名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文のメルマガ『生きるための対話(dialogue)』より

ビジネスマンのための時間の心理学――できる人は時間を「伸び縮み」させている

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時間とは「妄想」である

 

「時間がない」
「時間に追われる」
「自分の時間が取れない」
「時間を有効に使えない」

……こういった<時間>にまつわる質問を受けることがよくあります。

時間にまつわる悩みを抱えている方がまず気をつけたほうがいいのは、そもそも「時間」を主語や、目的語にしている時点で、それはかなり妄想的な発想に陥っている可能性が高い、ということです。

昨日、今日、明日と時間を区別すること自体が、実は妄想的です。「時間が……」「時間に……」ということが頭に浮かんでいる状態では、僕らは目の前のことに集中できていません。そういう悩みが生じている瞬間、その人は「時間の妄想性」に足元をすくわれているんです。

ただ、そうはいっても、僕らはそう簡単に時間から自由になることはできません。少なくとも現代人にとって、時間という観念(妄想)は非常に強固で、そこから解放されることは容易ではない。「時間なんて気にしない!」と心に決めただけでは、どうにもならないんです。

その証拠に、僕たちは「5分遅れてもなんてことはない」と頭でわかっていても、電車に乗り遅れそうになった瞬間、心に焦りが生じてしまいます。時間という妄想は相当根深く、僕ら現代人の心を縛っているのです。

 

時間を「空間的」に捉え直してみる

 

時間から少しでも自由になる方法として、今回は「時間を空間的に捉える」ということを考えてみましょう。僕らは時間というものに対して、「線」で捉えるようなイメージを持っています。それを三次元的に広げ、「チューブ」のようなイメージに変えてみる。

左側の過去から、右側の未来に向かって、太さを伸び縮みさせながら流れていくチューブをイメージしてみる。そうすると、「横軸」の時間の流れに対して、「縦軸」や「奥行」に向かって伸び縮みするチューブの太さが、時間の「濃さ」「密度」を表すことになります。その時間が自分にとって濃密であれば時間のチューブはどんどん「太く」なり、その時間を集中して過ごすことができなければ、時間のチューブはどんどん「細く」なっていく、というわけです。

そうやって時間というものをとらえ直してみると、時間は決して均一ではなく、いわばウインナーソーセージのように伸び縮みしている様子がはっきりとイメージできてきます。

もちろん、これもひとつの時間についての妄想的な捉え方に過ぎない、ということもできます。先に述べたように、過去、現在、未来という捉え方も妄想に過ぎないわけですから。でも、少なくともビジネスや実務のレベルで時間の使い方が上手な人というのは多かれ少なかれ、こういう「伸び縮みする時間」のイメージを持っているものなんです。

なぜかというと、「時間のチューブ」が太くなっている時間帯を上手に使うと、「細い時間帯」にがんばるのに比べて何倍、場合によっては何十倍もの仕事をこなしたり、思索を深めたりすることができるからです。読書でいえば、「細い時間帯」には、1時間かかっても5~10ページ読むのがやっとだという人が、「太い時間帯」には、100ページ以上、薄めの新書なら読み切ってしまうことすらあるぐらい、すらすらと読み進めることができる。

「できる人」というのは実は、そういう「伸び縮みする、三次元的な時間」を捉えることによって、普通の人よりも少し、時間の呪縛から自由になっているんですね。

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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