※高城未来研究所【Future Report】Vol.359(2018年5月4日発行)より
今週も、東京にいます。
日本が「ゴールデンウィーク」と呼ばれるこの時期は、毎年東京に滞在することが多く、日々の喧騒も嘘のように落ち着き、都心でゆっくり過ごすのに、とてもいい時期です。
この「ゴールデンウィーク」という呼び名は、もともと映画業界の宣伝用語で、まだ娯楽の選択がほとんどなかった昭和20年代に、新作映画の興行収入が正月や夏休みを五月の連休が上回ったことから、「黄金週間」と呼ばれるようになったことからはじまりました。
この映画業界の言葉は、いまでもテレビ業界では好まれません。
なかでもNHKは「ゴールデンウイーク」という言葉が映画業界の宣伝用語だったことから、放送法第83条(広告放送禁止規定)に抵触するという表面的な理由や、年配者に分かりづらいという理由などで、「(春の)大型連休」という表現で統一していますが、実際は、ただの古い慣習にすぎません。
もし、「ゴールデンウイーク」という言葉が、本当に業界の宣伝用語であるために放送禁止ワードなら、本来様々な色だったのに、赤い服になったサンタクロースの衣装は、コカコーラのキャンペーンによって定着しましたので、たとえイラストでも赤い服を着たサンタクロースをNHKが放送するのは厳禁なはずです。
しかし、実際には赤い服を着たサンタクロースが、毎年NHKに登場しています。
つまり、NHKが「ゴールデンウイーク」という言葉をいまも使わない本質的な理由は、「前例がないことは、絶対に行ってはならない」日本式システムのルールにあるのです。
一般的に多くの国では「昨日と同じことを絶対にしない」ことを目指し、それを「成長」と呼びますが、一方、「昨日と同じことをする」のが、日本的美徳と組織で生き残る秘訣として「空気のように」理解されています。
この根本的な考え方の違いが、日本の失われた日々を延長し、不透明な社会を作り上げているのは間違いなく、そこでは、あらゆるイレギュラーは、「なかったこと」にされ、隠蔽されてしまいます。
さて、NHKが放送で「ゴールデンウイーク」という言葉を使い始めるのが先か、現行のマスメディアが成り立たなくなるのが先かわかりませんが、メディアには寿命のようなものがあります。
前述した映画業界が「ゴールデンウイーク」と呼んでいたのは遥か昔。
日本映画のピークは1950年代後半で、その後、映画を駆逐したテレビのピークが1980年代後半。
そしてインターネットが2000年代後半にピークを迎え、現在、僕らは2010年代後半、スマートフォンのピークを目撃しています。
その上、伝達がマス(1-n)からパーソナル(p-p、p-n、n-n)に、主軸が変わりつつあります。
政府さえ「フェイクリポート」を乱造しているのが発覚した昨今ですが、だからと言って、SNSを中心としたインターネット上に蔓延る言説も信頼に値するとは限りません。
つまり、今後なにを信用して良いのか、わからない人たちが急増し、大混乱が起きると考えられます。
このようなメディアをとりまく状況は、ソ連末期の東欧と大変似ており、大きな社会の転換点につながるのは歴史の教えです。
国は戦争、飢餓では滅びない。 滅びるのは頽廃である、と歴史家は言います。
そして、僕がもうひとつ付け加えるのなら、かつての大本営発表に代表されるように、20世紀以降の国家はメディアで滅びると考えます。
新刊「分断した未来」にも記載したように、大きな社会はメディアの変貌から、必ずはじまるのです。
ネオンだけが煌めく「ゴールデンウイーク」のガラガラの夜の東京は、どこか未来を感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.359 2018年5月4日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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