DVD「甲野善紀 技と術理2014 内観からの展開」評

「分からなさ」が与えてくれる力

変化し続けるということ

kono_jacket-compressor

甲野善紀先生とは、点と点を繋いで初めて見えてくる存在だと思う。

今回、夜間飛行から出されたDVD『甲野善紀 技と術理2014 内観からの展開』は中でも貴重な「点」と言えるだろう。また夜間飛行というプラットフォームを得て、よりリアルタイムに近い形で甲野先生の経過を知ることができるようになったことをありがたく思う。

甲野先生の術理がもつ価値は「武道やスポーツといった各分野に役立つ新たな身体操作」という範囲にとても収めきることはできない。

甲野先生の周囲には、内面的な変容を余儀なくされ、その結果自らの道を歩むようになった者が数多くいる。目下ロシア武術システマのインストラクターとして、いくつかの著作を上梓させて頂いた私自身もそうであるし、鍼灸師の若林理砂氏、介護の岡田慎一郎氏、半身動作研究会の中島章夫氏など、直接知る限りでも枚挙の暇がないほどである。

こうした人々が甲野先生から何を受けとったのか。それは実は術理そのものではない。次から次へと術理を生み出し、変化し続けるそのあり方なのである。そのあり方とは、安易な正解に固着することなく、つねに疑い、身体を通して試行錯誤し続ける強さである。この「甲野善紀 技と術理」シリーズは、そうした甲野先生のあり方を感じることができる作品である。

1 2

その他の記事

ひとりの女性歌手を巡る奇跡(本田雅一)
第9回情報法制シンポジウムで議論される、日本の情報収集・分析体制の現在地(やまもといちろう)
社員を切ってください、雑巾は絞ってください(やまもといちろう)
人間はどう生きていけばいいのか(甲野善紀)
「幸せの分母」を増やすことで、初めて人は人に優しくなれる(名越康文)
“コタツ記事”を造語した本人が考える現代のコタツ記事(本田雅一)
普遍的無意識を目指すあたらしい旅路(高城剛)
『「赤毛のアン」で英語づけ』(4) 大切な人への手紙は〝語感〟にこだわろう(茂木健一郎)
なぜ電車内にベビーカーを持ち込む人は嫌われるのか?(岩崎夏海)
終わらない「大学生の奨学金論争」と疲弊する学びの現場(やまもといちろう)
50歳食いしん坊大酒飲みでも成功できるダイエット —— “筋肉を増やすトレーニング”と“身体を引き締めるトレーニング”の違い(本田雅一)
ピダハンから考える信仰における「ほんとう」について(甲野善紀)
『悲劇の誕生』ニーチェ著(茂木健一郎)
なぜ東大って女子に人気ないの? と思った時に読む話(城繁幸)
自分をさらけ出そう(家入一真)

ページのトップへ