織田成果主義が崩壊したワケ
ただ、彼のしがらみの無さは、家中に静かな動揺をもたらした。そして彼自身、想像もしなかったような形でそれは顕在化してしまう。そう、本能寺の変だ。
「このままいけば織田家の天下統一は間違いない。でも、仕事が無くなったら、戦自慢の俺たちはどうなるの?」という疑問は、光秀でなくとも抱いただろう。
「いやあおまえたち、これまでよく頑張ってくれたね。長年の年功に応じて所領を分配するから、これからはゆっくり茶でも飲んで暮らしなさい」なんてことを信長が絶対に言わないであろうことは、家臣ならみんなよく分かっていたはず。
こうして、中途採用エリートの出世頭である明智光秀の謀反につながるわけだ。
そして、もう一つ、彼の成果主義には負の影響があった。彼の死後、織田家は他に例をみないほどのスピードで崩壊する。一応、(あまり出来のよろしくない)子供をそれぞれ担いで派閥争いという形を取ってはいたが、その後の家臣の争いは完全な覇権争いだ。事実、その争いを制した羽柴秀吉は、名実ともに天下人としての道を歩むことになり、かつて担いだ信長の嫡孫は田舎にポイ捨てされてしまった。
織田家は、年功序列という価値観が全否定された稀有な組織だ。だから信長という最強のストッパーが外れた後、誰も彼の「年功の残り」を担ぐ人がいなかったのだろう。そういう意味では、本能寺で信長が死んだ瞬間に、織田家も滅んだと言えるかもしれない。
余談だが、筆者はユニクロの柳井社長を見るたび、なぜか信長を思い出してしまう。

その他の記事
![]() |
スマホから充電、という新発想〜巨大バッテリー搭載のK10000(高城剛) |
![]() |
なぜ今? 音楽ストリーミングサービスの戦々恐々(小寺信良) |
![]() |
「50歳、食いしん坊、大酒飲み」の僕が40キロ以上の減量ができた理由(本田雅一) |
![]() |
ピダハンとの衝撃の出会い(甲野善紀) |
![]() |
ネットは「才能のない人」でも輝けるツールではありません!(宇野常寛) |
![]() |
幻冬舎、ユーザベース「NewsPicks」に見切られたでござるの巻(やまもといちろう) |
![]() |
北朝鮮危機の背後にある金正恩の怯えとアメリカのメッセージを読み解く(小川和久) |
![]() |
「愛する人にだけは見せたくない」顔を表現するということ(切通理作) |
![]() |
なぜ忘年会の帰り道は寂しい気持ちになるのか――「観音様ご光臨モード」のススメ(名越康文) |
![]() |
「蓮舫代表辞任」後の民進党、野党、ひいては反自民について考える(やまもといちろう) |
![]() |
大麻によって町おこしは可能なのか(高城剛) |
![]() |
持たざるもの、という人生(小寺信良) |
![]() |
ビデオカメラの起動音、いる?(小寺信良) |
![]() |
児島ジーンズ・ストリートを歩いて考えたこと(高城剛) |
![]() |
資源がない国から徐々にリセッションの足音が聞こえてくる(高城剛) |