高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ポストコロナという次の大きな曲がり角

高城未来研究所【Future Report】Vol.553(2022年1月21日発行)より

今週も東京にいます。

まん延防止等重点措置が東京都に適用されました。
これの是非については多くのご意見があるのでしょうが、今週はそろそろポスト・パンデミックの世界につきまして、僕なりの見解をお話したいと思います。

多くの識者が様々な意見を述べていますが、僕は基本的に向かっている方向は変わらず、ただ様々な事態が加速し、どこかで飽和すると考えています。

まず、コロナ禍は社会を大きく変えたのではなく、それまであった問題を浮上させたに過ぎません。
滞っていたデジタル社会への移行から、日本の生産性が落ちていることは誰の目にも顕著になり、必要とされる医薬品も作れなくなっていることもわかりました。
中途半端なグローバリズムでも中央集権的国民国家システムも共に機能不全に陥り、米国に倣った金融緩和によってさらなる二極化が顕著になって、現在、思想や人種によって「リキッド化」に世界は向かっています。
リキッド化とは、いまから15年ほど前に僕が提唱した「ポスト・フラット化」、つまりポスト・グローバリズムの概念で、世界はひとつに向かうのではなく、床に水をこぼした際にいくつかの「島」のような塊に分かれ、ひとつひとつは非常に柔らかく壊れやすいイメージです。
このような現象を、フランスの政治学者ジェローム・フルケは「群島」と読んでいます。

ジェローム・フルケは、2019年に出版した著書「フランス群島」のなかで、この数十年でフランスの社会システムは変貌し、フランスがさまざまな「島」から成る社会になりつつあり、それぞれの「島」で所得も思想も文化も人種も違い、各グループが相互につながりをもたないまま暮らし、バラバラの島国みたいになったと述べています。

7000以上の島からなる島国フィリピンは、島ごとに言語や宗教が異なり、首都マニラのタガログ語は、セブでは通じません。このふたつの島人がお互い話すのに使うのが英語であり、英語が話せなければ、他の島に移住しても大した仕事に就くことはできません。

群馬の大泉町や名古屋の九番団地など、日本とは思えないブラジル人コミュニティに限らず、平均年収1200万円の港区民と320万円の足立区民は、もはや同じコミュニティに属することはできないばかりか、共通の話題がなかなか見いだせなくなってしまっています。
このようなことから、共通話題となりうるサッカーなどの国際試合は必要以上に盛り上がりを見せ、今後、唯一の共通話題が「仮想敵」になることも想像に難くありません。
また今後、急速に中間層の多様的没落も顕著になるでしょう。

いまの40歳代以下は、はじめて親の世代の豊かさを超えられない世代となり、現状のシステムに辟易している人たちが大半です。
もし可能ならば、どうにかしてシステムから抜け出したいと願いながらも、どこかで他力本願、もしくは日々の情報摂取の満腹感(と疲労感)を脱せません。

スタンフォード大学で古代史を教えているオーストリアの歴史家ウォルター・シャイデルによれば、人類の平等化装置として機能するのは、大量動員戦争、変革的革命、国家の破綻、致死的伝染病の大流行の4つしかないと話します。
これらが短期間に起きる、もしくは重なれば、結果として人類の平等化装置として機能すると史実とデータに基づく検証から述べています。

つまり、シャイデルは平和の時に格差が拡大し、平和である限り二極化による身分制度が固定化される一方、戦争、革命、崩壊、疫病のみ、平等が実現したという事実を膨大な資料から導き出しているのです。

では、新型コロナウィルス感染拡大以後の世界で、人々は「元のような」平和を求め、さらなる二極化や群島のなかで固定される身分に甘んじるのでしょうか?
それとも、大量動員戦争や変革的革命、国家の破綻、さらなる致死的伝染病の大流行を望むのでしょうか?

この「大いなる決断」こそが、人類に問われるポストコロナの世界なのです。

今日から多くの地域でまん延防止等重点措置が適用されます。
そろそろ次の大きな曲がり角にさしかかっていると、またガラガラになった夜の銀座を歩きながら考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.553 2022年1月21日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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