載小説『セクシャル・アウトロー』:第22章 野生の夜

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ロバート・ハリス
横浜生まれ。高校時代から国内をヒッチハイクでまわり、卒業後は北欧からインドまで半年間の旅をする。上智大学卒業後、東南アジアを放浪。バリ島に一年滞在後、オーストラリアにわたり延べ16年滞在。シドニーで書店&画廊『Exiles』を経営。ポエトリー・リーディング、演劇、コンサート等を主催、文化人のサロンとなり話題に。映画やテレビの製作スタッフとしても活躍後、日本に帰国。1992年よりJ-WAVEのナビゲーターに。1997年に刊行された初の著書『エグザイルス(放浪者たち)ーすべての旅は自分へとつながっている』(講談社)は、若者のバイブルと謳われ長く読み継がれている。『ワイルドサイドを歩け』『人生の100のリスト』(いずれも講談社)、『エグザイルス・ギャング』(幻冬舎アウトロー庫)、『英語なんてこれだけ聴けてこれだけ言えれば世界はどこでも旅できる』(東京書籍)、『アフォリズム』(NORTH VILLAGE)、『アウトサイダーの幸福論』(集英社)など著書多数。

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