就活の面接官は何を見ているか
知人の学生が就活をしているというので、「面接で何を聞かれた?」と尋ねたところ、「たわいもないことです」という返事が返ってきた。それで、「たわいもないこととは何?」と聞いたところ、「朝ご飯、何を食べましたか?」と聞かれた、というのだ。
その学生は、「そんなことを聞いて何が分かるのですかね?」と言っていたのだが、それを聞いて、「なるほど、学生は就活の面接官が何を見ているのか、分かってないのだ」というのが分かった。
結論から言うと、面接官は「答え方」を見ているのである。そこで「パン」と答えようが「ご飯」と答えようが、そんなことは問題ではない。問題はただ一つ、「どのような答え方をするか」ということだけだ。それこそが、唯一無二の評価対象なのである。
例えば、しどろもどろな答え方は「あわてんぼうだな」という評価につながるし、なかなか思い出せない人は「忘れっぽい人だな」という評価につながる。また、すらすら答えればいいかというと、そうでもない。あまり早く答えすぎると「せわしないな」という評価につながってしまうし、よどみなく答えすぎても、「心がこもってない」と思われる。
これは、ベンジャミン・フランクリンが自伝の中で述べていたのだが、人間というのは不思議なもので、つたない喋り方の方が、相手が真剣に聞いてくれるし、印象も良くなったりする。
そんなふうに、面接官は学生が「何を答えるか」は全く見ておらず、「どう答えるか」のみに集中している。だから、質問はなんでもいいのである。しかし、当の学生がそれに気づいていないのが面白いと思った。
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岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。


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