甲野善紀
@shouseikan

DVD『甲野善紀 技と術理2015 重心側から動く』

「常識」の呪縛から解き放たれるために

dvd_1

2013年、2014年に続いて、DVD『技と術理』の2015年度版が完成した。サブタイトルとして使われた「重心側から動く」という言葉は、ちょっと聞いただけでは何を言いたいのかうまく理解できないのではないかと思う。

整体協会の創設者である野口晴哉先生が「重心側だから動きやすいだろう」という言葉を残されているのだが、数年前にはじめてその言葉を聞いた時は、私も言葉の真意が掴めず、今の自分の技にこれほど大きな影響を持つとは想像できなかった。

常識的に考えれば、重心側から動くのは難しい。まず、重心のかかっていない側の身体が動き、そこが重心側となり、その結果、重心側だったところが解放されて動けるかたちになる。多くのスポーツや武道に取り組んでいる人も、そこに疑いを持っていないはずである。

しかし、「重心側から動く」ことは、決して「不可能」な動きではない。身体の動かし方を工夫することで実現させることが可能な動きである(最近ではむしろ、「重心側から動く」ことが、私の動きの基礎となっている)。さらに言えば、「非常識な動き」こそ、もっとも相手(とくに常識にとらわれている相手)が対応しにくい動きなのである。

もし、この話を読んで、「それは実際にどのような動きなのか」「そのような常識を外れた動きがどうしてできるのか」と関心を持った方は、このDVDを観ていただき、それでも理解できなかったら私の講習会等にご参加いただきたい。

人間のモチベーションというものは、「本当にそんなことができるのか」といった興味から生まれるものだと思う。私としては、私自身の動きが、これを見た人や体験した人の探究心や想像力を刺激し、そこから新しい展開を生み出す人が現れれば、幸いである。

また、このDVDの後半には、「私が今何を考え、これからどうしたいのか」について、うまくまとめてもらった談話が15分ほど収録されている。先日、ミシマ社から『今までにない職業をつくる』という本を出したが、仕事にしても遊びにしても、人間が行うさまざまな行為において、頭だけでなく身体や感覚の使い方を学ぶにあたって、武術的な考え方というのは、大いに参考になると思う。よろしければ、手にとっていただきたい。

甲野善紀

 

DVD『甲野善紀 技と術理2015――重心側から動く』2015年6月26日発売決定!

現在、非売品の特典DVD付きのご予約受付中!

詳細・ご予約はこちらから(紹介動画もご覧いただけます!)
http://kono.yakan-hiko.com/

甲野善紀
こうの・よしのり 1949年東京生まれ。武術研究家。武術を通じて「人間にとっての自然」を探求しようと、78年に松聲館道場を起こし、技と術理を研究。99年頃からは武術に限らず、さまざまなスポーツへの応用に成果を得る。介護や楽器演奏、教育などの分野からの関心も高い。著書『剣の精神誌』『古武術からの発想』、共著『身体から革命を起こす』など多数。

その他の記事

国民の多極分断化が急速に進むドイツ(高城剛)
得るものがあれば失うものがある(甲野善紀)
「他人に支配されない人生」のために必要なこと(名越康文)
廃墟を活かしたベツレヘムが教えてくれる地方創生のセンス(高城剛)
人生初めての感動の瞬間(光嶋裕介)
「消防団員がうどん食べてたらクレームが来て謝罪」から見る事なかれ倫理観問題(やまもといちろう)
太古から変わらぬ人間の身体と変わりゆく環境の間を考える(高城剛)
高解像度と景気の関係(高城剛)
日本のウェブメディアよ、もっと「きれい」になれ!(西田宗千佳)
高城剛がSONYのα7をオススメする理由(高城剛)
話題のスマホ「NuAns NEO」の完成度をチェック(西田宗千佳)
住んでいるだけでワクワクする街の見つけ方(石田衣良)
衰退がはじまった「過去のシステム」と「あたらしい加速」のためのギアチェンジ(高城剛)
屋久島が守ろうとしているものを考える(高城剛)
メディアの死、死とメディア(その3/全3回)(内田樹)
甲野善紀のメールマガジン
「風の先、風の跡~ある武術研究者の日々の気づき」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回発行(第3月曜日配信予定)

ページのトップへ