高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

新興国におけるエンジンは中国

高城未来研究所【Future Report】Vol.330(2017年10月13日発行)より


今週はエチオピアのアディスアベバにいます。

久しぶりにやってきましたが、アフリカでも人口が多く、成長率が高い新興国だけあって、空港から都心に向かう道は綺麗に整備され、建築工事も目立ちます。

しかし、道を走るのは40年前の角ばったトヨタ車と、大量の羊を連れた羊飼いが往路を歩き、この光景は、ちょっとしたSFのようにも思えます。

また、建築中の工事現場を見ると、多くが中国のゼネコンによるもので、国際空港の拡張工事などの公共事業は、90%以上中国のゼネコンが手がけているのが伺え、このあたりに、中国のあたらしいシルクロード計画「一路一帯」の本気度が見えます。

この一路一帯計画は、2013年に習近平国家主席が提唱した中国が形成を目指す経済・外交圏構想で、英語では「One Belt, One Road」、通称「OBOR」と言います。
中国から中央アジアを経て欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、インド、中東、アフリと連なる「21世紀海上シルクロード」(一路)からなり、2015年10月に北京で開催されたアジア政党国際会議(ICAPP)では「シルクロードの再構築と共同発展の促進」がテーマとなりました。
実に最近の話です。

また、中国がアフリカで鉄道整備を加速しており、ケニアで首都と港を結ぶ鉄道がすでに開通し、 エチオピアでは隣国ジブチの港湾を結ぶ鉄道が完成間近です。
これが完成しますと、750キロ超の鉄道が内陸部と紅海を結ぶことになります。
もちろん、このプロジェクトには中国が全面的に資金を提供しており、アディスアベバの街中でも多くの中国人ビジネスマンと観光客が闊歩しています。
5年前にこの光景は想像できましたが、ここまで早く進むとは正直思えませんでした。
アフリカの都市部は、急速にコスモポリタン化しています。
それも中国によって。

このアフリカ東部の長距離鉄道は、アフリカ西部セネガルの首都、ダカールまで延伸するビジョンがあります。
アフリカには海に面していない国が15カ国前後あり、その人口は4億人ともいわれ、東西アフリカを結ぶ鉄道ができれば物量や人の流れは一変すると予測されます。
事実、内陸部の子供達は海を見たことも海魚を食べたこともありません。
ここアディスアベバのまともな日本食レストランでさえ、食材は北欧から空輸するサーモンがメインなのです。
これが、鉄道網とともに一変する可能性があります。

また、10年前には、ソマリア問題に対応するため米軍がこの国に多く滞在していましたが、5年前に完全撤退し、そのあとに経済進攻してきたのが中国です。
そして、あっという間に陣地をとったように感じます。

世界は驚くほど急速に変化していて、新興国におけるエンジンは中国です。
アフリカにいると、どこよりもそれを実感するのです。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.330 2017年10月13日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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