日本交通・川鍋一朗が描く「交通」の未来

過疎化する地方でタクシーが果たす使命

※この記事は、メールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会 2014.6.5 vol.086
過疎化する地方でタクシーが果たす使命ーー日本交通・川鍋一朗が描く「交通」
の未来」に掲載されたものです。

メールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会」とは?

34評論家の宇野常寛が主宰する、批評誌〈PLANETS〉のメールマガジンです。 2014年2月より、平日毎日配信開始! いま宇野常寛が一番気になっている人へのインタビュー、イベントレポート、ディスクレビューから書評まで、幅広いジャンルの記事をほぼ日刊でお届けします。

【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 ほぼ毎日(夜間飛行では月に1度、オリジナル動画を配信いたします)

詳細・ご購読はこちらから!
http://yakan-hiko.com/hobowaku.html

 

日本交通株式会社・代表取締役社長の川鍋一朗――ビジネス雑誌などを読む人にはよく知られた人物だが、「ほぼ惑」の読者には知らない人が多いかもしれない。

慶応大学経済学部卒業後、マッキンゼーに入社。その後、1900億円の負債を抱えた老舗タクシー会社「日本交通」を創業家の三代目として受け継ぎ、見事に会社再建を果たす。一方で、タクシーを呼べるアプリ「日本交通タクシー配車アプリ」を開発するなど、新たな手法でタクシー業界の次の姿を切り拓いてきた。

PLANETS編集部は今回、川鍋社長に日本交通本社でインタビューを行った。uberなどのタクシー配車アプリが途上国を中心に爆発的に伸びている状況で、「タクシー」という雇用のセーフティネットとしての機能を持つ業界がいかに対応していくべきか。そして、タクシーと切り結んだ、未来の地方社会における「交通」の新たな姿とは。宇野と川鍋氏が、「タクシー文化」の現代における可能性について語り尽くした。

「拾う文化」から「呼ぶ文化」へ

宇野 今日は単刀直入に、川鍋さんに一つお伺いしたいことがあるんです。まず、川鍋さんは、否応なく変わっていかざるを得ないタクシー業界にかなり強く介入されていますね。

川鍋 そうですね(笑)。

宇野 そのとき、川鍋さんはタクシー業界をどこに導こうとしているのか。例えば、あちこちのインタビューで、「これからはタクシー業界そのものが生き残りをかけなければいけない。流しのタクシーを拾う文化から、タクシーを呼ぶ文化に変えなきゃいけない」と仰られていますね。

川鍋 タクシー業界は一昨年100周年を迎えたのですが、まさに102年目にして「選べる時代」にさしかかりつつあるという認識です。まだ売上のボリュームでは都内のお客様の2割程度ですが、そういう能動的な方がどんどん増えています。当社の売上に関して言えば、10年くらい前は積極的にウチを選ぶ人は3割くらいだったのが、既に半分以上です。

こういう施策は、もちろん会社の競争としても必要で、アプリのその一環です。あれはSUICAを導入したり、慶應病院の前で待つタクシーをウチにしてもらったりするのと同じ”シェア拡大策”の一つなんです。

宇野 ただ、その背景には、明らかに世界的な流れがありますよね。現在、日本交通のアプリのようなGPS機能と連動してタクシーを呼べるアプリは、外国でも大きなインパクトをもちはじめていますよね。もちろん、途上国やアメリカと日本のタクシー事情は社会的な条件が大きく違うとは思うのですが。

川鍋 我々はアプリ専業の会社ではないので、あくまでもタクシー事業者としてのアプリ運営でしかありません。ウェブサービスで言えば、「食べログ」というよりは「ぐるなび」に近くて、あくまでも事業者の効率的運営のサポートが目的であり、お客さまにとってのタクシーの価値を上げるためのものなんです。

それに対して、IT事業者の運営する、例えばuberやHailoのようなアプリは目新しいシステムではあるのですが、タクシー事業者にとってはマージンを失うものなんです。それでは産業全体として地盤沈下してしまい、お客様に新たな価値を届けられなくなります。しかも、多くのアプリは既存のタクシーを呼びやすくしているだけなのにマージンが10-15%ですから、我々にとっては払えるレベルではないんですよ。せいぜいクレカの手数料の3-4%が、事業としての限界なんです。

だから、産業という側面からすると、自分たちでやった方がいい。まずタクシー産業発展のために利益をしっかり確保しようという視点で、スマートフォンのアプリを広げています。いまは全国で120社くらいと提携していますね。

宇野 川鍋さんの仕事を見ているとタクシー業界が受動的に待つお客さんではなく、能動的なお客さんを今よりもつかまえるようになっていくんだなと思うんです。

その結果、ニーズが細やかになっていき、対応力も備わっていくでしょう。しかし同時に、必ず差別化が行われていくので、それに対応できる業者だけが残っていくことになる。だから、おそらくはタクシー全体の台数は減るのではないでしょうか。

川鍋 例えば、いま日本交通には5万台のタクシーがあるんですけれど、常時出動している5万人の運転手の生活を支えるコストは、「5万人×年収」の掛け算です。それを現在のタクシーへのニーズで割ったのが、現在の料金ですよ。ということは、台数を半分にすれば、初乗り500円くらいになるわけですね。

でも、そうなると今度は金曜の夜にはどこも乗車中だったりして、アベイラビリティの面での不便が出てくるでしょう。もちろん、「タクシーの料金は高いよね」という議論はしていて、料金を下げる方法は他にもいくつかあるのですが、結局はバランスの問題なんですよ。

1 2 3 4 5

その他の記事

週刊金融日記 第287号<イケメンは貧乏なほうがモテることについての再考察、小池百合子は出馬するのか他>(藤沢数希)
玄米食が無理なら肉食という選択(高城剛)
「時間」や「死」が平等でなくなる時代到来の予感(高城剛)
なぜ、旅人たちは賢者のような眼をしているのか–旅こそが最良のソロタイム(名越康文)
お掃除ロボットが起こした静かな革命(名越康文)
「昔ながらのタクシー」を避けて快適な旅を実現するためのコツ(高城剛)
夜間飛行が卓球DVDを出すまでの一部始終(第3回)(夜間飛行編集部)
Nintendo Switchの「USB PD」をチェックする(西田宗千佳)
人はなぜ初日の出に惹かれるのか–数万年の心の旅路(鏡リュウジ)
声で原稿を書くこと・実践編(西田宗千佳)
「他人に支配されない人生」のために必要なこと(名越康文)
「デトックス元年」第二ステージに突入です!(高城剛)
「疑り深い人」ほど騙されやすい理由(岩崎夏海)
Tカードは個人情報保護法違反に該当するのか?(津田大介)
この冬は「ヒートショック」に注意(小寺信良)

ページのトップへ