※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」号外 Vol.009(2013年09月27日)より
緊張して言葉に詰まったり、手が震えて何もできなくなったりした経験のある人は少なくないでしょう。僕も、クリニックでカウンセリングをたくさんやって来た頃、何度もそういうテンパった状況に陥るなかで、それを乗り越える方法を自分なりに編み出してきました。
そのひとつが、瞬間的に「フッ」と意識を飛ばすという方法です。これはけっこう「使える」方法ですので、就職の面接や結婚式の挨拶など、どうしても緊張する場面でぜひとも活用していただければと思います。
僕は講演中、話があっちこっちに行ってしまい、「このままこの話していて、ちゃんと本題に着地できるかな?」と不安になったりすることがあるのですが、そういうとき、この技をよく使っています。講演中、僕が呆けたような顔をしていたら、「お、やってるな」と思っていただければ良いでしょう(笑)。
例えば結婚式のスピーチなどで言葉に詰まってしまったとします。普通なら、「やばいやばい」「何かおもしろいこと言わなければ」とあせってしまうところです。でも、そこで「なんとかしよう」という気持ちから完全に手を離し、瞬間的に意識を飛ばしてしまうのです。
自分が結婚式でスピーチをしていることや、面接試験にいることすら忘れてリセットしてしまう。5秒や10秒黙ってしまったところで誰も変だと思いません。それからおもむろに我に返って、話を再開する。
意識を飛ばすのは、時間にすれば数秒で十分。たったそれだけでも、上ずって緊張した心を、少し落ち着けることができます。緊張してしまったときには、下手に小細工をするよりも、まず「私がなんとかしなければならない」という気持ちから手を離す。そうすると結果的に、ちょっと気の利いた言葉が浮かんで来たりするのです。
緊張して「テンパって」いるときというのは、身体も前のめりになって、熱を持ってしまっています。身体がそんな状態になっていては、冷静に物を考えることはできません。フッと意識を飛ばし、前のめりだった姿勢をニュートラルにリセットする。
バカバカしいようで、やってみると案外効果的ですから、ぜひ試してみてくださいね。
名越康文メールマガジン「生きるための対話」
テレビ、ラジオなど各種メディアで活躍する精神科医・名越康文の公式メルマガです。メルマガ購読者とのQ&A、公開カウンセリング、時評、レビューなど盛りだくさんの内容を隔週でお届けします。
「ぼくらが生きているのは、答えのない時代です。でも、それはもしかすると、幸福なことなのかもしれません。なぜなら、答えのない問いについて対話し続け ることではじめて開ける世界があるからです。皆さんと一緒に、このメルマガをそんな場にしていきたいと思っています」(名越康文)
※月2回発行、500円+税(月額)。kindleや各種電子書籍リーダー対応。購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!


その他の記事
![]() |
ロシアによるウクライナ侵攻とそれによって日本がいまなすべきこと(やまもといちろう) |
![]() |
IT野郎が考える「節電」(小寺信良) |
![]() |
“YouTuberの質”問題は、新しいようでいて古い課題(本田雅一) |
![]() |
大観光時代の終焉(高城剛) |
![]() |
浜松の鰻屋で感じた「食べに出かける」食事の楽しみと今後の日本の食文化のヒント(高城剛) |
![]() |
圧力というものに関して(やまもといちろう) |
![]() |
乙武洋匡さんの問題が投げかけたもの(やまもといちろう) |
![]() |
テクノロジーが可能にしたT2アジア太平洋卓球リーグ(T2APAC)(本田雅一) |
![]() |
ヤフージャパンが検索エンジンをNEVERに乗り換えでやらかし行政指導のあちゃー(やまもといちろう) |
![]() |
この時代に求められるのは免疫力を高め、頼らない「覚悟」を持つ事(高城剛) |
![]() |
迷子問答 公開質問【正しい努力とは】(やまもといちろう) |
![]() |
なぜ電車内にベビーカーを持ち込む人は嫌われるのか?(岩崎夏海) |
![]() |
天然の「巨大癒し装置」スリランカで今年もトレーニング・シーズン開始(高城剛) |
![]() |
楽天モバイルが先行する“MNO”に追いつくために(本田雅一) |
![]() |
国民民主党を中心に動いていた政局が終わり始めているのかどうか(やまもといちろう) |