※高城未来研究所【Future Report】Vol.574(6月17日)より
今週は、屋久島にいます。
ある時、理由も意味もなく同じ旅先に何度も通うようになることがあります。
90年代の屋久島は、僕にとってそんな場所でした。
その後、屋久島初の豪華リゾート「あかつき」(のちの「サンカラ」)が島外(神奈川)の土建業者によって建てられ、伝説とも言える民宿「晴耕雨読」の客層がガラリと変わったあたりから、僕の足も徐々に遠のくことになります。
そして今回、20数年ぶりに屋久島に訪れました。
この間、一時的な屋久島ブームによって年間観光客数は40万人まで膨らみましたが(ネイチャーガイドも10倍に増えましたが)、現在は来島者も15万人程度に落ち着き、オーバーツーリズムの懸念も拭われ、島は落ち着きを取り戻しているように見受けられます。
一方、面白い移住者は増えており、世界の文化や自然、旅のドキュメントを美しい写真とともに伝える屋久島発の雑誌『サウンターマガジン』編集部が手がける宿屋「アナンダ・チレッジ」(http://anandachillage.com)をはじめとする島南部の移住者コミュニティが発する独特なカルチャーは、世界的にも類を見ない、「ポートランド以後」を感じるほどです。
あとは、この島ならではの食事処がほしい限り。
しかし、なぜか自分とこの島が「ピタッ」と来る感じがありません。
けっして、居心地が悪いわけではないどころか、むしろ居心地は良く、ただでさえ雨が多い屋久島の梅雨時にしてはたいして雨も降らず、気候は暑くも寒くもない適度な日々が続きます(エアコン要らず)。
いったい、僕がこの島に「ピタッ」と来ない理由はどこにあるのでしょうか?
一般的に屋久島といえば、屋久杉をはじめとする広大な自然などに目が行ってしまいますが、この島の魅力は「屋久島時間」にあると考えます。
沖縄のようなゆっくりとした「時間」でもなく、都会のようなあくせくしたような「時間」でもない、不思議な屋久島の独自のリズム感。
90年代に通っていた時にも、屋久島ならではの長い尺度を持つ独特の「時間」をなかなか掴みきれなかったことを思い出しました。
この20年で僕なりの旅路を経て再び来島した感覚を忌憚なくお話しすれば、屋久島とは強力な精神安定剤のようなものを放つ島で、多動な僕に「もっとゆっくり!もっとゆっくり!」と荘厳な山々が昼夜囁き続けているように感じます。
ところが、僕自身まだまだ落ち着けません!
多動と安定。
旅と雨。
そして僕と屋久島。
相反するふたつの間にある絶妙なバランス点を見出せるかどうかが、この島を心から楽しめる今週の(いまの僕の)課題です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.574 6月17日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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