名越康文
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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

人はなぜ「モテたい」のか? いかにして集注欲求を昇華させるかが幸福のカギ

※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」Vol.119(2016年03月7日号)より

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(編集室から)

ーーどうして男は「モテたい」と思うんでしょう? 女性は「自分が好きな異性の気をひきたい」という気持ちはあっても、あまり不特定多数の異性から「モテたい」という気持ちは、(少なくとも男性ほどには)強くないように思います。男性の「モテたい」心理はどこから来るのでしょうか?

「モテたい」の奥にある集注欲求

「不特定多数の異性から関心を持たれたい」という意味に限定するなら、確かに「モテたい」気持ちに男女差はあるかもしれませんね。しかし、その「モテたい」という欲求の奥にある、さらに深層の欲求に目を向けるのであれば、僕はあまり「男女差」というものは感じないんです。

「モテたい」の奥にある深層の欲求。それは簡単にいえば「他人の視線を集めたい」という欲求です。もちろん、次々と浮名を流すプレイボーイがこの世にいることは否定しません。ただ、多くの人がいうところの「モテたい」という欲求は、性的なものというよりは、その瞬間ごとの「視線」あるいは「他人からの関心」を求める欲求のひとつの「形」なのだと思うのです。

一般的な心理学用語ではありませんが、この「他人の視線を集めたい」という欲求を、僕は「集注欲求」と呼んでいます。この集注欲求には、基本的に男女の区別はありません。わかりやすくイメージするなら、「泣いている赤ちゃん」を思い浮かべるとよいでしょう。赤ちゃんは、泣くことによって、お母さんの視線と関心を独り占めしようとする。これは、赤ちゃんにとっては文字通り「生きるための手段」です。

これは人間に限ったものではなく、ある程度以上の知性を持つ哺乳類には、必ず備わった、本能に近い欲求といえます。(巣の中で、母親から餌を求めるツバメの赤ちゃんの姿を思い浮かべてみてください。あれは単なる「食欲」ではなく、やはり「母親からの視線」を求めているようにも見えますよね)

では、泣き叫ぶことで満たされていた集注欲求は、大人になってからはどうやって満たされるのでしょうか? 集注欲求をどのように表出し、解消していくかについては、年齢や文化的背景、男女、個人による差が非常に大きく出る場面です。また、同じ一人の人間でも、場面やタイミングによって、集注欲求がむき出しで出てしまうこともあれば、うまくオブラートに包んで出すのに成功することもある。

ともあれ、「モテたい」という感情を理解するのは、それが「集注欲求」の表出の仕方の、ひとつのバリエーションにすぎないということを理解する必要があるのです。

 

「モテたい」欲求をいかに昇華させるか

男性の多くは「モテたい」と思っている。これは半分本当で、半分ウソです。誰でも、「視線を集めたい」という集注欲求を持っている。でもそれは「たくさんの異性から性的に関心を寄せられること」とイコールではありません。

例えば、会社に出勤したときに、男女問わず多くの人からにこやかに、さわやかで挨拶されること。たったそれだけのことでも、集注欲求は満たされることがあります。あなたが関わった商品を、町の人が笑顔で買っている場面を目にして満たされた気持ちになる。これも集注欲求が満たされるという点では、「モテる」ということと同じなのです。

集注欲求が恋愛に結びつけば、確かに「モテたい」という行動として現れる場合もある。でも、「そうじゃない場面のほうがはるかに多い」と捉えたほうが、人間理解としては正確ではないでしょうか。というのも、集注欲求というのはうまく生かせば、人を前に進める、大きな力となりうるものだからです。世の中で大きな仕事をなしとげる人、きらりと光る何かを残す人というのは集注欲求をうまく昇華させることに成功した人だと思います。

「モテたい」「モテたくない」というゼロかイチかという見方をしていると、どうしても「あの人はナンパな人だ(あるいは「堅物だ」)」というような、二項対立的、あるいは平面的な理解からしか、相手を捉えることができません。でも、一見「モテたい」だけに見える人でも、実はさまざまな場面で、さまざまな形で集注欲求を発散させるべく、工夫を重ねていることがあるんです。

自分はどう集注欲求を解消しているのか、あの人はどう、集注欲求をエネルギーに変えているのか。

いまあなたが「モテ」というフィルターで観察している現象を、そういう視点から捉え直してみてください。そうすればきっと、人間というのが単に「異性にモテる」という心理だけで動いているわけではないということが、よりよく理解できるはずですし、異性の言動に振り回されることも、少なくなるんじゃないか、と思います。

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

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Vol.119(2016年03月7日号)より

今週の目次

00【ご案内】名越式性格分類ゼミ認定制度の開始と第1回認定試験のご案内
01カウンセリングルーム Pick Up!
[Q] 自己肯定感を高めるには?
02【コラム】人はなぜ「モテたい」のか
03【近況】テレビとインターネットの未来像を心理学的に考察する
04精神科医の備忘録 Key of Life
・情緒に「普遍性への回廊」はあるか
05塾通信(特別編)欠落こそが人間の可能性(2) ヴィパッサナー瞑想が目指す境
地とは
06講座情報・メディア出演予定

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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