小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

実はまだいじくっている10cmフルレンジバックロード

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2015年08月28日 Vol.047 <IFA出発直前号>より

先週は夏休み特集といった趣向で、月刊Stereo誌付属のFostex製10cmフルレンジスピーカーを使ったバックロードホーンの製作をメインコラムとした。普段より画像が多かったので、面食らった方も多かっただろう。

実はあのスピーカーを作ったのは2週間ほど前のことで、エージングも進み、なかなか音も落ち着いてきた。だがそうなってくると、むくむくと頭をもたげてくるのは、せっかく作ったこのエンクロージャー、今度はスピーカーユニットのほうを変えたらどうなるんだろうという好奇心である。

付録ユニットのP1000も、なかなか評判のいいものではあるのだが、雑誌の付録サイズに収まるよう、オリジナルモデルからはマグネットのサイズが小さくなっており、そのあたりが味の違いとして出ているという。

考えてみれば、ユニット付属のステレオ誌8月は、価格にして3,990円。付録のない普段の本誌が900円ぐらいなので、付録分は3,000円、1本1,500円ということになる。一方付録の元になったP1000Kというスピーカーも、実売1,500円ぐらいだ。元々結構安いユニットなのである。

オリジナルユニットに変えても、違いは結構微妙なんだろう。むしろ全然違うものを乗っけてみたらどうなるのか。そんなことを考えながらAmazonを物色していたら、PARC Audioというところの10cmフルレンジウッドコーンスピーカー「DCU-F121W」というのを見つけた。

・PARC Audio DCU-F121W
http://parc-audio.com/shop/products/detail.php?product_id=4

サイトを見てみると、千葉に本社がある小さい企業のようだ。もとソニーのオーディオ系技術者だった方が始めたメーカーである。

ウッドコーンというとJVCの製品がよく知られているところで、そう言えば昔ウッドコーンのスピーカーが欲しかったんだというのを思い出した。この際なので、このユニットを買ってみることにした。1本8,000円強と、元のP1000に比べるとずいぶん価格差があるが、メルマガのネタになるならいいかと思った次第である。

 

早速交換…できない

実際に届いてみると、結構奥行きがあるユニットだった。焦って寸法を測ったところ、70mm。一方自作したバックロードホーンは、内部に蛇行した空間があるため、板で仕切られている。奥行きを測ったところ、75mmであった。ギリギリである。

・意外に奥行きのあるユニット
DSC_1031

よし、いけるなと思ってはめ込もうとすると、なんと穴に入らない。アルミダイキャストの結構頑丈なフレームで作られているため、エンクロージャ側の穴が微妙に小さいのだ。穴を広げないと無理である。

あと少しで入りそうなので、最初はカッターでガリガリ削っていたのだが、ちょっと削ったぐらいでは埒があかないことが判明。というか、手動で円を削るなどしていたら真円になるはずもなく、どこがつっかえているのかもよくわからない。

これはダメだということで、急遽ホームセンターへ行き、削り用のピットを購入してきた。本来は研磨用のピットなのだが、これだけ目が粗ければ結構削れるだろう。これを電動ドライバーに付けて、穴の周囲を広げていく。さすがMDFだけあって、こういう乱暴な加工をしても割れることなく、細かい粒子状の粉になって綺麗に削れる。加工が楽な素材で助かった。まあそうは言っても左右あるので、同じ削り作業を2回やるわけであるが。

・急遽ホームセンターへ走り、削り用のピットを購入
DSC_1035

ようやく穴が拡がったので、早速ユニットをはめ込み、鳴らしてみる。最初は「あれ?」という感じで、輪郭のぼんやりした音だったが、1〜2時間鳴らしているうちに急速に音がまとまってきた。

・ゴリゴリ削ってどうにか穴を1周り大きくした
DSC_1033

フルレンジのポイントは定位の良さと輪郭のくっきり感だが、その部分がより明確に出ている。ウッドコーン特有の、というほどウッドコーンの音を知らないので、どこがポイントなのかと言われても答えに窮するが、見た目が派手な割には音は非常にまともでクセが少ない。

・なかなか見た目が派手だが、音は至ってマトモ
DSC_1027

これだけ全然素性の違うユニットを使ったにも関わらず、P1000と出音の傾向はかなり近い。変なピークがある感じもなく、明るい音だ。元々エンクロージャの設計も上手いのだろう、どんなユニットでもがっしり鳴ってくれる。これは当分色々楽しめそうだ。

ユニットの特性としては、70Hzあたりから緩やかに下がっており、キックのパンチ力も落ち込まない。一方広域は15kHzあたりから急に落ちるが、広域の不足感はあまり感じない。おそらくかなり近くで聴いているせいもあるだろう。

特にアコースティックギターの音とは相性がいいように思う。丁度イーグルスのボックスセットを買ったばかりなので、エージングも兼ねて今はこればかり聴いている。

先週のシメとして、外観の仕上げをするとか言っておきながら、そっちのほうは手つかずで、こんなことばかりしている。どうりで仕事も進まないわけである。

まあ、夏休みだもの。気が散るのはしょうがないよね。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2015年08月28日 Vol.047 <IFA出発直前号> 目次

巻頭言
01 論壇【小寺・西田】
「Qrio Smart Lock」から考える「鍵のIT化」と「IoT」
02 余談【小寺】
実はまだいじくっている10cmフルレンジバックロード
03 対談【小寺・西田】
テイラーメイドイヤホン〈Just ear〉の「なぜ」 (3)
04 過去記事【小寺・西田】
デジカメは「スピード」で変わる
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

 

12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

 

ご購読・詳細はこちらから!

その他の記事

コロナが終息しても、もとの世界には戻らない(高城剛)
憂鬱な都知事選(やまもといちろう)
仮想通貨周りやオンラインサロンが酷いことになっている現状について(やまもといちろう)
アジアの安全保障で、いま以上に日本の立場を明確にし、コミットし、宣伝しなければならなくなりました(やまもといちろう)
ゲームを通じて知る「本当の自分」(山中教子)
世界百周しても人生観はなにも変わりませんが、知見は広がります(高城剛)
大麻によって町おこしは可能なのか(高城剛)
コロワイド買収のかっぱ寿司が無事摘発の件(やまもといちろう)
今世界でもっとも未来に近い街、雄安(高城剛)
普遍的無意識を目指すあたらしい旅路(高城剛)
国が“氷河期世代”をなんとかしようと言い出した時に読む話(城繁幸)
素晴らしい東京の五月を楽しみつつ気候変動を考える(高城剛)
グローバリゼーションの大きな曲がり角(高城剛)
自分との対話として「書く」ということ(高城剛)
除湿、食事、温灸……梅雨時のカラダ管理、してますか?(若林理砂)

ページのトップへ