高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

カナダでは尊敬の意をこめて先住民族をファーストネイションズと呼びます

高城未来研究所【Future Report】Vol.324(2017年9月1日発行)より


今週は、バンクーバー島にいます。

カナダ西部最大の街バンクーバーから、フェリーに車を積んで一時間半。
アメリカ大陸太平洋側最大の島、バンクーバー島があります。

島の大きさは台湾や四国と同じほど大きく、周囲にはガルフ諸島など多数の島々が点在する島峡です。
この島ならではの特徴は、いまでも先住民族(ネイティブカナディアン)が多く居住し、その文化が色濃く残る点です。

また、島内の町々のブランディングが明確で、別名ガーデンシティと呼ばれるヴィクトリアは、古い英国風港町に花が溢れ、先住民族の文化が色濃く残るダンカンは町中トーテンポール、カナダの町おこし大賞を受賞した小さな町シュメイナスは壁画と、観光客を楽しませる要素が多種多様にあります。

なかでも、大自然は素晴らしく、カウチンレイクで泳ぎ、音楽フェスを楽しむのは、夏のカナダ西海岸最高の娯楽と言われるほどです。

このカウチンレイクとは、先住民族の名前を冠した湖で、日本では、90年代日本のアメカジブームで流行った「カウチンベスト」で脚光を浴びたカウチン族のテリトリーとして知られています。
アラスカ周辺からシアトルまでの北西海岸一帯に住むノースウエストコースト・インディアンを、カナダでは尊敬の意をこめて「ファーストネイションズ」と呼びます。

今から約1万5600年前に、(おそらく大きな惑星衝突によって)地球が崩壊するような大地殻変動があり、人々は安住の地を求め、民族が大移動を起こしました。
1万5000年前の地球では、ベーリング海峡は陸続きであり、標高100mほどのベーリング大平原が広がっていました。
その陸続きの海峡を渡り、ユーラシアで暮らしていた日本人と同じモンゴロイドの人々は、次々とアラスカの大地に移り住みました。
アラスカから先はカヌーに乗り、現在の北米大陸西海岸一帯に広がって定住生活を送るようになりました。
当時の移動手段はほとんどがカヌーで、何千キロも離れた土地と交易を行えるほどの高度な航海技術を、「ファーストネイションズ」は、持っていました。
彼らは、まるでGPSのように星を読み、方位を定めることができたのです。

本年カナダは、建国150周年にあたります。
これを機に発行された新紙幣には、少数民族イヌイットやメティとならび、ファーストネイションズの文化が描かれるようになりました。

一方、本土の街バンクーバーを歩けば、インド人ばかりで驚きます。
中国人が多いのはもとより、増え続ける移民と多様性は、いまやバンクーバーの象徴です。
驚くほどに少数派になった白人は、二十年もしないうちに、「セカンドネイションズ」と言われてしまう存在になるようになるかもしれません。

カナダ西部は、もはやネイティブカナディアンでも白人のテリトリーでもないと感じるバンクーバー一帯です。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.324 2017年9月1日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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