※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」 Vol.102(2015年6月15日)より
人間の論理は、ある段階で必ず「一面的な理解」に行き着かざるを得ません。そして多くの場合、思考はそこで終結し、あとはその一面的な論理による「壁」と現実との間を絶えず循環するだけになってしまうのです。
なぜなら、脳は、不条理なものを思索し続けることが苦手だからです。僕たちの思考は、一面的な論理に絡め取られやすいし、他者からの扇動・操作を受けやすい。
言い換えれば、人は人生のどこかで必ず(本当の意味で)思考することを諦め、一面的な言説、物事を真に受けてしまうようになるということです。しかしそれは突き詰めればエゴであり、事実の実態をとらえているとはとても言えないのです。
それゆえ、理想主義者は純粋過ぎる理想を掲げているにもかかわらず、ほぼいつも、人の嫉妬や怒り、つまりルサンチマンを集める集金人のような役割を担うことになります。そして後になって、その時間が人生の浪費であったことに気づいたとしても、そこからもう一度エンジンを吹かせることは極めて難しい。なぜなら、それまでの現実と「壁」との間の無限の循環によってエネルギーを浪費し、疲労が蓄積されてしまっているからです。
その壁を乗り越え、自立した思考を続けるためには、「謎」を追い続ける構えを持つ必要があります。そこで、求められるのが「疑う」という能力なのですが、残念ながら現代では、多くの人が、「疑う」ということの本質を見失っています。
本当の意味での「疑う」というのは、「よく見る」ということです。でも、多くの人は、疑おうとして、妄想する。
では「よく見る」とはどういうことか。それは、観察しながら、そこに踏みとどまるということであり、これだけが、妄想的ではない「疑う」を支えるのです。
踏みとどまることができた人だけが、次の一歩を踏み出すことができるのです。
そして何かを超えることは、ほとんど何かを捨てるということとイコールである、ということも忘れてはいけません。それらは同時であり、どちらか一方ではいけないのです。
名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」
2015年6月15日 Vol.102
目次
00【イントロダクション】「疑う力」を失った現代人
01【近況】お掃除ロボットが起こした静かな革命
02【コラム】できるだけ若いうちに知っておくといい「本当の」愛の話
03精神科医の備忘録 Key of Life
・「思い」を越えよ
04カウンセリングルーム
[Q1]子育て中の妻にイラついてしまう
[Q2]体癖の偏在について
[Q3]仲間から一目置かれたい
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
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