高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

お盆とスターウォーズ

高城未来研究所【Future Report】Vol.687(8月16日)より

今週は東京にいます。

久しぶりに日本のお盆を過ごしていますが、海外から来た友人たちは「お盆」など露知らず、夏休みの真っ只中のこの時期に日本へ遊びに来て、日々街から人が減って行く様子に驚きます。
なかには「もうじき地震が来るから避難しはじめているのか!?」と慌てふためく人もおり、都度説明を求められていますが、「お盆」がなかなか伝わりません。

元々「お盆」という名称の由来は、仏教における「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という行事にあり、これは、サンスクリット語の「ウラバンナ」に由来する「逆さ吊りの苦しみ」という意味で、仏教におけるある逸話に基づいています。
釈迦の弟子である目連尊者が、亡き母が地獄で逆さに吊られて苦しんでいるのを見て、母を救うために仏教の戒律に基づいて僧侶たちに食事や供物を捧げ、その功徳によって母を救い出すことができたと言われます。
この供養の行為が「盂蘭盆会」として仏教儀式のひとつとなり、中国を経て日本にも伝わって日本独自の風習「お盆」として発展しました。
「盆」という言葉自体は、元々は「食器や供物を載せる器」を指す言葉でしたが、いつしか「盂蘭盆」の一部が省略され、「盆」という短い形で定着します。

現代でもお盆は日本における最も重要な伝統行事のひとつであり、いまも旧盆を採用する沖縄を除けば日本全国毎年8月中頃に行われる風習で、祖先の霊が家族のもとに帰ってくると信じられているホーリーウィークに他なりません。
家族が集まって先祖の霊を供養するための様々な儀式や行事が行われるこの風習は、単なる宗教的儀式を超え、日本人の精神文化や社会的結束の象徴としての役割を果たしてきました。
渋谷の駅前をはじめ、全国で開催される「盆踊り」(Bon Dance Ceremony)についても、地獄で苦しむ亡者の霊を救うために供養を行う仏教儀式で、これが日本各地でローカライズして有名な阿波踊りや祇園踊りになったと海外の友人たちに説明しています。
また、同じアジア圏の韓国の友人には「チュソク」(秋夕=中秋節)といえば伝わりますが、さらに輪廻転生をわかりやすく伝えるために用いるのが、映画「スターウォーズ」です。

1970年代に脱ハリウッド映画として大ヒットし、輪廻転生やカルマ、悟りの概念を映画に取り入れたスターウォーズの世界観では、すべての生命がフォースの一部であり、死後もフォースの一部として存在し続けることが強調されています。

アナキン・スカイウォーカーは、フォースの「選ばれし者」として銀河の運命に大きな影響を与えますが、光と闇の間で葛藤し、最終的には闇に落ちてダース・ベイダーとなります。
しかし、息子ルーク・スカイウォーカーとの対峙を通じて再び光に戻り、最終的に銀河に平和をもたらします。
アナキンの旅は、彼が過ちを犯し、闇に堕ちるという「死」の象徴的な行為を経て、最終的に善に戻ることで「再生」するという、まさに輪廻転生を表しているのです。

ジェダイたちはフォースを使い、過去の師や先祖と霊的に交信し、その教えを受け継ぎます。オビ=ワン・ケノービやヨーダなどのジェダイマスターは、死後もフォースの一部として存在し、ルーク・スカイウォーカーを導き続けました。
彼らの霊体としての存在は、スターウォーズの物語を通じて、過去と現在、そして未来が繋がっていることを象徴しています。

スターウォーズの世界では、死は終わりではなく、新たな始まりであり、フォースとの一体化や新たな形での再生を通じて続いていきますが、お盆もまた、死者と生者が再び出会い、絆を深める時間を提供している時なのではないか、と考える今週です。

フォースと共にあらんことを。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.687 8月16日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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