城繁幸
@joshigeyuki

城繁幸メールマガジン『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法より

就活解禁になっても何やっていいのかわからない時に読む話

OB訪問を有意義なものにするため聞くべき質問

さて、上でOB訪問がとても重要だと書きましたが、やはりただOBに会ってお茶するだけでは意味がありません。というか、世のOB訪問の半分くらいは、筆者の目には意味の無い時間の無駄に見えます。というわけで、意識して聞くべき質問のポイントを説明しておきましょう。

1.「就職する前と就職した後で感じた仕事のギャップは何ですか? そして、それをどういう風に乗り越えましたか?」

閉じた組織を外から見ているのと中で体験するのでは印象は大きく異なって当然です。どんなギャップがあり、それをどう乗り越えたか教えてもらうことは、企業パンフ百回読むより有意義なことですね。

たとえば「外から見ると華やかでカッコイイイメージだったけど、入ってみたら泥臭い事務作業の連続でイメージと180度違ったよ」といったよくあるギャップに対し「でも、今ではその地味な仕事の積み重ねが華やかに見えるアウトプットにつながっていると理解したので、むしろ感謝しつつ日々仕事に精進しているよ。そういう下地のある方が転職市場でも強いしね」といった向き合い方を教えてもらった場合。

質問者は、華やかそうな仕事に見えてもえてして泥臭いものだが、そういうものの積み重ねが後のキャリアにつながるのだという貴重な教訓を得られるわけです。

もちろん「イメージと違って全然泥臭くて成長もできないから、自分でスキルアップのために勉強している」といった意見も同様に貴重です。

2.「これからのキャリアデザインを教えてください」

たとえば30歳の先輩を訪問した時に、彼のこれから先のキャリアプランを聞くことには深い意義があります。それは良くも悪くも、新人育成を日本型組織で一通り育成した一つの結論だからです。

フォローしておくと、先輩の進路を真似しろということではありません。「今の会社で堅実にやっていきたい」という先輩からは、そう考えるに至った理由を教えてもらってください。「30歳までに転職するつもり」という先輩には、転職で何を実現したいかをよく確認してください。そうしたやり取りを通じて、あなた自身の展望も深まるはず。

3.「いま学生時代に戻れるとすれば、卒業までに何をやっておきますか?」

これも重要な質問ですね。OBに限らず、社会人が学生時代に経験しておくべきだったことを尋ねられると、それはそのまま学生への率直なアドバイスになるものです。まあこれが35歳以上になると時代的にずれてきたり、「彼女と海外旅行に行っとけばよかった」みたく人生そのものの振り返りが入ってきちゃうのでお進めしませんが、30歳までなら有意義なアドバイスが聞けるはず。

ちなみに筆者自身がかつての自分にアドバイスするとすれば、
・自給目当てのバイトはほどほどに、インターン代わりのバイトを増やせ。特にIT系新興企業。
・経済誌がさらりと読み通せるくらいの経済知識は身につけろ
でしょうか。

OB訪問前には、あなたにとって「社会人としてのキャリア」と言われて、何が思い浮かんだでしょうか。日本企業は本音と建て前があり、本音の部分はなかなか外部には見せてくれません。労働市場の流動性も低いから、実際に働く人間の体験も広く共有されることはありません。恐らくは完全なブラックボックスだったというのが正直なところでしょう。

でも、たとえば10人ほど有意義なOB訪問が出来たとすればどうでしょう。その10人は偵察隊としてあなたより数年分先に派遣され、貴重な現地レポートを送ってくれたようなものです。もちろん価値観はそれぞれだから誰か一人をそっくりそのまま真似ろというわけではありませんが、おぼろげながら展望は見えてきたはずです。その中で自分はこうしたい、あれに興味がある、といった指針が見えてくれば合格でしょう。

筆者なら3月スタート直後はこう動く

ちなみに、筆者自身が「3月まで何もしてこなかった3年生」だとすると、以下のように動きます。

まず、自分が専門性を身に着けて飯を食う専門職タイプか、それとも組織と共に成長するタイプが知るために、中堅以上の企業のOBと、出来るだけ若い新興企業のOBを何人か訪問します。

そこで、まあ今と同様に事務系の専門職が合っていると感じたとします。それからはグローバルで成長余地のありそうな中堅以上の企業を中心にOB訪問を絞ります。話を聞くうちになんとなく管理部門系、そして30代前半で一通りの専門性を身に着けるキャリアデザインが自分に合っているなという答えを見つけるでしょう。もちろん希望職種ピッタリのOBはなかなか見つからないでしょうから、最初に会ったOBに頼んで紹介してもらったりして頑張ります。

合わせて、今からでもエントリー可能なインターンで、実際の経験を肉付けしておきます。筆者は学生時代「同じ時間バイトをするなら出来るだけ幅広く経験しておこう」という考えのもと、ファミレス夜勤からIT系ベンチャーまでいろいろバイトしましたけど、あれはいい経験になりましたね(まあその話は長くなるのでまたの機会に)。

もちろん、選考のテーブルに乗るには企業の形成する母集団に入らないといけないので、企業セミナーや説明会、リクルーターとの接触もマメにこなさないといけません。想像してみると結構ハードスケジュールだと思いますね。

ただ、やみくもに数十社もエントリーしてまわるよりは、ずっと少ない手間で、より自分の満足度の高い内定が得られる自信はありますね。

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城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

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