高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

歴史が教えてくれる気候変動とパンデミックの関係

高城未来研究所【Future Report】Vol.479(2020年8月21日発行)より

今週も、東京にいます。

東京は、沖縄以上の暑さで、もう夏は地球温暖化という言葉では済まされない「地球灼熱化」のような危険ゾーンに入ったように感じています。
今週、米国のデスバレーでは気温が54.4度に達し、世界気象機関によれば、史上最高気温を更新したと報告されました。

しかし、地球上のすべての地域が灼熱化しているわけではありません。
いままで暑かった場所がさらに酷暑になることもあれば、温暖だった地域の気候がガラっと変わって冷夏になることもあり、まさに気候変動真っ只中。
大きな変化のなかで暮らしているのを、実感せざるを得ません。
現在、夏は50度近くになるインドのニューデリーの平均気温より、日本の浜松、東京、名古屋、福岡のほうが、高い平均気温をマークしています。

日本の夏の風物詩であるセミの泣き声も35度を超えるとピタッと止み、どうやらセミが暑さに耐えきれず、寿命を迎える前に死んでしまうようで、つまり、生態系にも異変が起きていることを教えています。

また、日本をはじめとする東アジアでは、初夏に長雨や豪雨が続き、水害が年々酷くなっています。
寒暖の差も激しく、東京では11月下旬や4月中旬に雪が降ったかと思えば、2日後に夏のような暑さがやってきます。
今年、5月中旬までニューヨークに雪が降り、夏は世界中で過去最高気温が更新されている一方、昨冬には過去最低気温の記録も更新されている地域もあります。

この気候変動は、いまだにCO2排出の問題だと言われますが、自著でお話ししましたように、現在、太陽軌道が大きく動いている最中ゆえ、地球全体の気候が変動し、小氷期に向かっていると何度かお伝えしました。
過去の小氷期を調査すると、小氷期の前には多雨期に入り、しかも気候変動が激しくなって、いまと似たような状況が、1300年代にも起きていることが判明しています。

当時も長く続いた温暖化の恩恵で、消費行動が活発化し、景気がよくなったため人口が急激に増え、それまでのインフラが持たないような状況から小氷期に突入。
その中でパンデミックが起き、パニックになりました。

それが、ペストです。

ジョンズ・ホプキンス大学の歴史学者マリー・フィセルによりますと、歴史学的にはペストの大流行は、3回起きています。
6世紀の「ユスティニアヌスのペスト」、14世紀の「中世の大流行」、そして19世紀末から20世紀はじめにかけて起きたパンデミックの3回で、このうち14世紀に起きた「中世の大流行」は、中国からはじまったこともわかっています。

当時、戦争とペストで中国の全人口の半分が死亡。
ペストは中国から貿易ルートを伝って、ヨーロッパ、北アメリカ、中東に広がり、1347年から1351年までの間に、少なくともヨーロッパの人口の3分の1がペストで亡くなって、イタリアのシエナでは人口の半数が死亡しました。

ペストを封印するため、現在のロックダウンのような緩やかなものではなく、世界各地で町ごと焼き払われましたが、効果はどの程度のものだったか、いまとなっては調べる術はありません。

また、悪天候と猛暑、そして小氷期が訪れたことによって食物が減り、人々の栄養状態が悪くなって、免疫力が著しく低下。これがパンデミックに拍車をかけました。
そしてこのパンデミックにより、「中世」が終わりを迎えたのです。

いま、温暖化を人為的な問題だと唱える人々は、46億年にのぼる地球史のうち、気温が少し上がった過去150年(小氷期の末から現在まで)だけに目を止め、地球は破滅に向かうと脅かしますが、史実を見れば、破滅に向かうのは、太陽の軌道変更による自然の変化から拡散した病原菌、および伴うそれまでの社会システムの強制的とも言えるリセットにあります。

そう考えると、これから十年前後の間に、太陽軌道の変化の影響で社会システムが大きく変わる可能性が高まると考えられます。

なにより、急速な気候の変化は、人々の精神を不安定にするものです。
免疫力だけでなく、あらゆる気候や社会変化に対応できる平常心を持つことが、今後さらに求められるのではないか、人によってはそれをビジネスの好機と考えるのではないか、と灼熱の東京(のできるだけ地下道)を歩きながら、想いにふける今週です。

東京の夏は、地下生活に限りますね!

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.479 2020年8月21日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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