※小寺信良&西田宗千佳メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」2015年12月25日 Vol.063 <クリスマスなにそれおいしいの号>より
今年のメルマガ発行も今回が最後。あまり「今年のはこうだった」という振り返りものをやるたちでもないのだが、せっかくなので、「今年買ったもので良かったもの」だけをご紹介することにしよう。冷静に考えると、けっこう共通項がある気がしてきたので、そのへんの文脈も含めて読んでいただければ、と思う。
・iPad Pro
本メルマガでも、商業メディア向け記事でもけっこう書いているのだが、iPad Proは結局、使わない日がない道具になった。閲覧にも使うが、けっこうPC的な用途、すなわち原稿執筆にも使っている。世の中的には「微妙」という評判も多いのだが、自分的にはそんなことはない。もちろん、日本語入力周りを中心に、早急に改善してほしいことはたくさんある。が、正直、些細なことのようにすら思えている。
結局は、自分のワークフローをどう作るのか、きちんとアイデアを持っている人には使える製品だったのだろう、と思っている。そういう意味で「Pro」なのだろう。アップルの想定している意味とは違っている気もするが。
・Surface Pro4
実は先週買った。
レビューのために貸し出しは受けていたのだが、結局、「これ買っちゃった方がいいな」と思う部分が多く、そのくらい満足度が高かったため「自爆」しにいってしまったわけだ。理由は、iPad Proと共通で「HiDPI最高」の一言。まさか、MacBookですら満足できなくなるとは思わなかった。
また、顔や指紋などの認証をPCのロック解除に使う「Windows Hello」の完成度が高く、顔認証によるログインのスムーズさがきわめて快適であった、ということも、購入の動機のひとつだ。この辺、もちろん他のPCでもできることではあるが、Surface Pro4は、トータルパッケージとしてよくできている、と思う。
キーボードよりもタッチパッドがアレで、なぜかiPad Proの方が快適に感じる時もあるとか、Windows10の標準フォントはやっぱり品質的にどうだろう、という疑問があるにしても、ではあるが。
・Bowers & Wilkins P5 Wireless
http://www.bowers-wilkins.jp/Headphones/Headphones/Headphones/P5-Wireless.html#ep-component-j
こんな仕事をしているから、年に何本もヘッドホンを買う。ワイヤードもワイヤレスも買うが、特に今年は、ワイヤレス製品で満足するものが多かった印象がある。そのひとつが、Bowers & Wilkins P5 Wirelessだ。
Bowers & Wilkinsのヘッドホンは、デザインが特徴的なので、見たことがある人も多いと思うし、オーディオに詳しい方ならば、スピーカーメーカーとしてよくご存知かと思う。もともと、P5はワイヤードヘッドホンとしてずいぶん前からあったのだが、今年の夏にBluetooth版が出て、思わず衝動買いしたものだ。ぶっちゃけデザインだけのつもりだったのだが、やはりそこはBowers & Wilkins、音も実にしっかりしている。NC非搭載のこの種のBluetoothヘッドホンでは、トップクラスの満足度だと思う。
なによりこれ、夏に使っても汗だくになりづらいデザインなのがとてもいい。
・EARIN
http://www.modernity.jp/brand/earin/earin/
こちらもBluetoothヘッドホンである。耳栓のような構造で左右もワイヤレスになっている「完全ワイヤレスBluetoothヘッドホン」のひとつで、日本でもそろそろ発売になる。(上のリンクは、日本発売元のもの)
もともとはKickstarter案件で、出荷までに少々待たされたのだが、筆者も無事、11月には手にしていた。
左右分割のワイヤレス、というスタイルの面白さもさることながら、意外なほど音もしっかりしている。音の左右の分離がすこしわざとらしい、と感じるが、それ以外は、他のボックスレス型Bluetoothヘッドホンに負けていない。音が途切れる際には右耳から途切れる、という不自然さあるが、それもそう頻度が多いものではなく、ご愛嬌のレベルだ。
Bluetoothに積極的なメーカーは日本にも多数あるが、なぜこれを先に作れなかったのか、ちょっとくやしく思うくらいの製品だ。
おそらくBluetooth系を今年愛用することが増えたのは、ストリーミング・ミュージックの勃興により、スマホで音楽を聴く機会が激増したからかと思う。というよりも、昨年はウォークマンなどの単体プレイヤーも使うことがあったが、今年の6月以降は、その記憶がほとんどない。これもまた、今年のひとつの変化かと思う。
結局「なにを道具として使うか」は、いまやサービスと不可分であり、使いたいサービスに合わせて機器の側が変わっていくのが当然なのだろう。
ハイレゾもいいが、はやくその辺とのマッチングを行なわいと、「スマホの機動性に置いて行かれたレガシーなもの」になってしまうのではないか、という危惧を強く感じるのだ。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2015年12月25日 Vol.063 <クリスマスなにそれおいしいの号> 目次
01 論壇【小寺】
青少年のネット動向まとめ
02 余談【西田】
2015年買って良かった4つの製品
03 対談【小寺】
ブライダルビデオ業界の掟 (3)
04 過去記事【小寺】
CESに見るディスプレイ戦争第2章
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。
ご購読・詳細はこちらから!
筆者:西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県出身。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。
その他の記事
まだ春には遠いニュージーランドでスマホ開発の終焉とドローンのこれからを考える(高城剛) | |
ぼくが作った映画を『進撃の巨人』の脚本を担当し『もしドラ』を酷評した町山智浩さんに見てもらいたい(岩崎夏海) | |
企業のトップストーリーについて思うこと(やまもといちろう) | |
山口組分裂を人事制度的に考察する(城繁幸) | |
「Kindle Unlimited」日本上陸でなにが起きるのか(西田宗千佳) | |
公開中映画『郊遊<ピクニック>』監督・蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)インタビュー 「俳優」「廃墟」「自由」を語る(切通理作) | |
隣は「どうやって文字入力する」人ぞ(西田宗千佳) | |
「5類」強行の岸田文雄政権が僕たちに教えてくれたもの(やまもといちろう) | |
『好きを仕事にした』人の末路がなかなかしんどい(やまもといちろう) | |
「科学」と「宗教」、あるいは信仰における「公」と「私」(甲野善紀) | |
スウェーデンがキャッシュレス社会を実現した大前提としてのプライバシーレス社会(高城剛) | |
アメリカでスクーター・シェアを「見てきた」(西田宗千佳) | |
実際やったら大変じゃん…子供スマホのフィルタリング(小寺信良) | |
生き残るための選択肢を増やそう(前編)(家入一真) | |
対人関係の9割は「自分の頭の中」で起きている(名越康文) |