就活の面接官は何を見ているか
知人の学生が就活をしているというので、「面接で何を聞かれた?」と尋ねたところ、「たわいもないことです」という返事が返ってきた。それで、「たわいもないこととは何?」と聞いたところ、「朝ご飯、何を食べましたか?」と聞かれた、というのだ。
その学生は、「そんなことを聞いて何が分かるのですかね?」と言っていたのだが、それを聞いて、「なるほど、学生は就活の面接官が何を見ているのか、分かってないのだ」というのが分かった。
結論から言うと、面接官は「答え方」を見ているのである。そこで「パン」と答えようが「ご飯」と答えようが、そんなことは問題ではない。問題はただ一つ、「どのような答え方をするか」ということだけだ。それこそが、唯一無二の評価対象なのである。
例えば、しどろもどろな答え方は「あわてんぼうだな」という評価につながるし、なかなか思い出せない人は「忘れっぽい人だな」という評価につながる。また、すらすら答えればいいかというと、そうでもない。あまり早く答えすぎると「せわしないな」という評価につながってしまうし、よどみなく答えすぎても、「心がこもってない」と思われる。
これは、ベンジャミン・フランクリンが自伝の中で述べていたのだが、人間というのは不思議なもので、つたない喋り方の方が、相手が真剣に聞いてくれるし、印象も良くなったりする。
そんなふうに、面接官は学生が「何を答えるか」は全く見ておらず、「どう答えるか」のみに集中している。だから、質問はなんでもいいのである。しかし、当の学生がそれに気づいていないのが面白いと思った。
※「岩崎夏海の身辺雑記」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。
【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 基本的に平日毎日
ご購読・詳細はこちら
http://yakan-hiko.com/huckleberry.html
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。


その他の記事
![]() |
古い枠組みから脱するための復活の鍵は「ストリート」(高城剛) |
![]() |
お盆の時期に旧暦の由来を見つめ直す(高城剛) |
![]() |
コデラ的出国前の儀式(小寺信良) |
![]() |
2021年のベストガジェットから考える新たなステージ(高城剛) |
![]() |
日本でも騒がれるNPOとマネーロンダリングの話(やまもといちろう) |
![]() |
ヤマダ電機積立預金(住信SBIネット銀行ヤマダネオバンクシテン)の真価が伝わらない件(やまもといちろう) |
![]() |
選挙の行方はカネとネットの話がほぼすべてという時代における公職選挙法整備のむつかしさ(やまもといちろう) |
![]() |
同じ場所にいつまでも止まってはいけない(高城剛) |
![]() |
「リバーブ」という沼とブラックフライデー(高城剛) |
![]() |
無意識の中にある「他者への期待」–その功罪(名越康文) |
![]() |
「自然な○○」という脅し–お産と子育てにまつわる選民意識について(若林理砂) |
![]() |
41歳の山本さん、30代になりたての自分に3つアドバイスするとしたら何ですか(やまもといちろう) |
![]() |
人は生の瀬戸際までコミュニケーション能力が問われるのだということを心に刻む(やまもといちろう) |
![]() |
フリック入力が苦手でもモバイル執筆が可能に! ローマ字入力アプリ「アルテ on Mozc」(小寺信良) |
![]() |
イギリスと中国、お互いに国営メディアBANで見る価値観の衝突とプロパガンダ戦(やまもといちろう) |