高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

世界遺産登録を望まない、現代の隠れキリシタンたち

※「高城未来研究所【Future Report】Vol.209(2015年6月19日発行)より

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今週は九州の天草にいます。

現在、長崎の大浦天主堂や天草の崎津集落は、キリスト教の伝来と繁栄、激しい
弾圧と250年もの潜伏、そして奇跡の復活という世界に類を見ない布教の歴史を
物語る資産として「ユネスコの世界遺産暫定リスト」に登録されています。

これはまだ暫定リストであり、それ以前に韓国と揉めに揉めている「明治日本の
産業革命遺産」の世界遺産登録が終わらなければ次の決定に移ることはできませ
んので、今月末からドイツで開かれる世界遺産委員会で遺産入りの可否が決定す
るまで「暫定の暫定」という中途半端な状態が続くことになります。
また不思議なことに、いまもここに住む「本物のキリシタン」の方々は、世界遺
産の認定を受けたくないと本気で思っているようです。

16世紀の日本でもっともグルーバル化していた街、当時の長崎では大キリスト教
ブームで、九州には何人もの「キリシタン大名」がいました。
その名を受けて、日本人4人の少年(13歳)がポルトガルの南蛮船に乗り、宣教
師アレッサンドロ・ヴァリニャーノとともにローマへ向かいました。
この宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノは、ローマ名門貴族出身のイエズス
会宣教師かつ国家巡察師で、現在のわかりやすい言葉で言えばスパイにあたると
僕は思っています。

アレッサンドロ・ヴァリニャーノは、織田信長に黒人奴隷を献上し(のちに弥助
と改名される)、日本に活版印刷技術を持ち込み、「キリシタン版」と呼ばれる
メディアの策定に勤めました。

当時の世界覇者はスペインであり、宗教は強力な輸出産業のひとつでした。
現代でもそうですが、兵力を使う武力侵攻や経済の礎となる貿易より、人が単体
で世界の果てまで売り込めに行ける思想および文化輸出(当時は主に宗教、現在
は民主化)は、もっとも効率良く相手国を取り込む手段であり、日本はイエズス
会の東アジア管区の一国で、その窓口が長崎でした。

その長崎を中心に、当時のメイン交通網だった海路を伝ってキリスト教は周辺に
伝搬し、九州北西部の沿岸にキリスト教信者が続々と誕生していきます。
その勢いに恐れをなした徳川幕府は、弾圧を繰り返し、日本の歴史上最大規模の
一揆「島原の乱」にまで発展するのです。
その後、まるで秘密結社のようにキリスト教は信仰され、驚くべきことにそれは
いまも続いています。

ですので、ここ天草のとある地域の人口の3分の1はいまもキリスト教信者であ
り、彼らは物見雄山が多数訪れることを懸念して、世界遺産登録を問題だと考え
ているのです。

訪れるとよくわかりますが、もうじき世界遺産になろうかとしている場所には、
まったく「おもてなし」がないどころか、いまも人を近づけないようにする気配
が漂います。

崎津集落の畳じきの教会は珍しく(僕の知る限り、他は津和野)、現在も日曜日
にはミサが行われ、一般客は入ることができません。
その上、平日であれば内部に入ることはできますが、写真撮影は一切禁止で、い
まも完全な信仰の対象となっており、観光名所ではありません。
公共交通網もまったく整っておらず、まるで外界から閉ざされたような雰囲気が
いまもあります。

役所の予算名目になってしまった「地方創生」を望まずに、長い文化をいまも守
り続ける人たち。
現代の隠れキリシタンとまでは言いませんが、ここには人知れず、そのような
人々がいまも多くいるのです。

 

┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】
Vol.209
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ 2015年6月19日発行 /

■目次
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4. マクロビオティックのはじめかた
… 5. 身体と意識
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 著書のお知らせ

 

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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