高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

夏の京都で考える日本の「失われた150年」

高城未来研究所【Future Report】Vol.317(2017年7月14日発行)より


今週は、京都にいます。

夏の京都の蒸し暑さは年々過酷になると感じますが、同じように観光客数も右肩上がりで、街の熱気も急上昇。
昨年の夏の時点で、3年連続で過去最高の観光客数を更新しています。

しかし、そんな京都も観光どころか、地域として破綻に直面した過去がありました。

時は、江戸末期。
慶応3年旧暦の10月14日。
京都を震撼させる歴史的な大事件が起きます。
それが、大政奉還です。

江戸幕府第15代将軍徳川慶喜が政権返上を明治天皇に奏上し、翌日に天皇が奏上を勅許したこの政治的事件は、江戸幕府の終焉を象徴するとともに、京都御所の終焉を意味する歴史的事件でもありました。
これにより、当時人口30万人を擁した京都の10万人が、天皇陛下の東京行幸と共に、京都を離れ東京へと移り住んでしまうことになります。
その代表的な東への移住者が「とらや」で、当時京都から東京へと移っていった「とらや」は、いまでも京都で裏切り者の烙印を押されている理由がここにあるのです。

明治維新を境に、人口の三分の一を失った京都。
当然、経済や社会システムはボロボロになり、破綻に直面します。

そこで、京都がとった行動は、スピーディな旧システムからの脱却でした。
本来、皇居を中心とした社会システムの上にすべてが成り立っていた京都は、急速に近代化へと舵を切ることになりました。
その切り札であり、あたらしい社会の中心であり、なにより京都復興の大きな賭けが「電気」でした。
琵琶湖の水を使った水力発電により、紡績工場が発展し、暗かった街に明かりが灯りました。
そして、日本最初の一般営業用電気鉄道が開通し、最先端のインフラ都市へとすばやく変貌することに成功したのです。

しかも、その資金は、国内で調達することが困難で、外資の助けを得て可能となりました。
京都を助けているのは、いまも昔も「外の力」であり、なにより「あたらしいものに果敢に挑戦する力」だったことは、あまり理解されていません。

現在では、古いものを守り続ける古都のイメージが強い京都ですが、このように、江戸時代の終焉とともに破綻に直面しながらもピンチを切り抜けてきました。
さて、現在の京都は、他に類を見ないチャレンジングな地域と言えるでしょうか。
それとも、京都が守っているのは歴史的遺産ではなく、明治以降に革新的に変えた社会フレームを、実はいまも温存しているだけの地域なのでしょうか?

もし、京都が日本の象徴的な都市だとしたら、東京をはじめとする日本全土の主だった都市は、明治以降の社会フレームを、実はいまも維持しているだけなのかもしれません。

2018年は、明治元年(1868年)から起算して満150年。
もしかしたら、日本人は「失われた150年」を、いまも彷徨っているのではないかと感じる京都の夏です。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.317 2017年7月14日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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