先日、こんな記事を書きました。メルマガでも巻頭言に突っ込みまして、割とご反響いただいてホルホルしています。ご精読いただきありがとうございます。
ワイちゃんが指摘したかったのは、いま日本政治に求められているのは「外国人問題」や「消費税減税」といった表層的な争点ではなく、国民が「これならいまより明日がよくなる」と実感できる具体的な未来図を提示することです。では、どのような未来図を国民に見せるべきなのでしょうか。生産性向上、賃上げ、外国人政策、少子化対策―――まあ、いろいろ論点はあり、これらはすべて重要な要素ですが、バラバラに論じるのではなく、一体的な国家戦略として構築する必要があります。というか、これらの退嬰的な状況というのは概ね一枚絵で表されるものであって、個々の問題はもちろん大事なんだけどそれらはいずれも症状にすぎないからなのです。
んで、ワイの見るところまず優先して根本的に取り組むべきは、自治体再々編を核とした地方政策の抜本的見直しです。人口減少が避けられない現実を直視し、住める地域と住めない地域をきちんと区分けし、メリハリをつけた地方政策を展開することが不可欠です。と言いますか、人のいないところにカネを落として「頑張れー」といったところで、もう人がいねえよってなれば経済振興など成立しません。我が国は一村一品運動に始まり地域おこしという美名のもとに膨大な国富が助からない地方への経済支援として非合理に注ぎ込まれ続けて、それが票田と一体化して一大政治勢力化してきた、という問題があります。最近では、地方に出入りしているコンサルがふるさと納税制度にぶら下がって価値のない施策にさせたうえに甘い汁を吸うみたいな告発の親書も出て素晴らしい内容でした。地域経済への支援にメリハリをつけるという作業そのものは、これは単なる地方切り捨てではなく、限られた資源を効率的に配分し、持続可能な地域社会を構築するための戦略的選択です。
この自治体再々編と連動して、二次救急も含めた医療提供体制の根本的な再編成を進める必要があります。地域の実情に応じた医療拠点を整備し、薬品がちゃんと届く薬価・流通行政を確立することで、国民の生命と健康を守る基盤を強化できます。そして、この地方政策の中核に国立大学を位置付け、地方創生予算を医療提供体制、自治体再々編、薬品流通、そして理化学系の助成金増額に集中投下することで、論文数を確保し研究開発に資する仕組みを構築していくべきです。国立大学の有効活用こそ、その地域に人が住めるというだけでなく、子育てをして地元で暮らす地域システムの根幹に位置するものになりえるのであって、これにより、地方衰退と研究力低下という二つの課題を同時に解決する道筋が見えてきます。
また、地域経済を実質的に支えるようになってきている外国人政策については、排斥論でも無制限受け入れ論でもない、現実的なアプローチが必要です。今回の参院選では外国人に対する漠然とした不安から排斥論がベースになっていますが、日本社会が外国人を文化的摩擦の我慢できるペースで受け入れていくことは、国益国富に適うのは当然のこととして、彼らをして、日本が良い、日本でずっと暮らしたい、だから家庭を構え、帰化して子どもを儲け日本人になろうとする方向へ促すべきじゃないのかと常々思います。
また、一時的なものかどうかは分かりませんが日本には素晴らしい観光資源という価値を持っていることも踏まえて、インバウンドも含めた外国人受け入れに伴うインフラ整備を進めるため、外国人の入国税・出国税を現行の3倍弱にあたる1万2,000円程度に引き上げることを提案します。現在のインバウンド人数は3,600万人ほどですから、1万2,000円の入国税を徴収できれば年間4,400億円程度の財源を確保できます。また、一般的な日本への旅行コストそのものは一人あたり40万円内外ですから、入国税・出国税を1万円強程度に引き上げたところで日本への旅行を取りやめるほどのインパクトはないと思います。この財源をインフラ投資や周辺産業支援に回すことで、外国人受け入れに伴う社会的コストを受益者負担の原則で賄い、同時に日本の受け入れ体制を強化することが可能になります。
賃上げについても、「生産性向上」という漠然とした掛け声ではなく、経済規模そのものを拡大する重点的な産業投資を行う必要があります。具体的には、知的財産、理化学・研究開発分野と、原子力や電波、情報処理も含めたインフラストラクチャーに従事する、AIに置き換えようのない高度人材の育成にカネをかけることです。これらの分野では、人材への投資が直接的に付加価値の向上と賃金上昇につながります。従前は、広い意味でのリスキリングを促す教育投資が中心で、これもふるさと納税同様に悪質な業者の排除がむつかしい税金つかみ取りになってしまっていましたが、もっとストレートに学術研究や実務・応用実戦のところへ教育産業を繋ぎ込むことが大事ではないかと考えています。必要とされることは、単純な労働集約型産業ではなく、知識集約型産業への構造転換を通じて、持続可能な賃上げ基盤を構築することが重要です。
そして、これらの政策を支える基盤として、「ルールを守る」国家公務員の数を大幅に増やす必要があります。警察庁警視庁、海上保安庁、国税庁、労働基準監督署、公正取引委員会、個人情報保護委員会など、国民生活の基盤を守る社会的インフラに従事する人員を増やすことで、公正で適正な国民生活を実現させる方向へ向かうべきです。違法な操業をしている漁船は国内外を問わずどんどん拿捕すべきですし、ブラック企業はやり得を許さずどしどし摘発すべきです。いま、どっちかというと役人の数や司法の従事人数が足りなくて、際どいことを「やり得」になるような社会になっているのが問題であって、塀の上を歩くリスクを取ることが人生の成功の黄金律になるような社会にしてはならないと思うんですよ。法の支配を徹底することで、真面目に取り組む企業や個人が報われる社会を作ることができます。
さらに、課徴金や罰則を国内・海外企業に十分に課すことのできる、強い公正取引委員会、強い消費者行政を実現することが必要です。暗号資産や犯罪収益を回収できる仕組みを整備し、サイバー攻撃やサイバー犯罪にも柔軟に対応できる刑法や犯罪収益移転防止法の改正なども進めていくべきです。犯罪収益と見込まれるものは、どんどん口座を凍結して没収して良いと思うんですよね。グローバル化が進む中で、国境を越えた経済犯罪への対応能力を高めることは、健全な経済活動を守るために不可欠です。
行政効率化の面では、行政DXを生成AIを中心に大胆に進める必要があります。特に司法や各省庁での情報化投資をより強力に行い、多くの行政庶務・業務を生成AIによる業務支援で効果的に行える体制を敷くべきです。というか、行政や司法にいままでおカネや技術が使われてこなさ過ぎて、かなりの非効率が放置されたまま、大変な業務フローで優秀な人材が使い潰されてしまっている現状があるように見えます。業務改善・効率化を一層進める投資を行うことにより、公務員をより高度で創造的な業務に集中させることができ、行政サービスのさらなる質的向上と効率化を同時に実現できます。
そして、これらすべての政策の基盤として、マイナンバーの利活用を不退転の覚悟で推し進める必要があります。国内外の取引においてKYC(顧客確認)の根幹にマイナンバーを一層活用することで、不正な取引や犯罪抑止に使える体制を構築していくべきです。プライバシーへの配慮は当然必要ですが、デジタル社会における本人確認の重要性を考えれば、マイナンバーの積極的活用は避けて通れない課題です。いまや、社会実装においては監視社会にならないように注意しながら、しかし「これは誰がやったことなのか」を第三者的に把握し確認できるネット社会が必要とされていくことでしょう。
これらの政策パッケージは、一見すると大胆に見えるかもしれませんが、いずれも現在の日本が直面している構造的課題に対する合理的な解決策です。重要なのは、これらを単発の政策として実施するのではなく、人が暮らす自治体再々編のあり方を深く考えたうえで、強力な情報化投資の推進や地方創生予算のテーマを最適化することで相互に連関する統合的な国家戦略として確立せしめることが肝要です。なによりも、自治体再々編による効率化、外国人政策による財源確保、産業投資による経済拡大、行政能力強化による法の支配徹底、そしてデジタル化による効率化—これらが有機的に結合することで、日本再生への道筋が見えてくるのではないでしょうか。
ワイが指摘したいのは、いまの日本に必要なのは、こうすればよくなるんじゃないかと確信の持てる「国民に夢を持ってもらえるパッケージ」です。しかし、その夢は根拠のない楽観論であってはなりません。厳しい現実を直視しつつ、具体的で実現可能な政策の積み重ねによって、確実に明日を今日よりも良くしていく—そのような責任ある政治こそが、いま求められているのではないかと考えています。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.484 これからの日本が必要とする国家ビジョンを勘案しつつ、無法地帯化するデジタル広告や外国勢力による情報操作、ネット由来の認知バイアスなどを論じる回
2025年7月31日発行号 目次
【0. 序文】「外国人問題」「消費税減税」では変わらない日本が必要とする国家ビジョン
【1. インシデント1】無法地帯と化すデジタル広告と、業界対応および技術動向がカオス(概要版)
【2. インシデント2】にわかに騒ぎになるFIMI対応と着地点の模索
【3. インシデント3】スマホ普及が認知バイアス拡大を進めているように見える件
【4. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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