高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

中央集権的システムがもたらす「あたらしい廃墟」

高城未来研究所【Future Report】Vol.468(2020年6月5日発行)より

今週は、沖縄本島北部にいます。

もう1ヶ月以上、沖縄では新規感染者も出ていないこともありまして、行動範囲を徐々に広げはじめました。
まずは、おさらいしながら一昨年にリリースした本邦初(たぶん世界初)、「沖縄本島北部」だけにフォーカスした旅行ガイド「NEXTRAVELER沖縄本島北部」(https://amzn.to/3gkd9jU)を片手に本部半島へ。
このあたりには、いまも美しい海が残り、緑溢れる山が多く、なにより夕日が美しい!

ここ数年、オリンピックイヤーと観光バブルの後押しもあって、ホテルラッシュと新店オープンに沸いていましたが、新型コロナウイルス感染拡大により、あれほど盛り上がりをみせていた本島北部振興にブレーキがかかってしまったのは、否めません。
現在、休業中のホテルも多く、グランドオープンができないまま「あたらしい廃墟」のようになっている場所も、目につきます。

つい数ヶ月前まで、那覇は沖縄観光のボトルネックになっており、パンク寸前でした。
空港は急速に拡大工事が行われ(2020年3月に那覇空港第2滑走路が完成)、クルーズ船の来航を増やすため、港は拡張工事を続けましたが、那覇は街として、もう人を受け入れるキャパシティを遥かに超えてしまっていました。

しかし、ほとんどの観光客の目的地は、北部にある「美ら海水族館」で、リピーターは中部の読谷村か北部の恩納村を目指します。
つまり、大半の観光客が「那覇をパス」して、北へと進路をとっているのに、那覇しかゲートウェイがないため、ボトルネックとなっていたのです。

そこで、那覇に到着したゲストを、高速船を使って北部まで一気に運ぶ計画が急浮上しました。
その導線が確保できるまでも、専用高速バスを何台も走らせ、北部に巨大レンタカーターミナルを作り、官民あげて北部振興を計画中でした。

それもあって(北部振興補助金もあって)、続々とホテル建設がはじまり、ハワイの有名ホテル「ハレクラニ」も、昨年夏に開業。フォーシーズンズとベルジャヤが、総開発費443億円の巨大リゾートを計画。
人口1万人の恩納村に、300室を超えるホテルが、この2年で4つもオープンし、さらに3つが開業予定。
人手不足から、従業員用の住宅も建設ラッシュが起こり、その周辺には、飲食店の開業が、先行してはじまりました。

また、2024年には、本島北部に1000億円近くを投じた巨大テーマパークが開業予定。
USJや東京ディズニーリゾート(TDR)とは違った「自然を生かした日本型スタイル」の施設になることが、発表されています。

一方、これだけ開発ラッシュで、辺野古米軍基地問題もあるのに、沖縄北部のやんばるは、本年ユネスコの「世界自然遺産」登録を目指していました(多額を投じたロビー活動により、内々定を受けていました)。
実は、この「世界自然遺産」登録を前提に、本島北部の大型プロジェクトが、驚くほどの勢いで推進されていたのです。

ところが、今回の新型コロナウイルス感染拡大で、多くのプロジェクトが止まっています。
おかげで、開発予定地だった場所に人が押し寄せる気配なく、本来の自然の姿に戻りつつあるのは、「世界自然遺産」を目論んだ人たちにとって、なんとも皮肉な話です。

かつて、肥沃だった土地を中央集権的システムが次々と開発したため、クメール王朝は、崩壊しました。
それまで、地域の人々が最重視していた「自然との対話」を壊した中央集権的システムは、疫病、モンスーン,干ばつ、人口急増に対応できませんでした。
どんなに文明が発達し、テクノロジーの進歩が目覚ましくても、人間は、自然をコントロールすることは不可能ですが、時に人は、様々な欲望や利便性が先行し、それを忘れてしまいます。

建設が止まったホテルは、おそらく再開されません。
この光景は、まるで滅びた王朝の遺跡にも思えるほどです。

歴史は、いつも繰り返すものだと、感慨深く「あたらしい廃墟」を巡る今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.468 2020年6月5日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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