※高城未来研究所【Future Report】Vol.607(2月3日)より
今週は、シドニーにいます。
およそ4年ぶりに訪れると、この街で起きている大きな変化に気がつきます。
コロナ禍で減ったと思われていたアジア人が、以前より増しています。
近年の国勢調査によりますと、シドニー在住の中国系オーストラリア人の人口が15%近くまで高まり、7人にひとりが中国系となる計算で、また彼らの大半が2008年以降の移住者です。
あわせて不動産価格も急上昇。この30年間でオーストラリアの不動産価格は15倍になり(同時期米国は4倍)、中国マネーがシドニーの不動産価格を押し上げているのがよくわかります。
しかし、中国人が好む不動産形態と欧州移民が好む不動産形態が異なることから、物件の価値が二極化。
中国系が求めるコンドミニアムは急増していますが、欧州系は一軒家を求めますので地域によっては不動産価格が暴落。
かつて栄華を誇ったシドニー南西部にあるイタリア移民が多かったノートンストリート周辺は、すでにゴーストタウン化しており、いまや見る影もありません。
また、コロナ禍が去ってもオフィス街に人が戻ってきません。
CBD(Central Business District)と言われるシドニービジネス中心街では空室が目立ちます。
現在、空室率は15%近くまで高まっており、オリンピックパークやシドニー・インナーウェスト、ロウアー・ノースショアでは、空室率が20%を超えました。
この傾向、つまりかつてビジネスの中心地やそこに通っていた欧州系が住む郊外型住周辺から人が去り、彼らはアジア化するシドニーを避け、別荘地やいままで注目を集めなかった「第三の土地」へと移る一方、新興住宅地ではコンドミニアムが立ち並び、そこに続々と中国人が次々と入り込んできてる如実な「グレート・リプレースメント」がシドニーで起きています。
「グレート・リプレースメント」(フランス語: Grand Remplacement)とは、フランスの作家ルノー・カミュが2011年に発表した著書『Le Grand Remplacement』によって広められた社会変革の概念で、フランスの白人人口、およびヨーロッパの白人人口全体が、大量の移民、人口増加、ヨーロッパの出生率の低下を通じて、非ヨーロッパの人々、特にアラブ人、ベルベル人、トルコ人、サハラ砂漠以南のイスラム教徒に、人口的にも文化的にも、徐々に置き換えられてしまう現象です。
しかし、オーストラリアでは移民に限らず、コロナ禍によって既存住民と言われた白人たちも移動しているのが特徴です。
この傾向はオーストラリア全土ではじまっており、パースのビジネス中心街では空室率が22%に達しており、明らかな「21世紀の民族大移動」がはじまっています。
かつて先住民族を追いやった欧州系移民たちが、アジア系に押し出される現在のオーストラリア。
いま、移民大国は、大きくリフォーム中にあると感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.607 2月3日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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