小寺信良メルマガ『金曜ランチボックス』より

「13歳の息子へ送ったiPhoneの使用契約書」が優れている理由

親になる資格などない!?

年明けすぐに、「13歳の息子へ、新しいiPhoneと使用契約書です。愛を込めて。母より」と題されたブログが人気となった。米国のおかあさんが息子にプレゼントとして送ったiPhoneとともに添えられた使用契約書が素晴らしいと、和訳してくれた方がいたのだ。

・13歳の息子へ、新しいiPhoneと使用契約書です。愛を込めて。母より
http://hana.bi/2013/01/13sai-iphonekeiyaku/

これに対して、「iPhoneの使用契約書の記事を読んで感動する人は親になる資格などない。」というはてなダイヤリーが公開され、にわかにこの契約書のあり方について意見が二分することとなった。

・iPhoneの使用契約書の記事を読んで感動する人は親になる資格などない。
http://anond.hatelabo.jp/20130106095622

ネットの意見を投票で決める「ゼゼヒヒ」を見ても、両者が綺麗に別れる結果となっている。

・Q.00115(396回答)
13歳の子どもに向けたiPhoneを使うための契約書、あなたはどう思う?
http://zzhh.jp/questions/115

僕は支持するに投票したが、中にはあれを支持するのかという非難の声も上がった。今回は、なぜこの契約書が優れている理由を述べていきたい。

 

最初に約束事を決める

僕はMIAUで子どものネットリテラシー教育に取り組んで今年で5年目になるわけだが、その間、全国のPTAや自治体、そしてサービス事業者やキャリアの対応などを見てきた。そして子どもとケータイの問題に対して、ひとつの方向性を見出しつつある。

まず始めに、大前提からお話ししておこう。これまでMIAUでは、はじめて携帯を持つであろう中学生の子どもの保護者に対して、家庭内での指導の参考になるよう、携帯利用の現状の把握と傾向などについて、講演をさせてもらっている。この中で、子どもに携帯を持たせる際には、最初に約束事を決める、ということを奨励している。昨年の講演資料から抜粋するが、例として以下のような「契約書」の形式となっている。

・契約書の項目例

■相手がわからないときは、着信・メールに返信しない。
■いくら本音でも、言わなくていいことまで書かない。
■悪口、嘘を書かない。
■自分や友達の個人情報を書き込まない。写真を載せない。
■携帯を使うのは、夜○○時まで。
■食事中や人と話しているときにメールを打たない。
■携帯料金は1ヶ月○○○○円まで。それ以上はお小遣いから引く。
■携帯にはキーロックをかけ、暗証番号は親に教えておく。
■困ったときは自分で動く前に親に相談。
など

これは同じように子どもの携帯利用の問題について研究しているNPOや自治体、PTA、ネット事業者からも、この方法論は支持されている。子どものいない方は初めて聞く話かもしれないが、利用の開始前にこのような約束事を決めるという行為は、今や日本中で行なわれ始めている取り組みで、珍しい話でもなんでもないのである。

ただMIAUの契約書の内容は、数年間にわたって保護者の方々にアンケート調査を行ない、もっとも注力している項目や気になっていることなどを元に、独自に制作したものだ。

そう知っただけで、問題の契約書の見え方もずいぶん違ってくるのではないだろうか。僕は件のエントリーを見たとき、うちで推奨してるのと似てるなーと思ったものだ。では順に、各項目について検討していこう。

1 2 3 4 5 6 7 8

その他の記事

すべてをデジタル、すべてをオンライン。成功と失敗と挑戦(本田雅一)
仮想通貨はトーチライトか?(やまもといちろう)
米国の変容を実感するポートランドの今(高城剛)
イベントの「行列待ち」に解決方法はあるのか(西田宗千佳)
アフリカ旅行で改めて気付く望遠レンズの価値(高城剛)
『木屋町DARUMA』そして初のピンク映画!榊英雄監督ロングインタビュー(切通理作)
大麻ビジネス最前線のカナダを訪れる(高城剛)
「スポンサードされた空気」のなかでどのように生きて行くべきなのか(高城剛)
日本が地震大国であるという現実(高城剛)
「OP PICTURES+フェス2022」石川欣・髙原秀和 80年代デビューのピンク俊英たちが新しい時代に放つ爆弾!(切通理作)
ドイツは信用できるのか(やまもといちろう)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
成功する人は群れの中で消耗しないーー「ひとりぼっちの時間(ソロタイム)」のススメ(名越康文)
谷村新司さんの追悼と事件関係(やまもといちろう)
「病む田舎」の象徴となるような事件が多いなあという話(やまもといちろう)

ページのトップへ