高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

太古から変わらぬ人間の身体と変わりゆく環境の間を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.470(2020年6月19日発行)より

今週は、沖縄県慶良間諸島にいます。

那覇から1時間ほど船に乗ると、そこは別世界。
もう二十年以上に渡って、僕が毎年通い続ける慶良間諸島があります。

東シナ海に点在する大小20余りの島からなる美しい島嶼群は、すでに二十年前には世界中のシリアル・トラベラーの間では有名な地で、「世界ベストビーチトップ10」にもランクインしていたほどでしたが、沖縄の人は、そのことをまったく知らず、長らく「辺境の地」として扱われていました。

15年ほど前には、座間味島と阿嘉島の間の無人島を含む海域が、生態系を守るラムサール条約登録地となり、驚くほどの透明度を誇る海は、世界中のダイバーや釣り人の間で「ケラマブルー」と呼ばれる羨望の地となりました。
それでも政府も県庁も、まだまだ見向きもしませんでした。

そして6年前、やっと諸島および周辺海域が、およそ30年ぶりに新規の国立公園として指定されました。
これ以降、ドッと人が押し寄せ(特に東アジアからのゲストで)、夏の船の予約が大変困難になる状況が続いていましたが、今年は、久しぶりにのんびりとした慶良間らしい時間を過ごせています。

さて、この数ヶ月に渡る沖縄滞在で身についた技のひとつに、釣りや漁があります。
島の小さな漁港から船を出し、釣った魚を浜辺で焼いて食べる自給自足は、島国日本ならではの楽しみ。
ついでに、野生の感を磨くため、半断食を行って、自ら飢餓状態に追いこむ日々を過ごしました。

海に囲まれた日本では、釣りをゲームのように楽しむ人たちは大勢いますが、釣った物だけしか食べないゲームに参加する人は、滅多にいません。
このような離島で釣り暮らしをしていると、現実的に魚が獲れないことも多く、1日一食ありつけるかどうかの日も多々あります。

念の為、ナッツなども持参してますが、結局手をつけることもなく、宿屋に泊まってはいても、原始的な暮らしを通じて太古の食生活を楽しむ日々を送っています。
これぞ、本当のパレオリシック(旧石器時代)な暮らしです。

新刊にも記載しましたように、2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大学の大隅良典教授によって発見された理論によれば、ファスティング(断食)により、病気の細胞や老廃物など、体の不要なものを分解するシステム=オートファジー(自食作用)が活性化することがわかっています。

人間は飢餓状態になると、細胞内に膜が発生し細胞質成分を包み込み、体内の不要物を分解して栄養源にします。
最後にものを食べてから10時間が過ぎると、肝臓に蓄えられた糖がなくなり、16時間を超えたあたりでオートファジーが働くので、万病に効くのです。

しかも、たまに食べるのが魚だけならば、糖質がまったくとれませんので、時にはバッドトリップするような発熱、頭痛、倦怠感やめまい、脈や自律神経の乱れ、思考力や集中力の低下などに襲われます。
実はこれ、糖の禁断症状なのです。

この症状がインフルエンザに似ていることから、ケトジェニック・ダイエッターの間では、「ケトフル(エンザ)」などと呼ばれており、辛い禁断症状を超えると、飢餓状態に陥った人間の「生命維持装置」が働き、「野生化」モードに入って直感力が冴え、心身ともにリブートされ、深い瞑想状態に入ることができるようになります。

この「ケトフル(エンザ)」を軽減するのは、「メガミネラル」と僕が呼ぶところの大量のミネラルをサプリメントで取る方法ですが、慣れてくると、日陰で麻酔を打たれたような気分でまったりと過ごすのも、悪くないと感じるようになるほどです。

そのまま夜の帳が下りた頃、誰もいない砂浜で行う瞑想は格別です!

そうすると、不思議とスマートフォンに、しばらく触りたくなくなっている自分がいます(夜になると、電源を切るようになりました)。

どこかで、体と心が情報社会との距離そのものをリセットしているんだろうなと、太古から変わらぬ人間の身体と、変わりゆく環境の間を考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.470 2020年6月19日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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