日本交通・川鍋一朗が描く「交通」の未来

過疎化する地方でタクシーが果たす使命

社会インフラとしてのタクシー業界

宇野 川鍋さんは、いろいろな場所で「タクシー業界を守る」という発言をされていますね。そこでのお話を僕の業界に喩えるなら、Amazonがやってくる前に日本の本屋業界で経営統合して、Amazonを作ってしまおうという発想だと思うんです。

しかし、タクシー業界が持っている労働・雇用を含む意味での社会インフラ機能はどうなるのか。実際、「なんの経験もなしに、この年収になれる職業はそうはない」という話をされていますよね。いわば社会のセーフティネットとしてのタクシー業界というものを含めて、ビジョンがあるのではないでしょうか。

川鍋 タクシー運転手って、やはり他に行くところがなかった人が過半数なんですね。それは諸外国も一緒なんですよ。だから、タクシー業界で彼らを頑張らせ続けなければ、ハローワークに行くことになるんです。そうすると、政府の税金で多大なる職業訓練費や生活保護費を掛けながら、労働市場にカムバックさせなければいけません。でも、生活保護費だけでも一人あたり月14~15万円、さらにパソコン教えたりすれば20数万円かかるわけですよ。タクシーがあれば、そのマイナス20数万円がプラス20数万円に転じるわけです。

実はタクシー運転手の数は日本全国で40万人いるんです。しかも、ほとんどが50代の運転手ですから、家族の存在も考えるとざっと100万人の人間――つまり日本人の100人に1人はタクシーで生活しているわけです。これが外からの勢力の登場で、一気に崩壊するのは避けなければいけないです。そのためには、先に攻めることで、スムーズに新しい世界に移行させていかなければいけないと思っています。ただ、このバランス感覚が……

宇野 でも、それはタクシー業界に限らず、いまの日本の様々なジャンルで上手く行かずにいることですね。僕のいるマスメディアの世界がまさにそうですよ。

川鍋 でも、だからこそやる価値があるんです。そうでないと、いがみ合いでぶつかりあって、不毛な戦いになってしまう。

いまタクシー業界全体の生き残り策として私が考えているのは、まさに業界としてある程度まとまってやっていくことです。例えば、2年前から都内で妊婦さん向けに陣痛時のタクシーサービスを始めて、現在では都の2割の妊婦さんが登録してくれています。ただ、ウチだけでは必ずしもすべての妊婦さんに対応できるとは限らない。最近は他社がやってくれるようになって、だいぶ妊婦さんがタクシーを使いやすくなっていますが。

私としては、やはりこういう施策を産業として一斉に始められて、意見の集約ができることが重要だと思います。現在、日本にタクシー会社が6000社あるのですが、もう少し会社の数を統合して少なくすれば、事業規模を活かした前向きな経営判断ができるのではないかと思っています。

1 2 3 4 5

その他の記事

21世紀のスマートトラベラーは天候のヘッジまで考えなければいけない(高城剛)
過去に区切りをつけ次のチャンスとピンチに備える(高城剛)
週刊金融日記 第268号 <ビジネスに使えて使えない統計学その2 因果関係を暴き出す他>(藤沢数希)
「狭霧の彼方に」特別編 その2(甲野善紀)
継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること(名越康文)
スマートウォッチとしての完成度が上がったApple Watch(本田雅一)
メルマガの未来~オープンとクローズの狭間で(津田大介)
夫婦ってなんなんだ、結婚ってなんなんだ(切通理作)
ICT系ベンチャー「マフィア」と相克(やまもといちろう)
衰退がはじまった「過去のシステム」と「あたらしい加速」のためのギアチェンジ(高城剛)
“迷惑系”が成立する、ぼくらが知らないYouTubeの世界(本田雅一)
今週の動画「払えない突き」(甲野善紀)
会社を立ち上げました–家入流「由来を語れる」ネーミングについて(家入一真)
川上量生さん、KADOKAWA社長時代に高橋治之さんへの資金注入ファインプレー(やまもといちろう)
「外からの働きかけで国政が歪められる」ということ(やまもといちろう)

ページのトップへ