※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」2015年3月16日 Vol.096より
仕事でも、趣味でも、長年続けていると「最近成長していないなあ」とか「同じところに留まってしまっているなあ」と感じることがあります。そういうとき、多くの人は自分の努力不足を反省します。「もっとがんばらなきゃなあ」というふうに。
でも、私のみるかぎり「がんばろう」という気持ちが不足することによって物事に取り組めなくなっているという人は、それほど多くはありません。たいていは、何か余計なことに時間を取られ、体力を消耗させ、その結果として、「がんばろう」という気持ちを完全燃焼させることができていないだけなのです。
ですから「前に進めていないなあ」と感じたときには、自分の努力不足に目を向けるのではなく、自分の生活習慣の中にある「ロス」「無駄」に目を向けましょう。
たとえば不必要な夜更かし、本質的ではないおしゃべり、消耗する長電話。人の世話もどこかやり過ぎているのは、自分が心のバランスを崩しているからです。そこから勇気を出してカットし始めると、案外自然に、その人の努力は正しい方向に向かい始めます。
では生活習慣の中にあるロスや無駄をどのように見極めれば良いのか。私の場合、生活習慣を「2週間1単位」で捉えるようにしています。1週間では少し短い。2週間ぐらいで捉えれば、自分がやりたいこと、行きたい場所、過ごしたい時間を概ね網羅できるはずです。そして、「それ以外の場所」に行かないように、「それ以外のこと」をルーチンから外していきましょう。
世界(見聞)は広く、生活は狭く、そして楽しく。
お気に入りのお店を見つけたら、2週間に1度は通いましょう。同じお店に定期的に通っていると、そこは実は、この世でもっとも変化に富んだ場所だということに気づきます。さまざまな場所に行くことが変化なのではありません。同じ場所に新鮮さを感じることこそが、変化なのです。
誰しも、生きるということにどこか明確に恐怖を覚えています。だからこそ、生活習慣を整え、身体の芯のところで明るさを手に入れておかないと、私たちは生きていくことすらできないのです。
生活習慣を整えること。これは実は「自分でやる」以外の方法がありません。孤独であることは、なんなら最大の強みなのだと心得ましょう。
名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」
目次
00【イントロダクション】「2週間1単位」で生活を整える
01【コラム】「笑いの心理学」試論
02精神科医の備忘録 Key of Life
・得意分野を封印する
03読むこころカフェ(31)
・「このままでいいのか」という思いこそがチャンス
04カウンセリングルーム
[Q1] 感情のアップダウンを静めたい
[Q2] 4年間があっという間に過ぎてしまいそうです
[Q3] 人に合わせることに気を遣い過ぎて疲れています
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!
その他の記事
持たざるもの、という人生(小寺信良) | |
テクノロジーの成熟がもたらす「あたらしいバランス」(高城剛) | |
古市憲寿さんの「牛丼福祉論」は意外に深いテーマではないか(やまもといちろう) | |
どんなSF映画より現実的な30年後の世界を予測する(高城剛) | |
今週の動画「切込入身」(甲野善紀) | |
回転寿司が暗示する日本版「インダストリー4.0」の行方(高城剛) | |
富める中東の地で都市化と食生活を考える(高城剛) | |
開発者会議で感じた「AWS」という企業の本質(西田宗千佳) | |
「おじさん」であることと社会での関わり方の問題(やまもといちろう) | |
ヒットの秘訣は「時代の変化」を読み解く力(岩崎夏海) | |
大手プラットフォーマーとのつきあいかた(本田雅一) | |
親野智可等さんの「左利き論」が語るべきもの(やまもといちろう) | |
週刊金融日記 第306号【余るホワイトカラーと足りないブルーカラー、株式市場は回復の兆し他】(藤沢数希) | |
ネット上で盛り上がってる「働き方論」はすべてナンセンスです!(宇野常寛) | |
【対談】類人猿分類の産みの親・岡崎和江さんに聞く『ゴリラの冷や汗』ができたわけ(1)(名越康文) |